2022年10月16日日曜日

2022年10月12日(水)明治安田生命J1リーグ第27節 浦和レッズvs北海道コンサドーレ札幌 〜こんなはずでは〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:
スターティングメンバー&試合結果

  • 浦和は1週間前の鳥栖戦(2ー1で勝利)と全く同じメンバー。普通に考えると、札幌対策というよりは自らの事情でこの選択を取ったとみるでしょう。
  • 札幌は、高嶺と荒野が復帰しましたが駒井がシーズンアウトの負傷。ここ最近の傾向通り、相手が3バックや1-3-4-2-1ではない(=札幌もSB的な選手起用が必要になる)相手ということで福森はベンチスタート。

2.試合展開

守りを固めるホームチーム:

  • 札幌は、個人技主体のチームであるため、オープンに殴り合っていたりスペースがガバガバだったりする、プロのサッカーとして奇妙なシチュエーションを除けば、相手ゴール前でオーガナイズされた守備を崩すのは卓越した個人の技術が発揮される時にほぼ限定されます。
  • 福森という異様に射程距離の長いクロッサーと、誰にでも競り勝てるようなターゲットFWが不在のこのスカッドにおいては、相手に対する切り札はWBの金子とルーカスのドリブル突破がほぼ全てだといえます。

  • このことを踏まえて、浦和は後半にテンポアップして試合を意図的に動かすまでは、札幌のウイングバックに対してSBとSHのダブルチームで対応することを徹底していました。SBが縦を切って、SHは中央方向を切ります。
  • 基本的には。逆足配置になっている札幌のWBが、逆足のクロスボールという精度の低いプレーで終わるよう、浦和のSB側に誘導して守っていたと思います。フィジカルに優れた金子は大畑を強引に縦にぶっちぎる場面もあったりはしましたが、金子がフルスロットルで突破した後の右足クロスは何かが起こるクオリティがないため、浦和としては守りにくい状況にはなっていませんでした。
  • この際、浦和のSHはすぐにSBのサポートに回れるよう、前に出て2トップと連携して2トップ脇(札幌のSBがいる位置)を守るタスクは殆どなかったため、札幌はCBやSBのところでかなり自由にボールを持つことができました。これが札幌優勢だったボール支配率というスタッツの正体です。


  • そして札幌は、WBの個人技を封じられ、かつボールを持たされると、基本的には局所での数的優位を使って解決しようとします。
  • 典型的なのは、SBがWBの外側を回り込むように追い越すオーバーラップと呼ばれるプレー。敵陣で、SBは一番フリーになりやすいポジションであるため、オーバーラップに誰も付いてこなければ崩しのチャンスが生じるのは事実ですが、これによって札幌の後方が手薄になる…SBが本来いる位置がガラ空きになる状態を浦和の2トップは狙っていたと思います。
  • 結果的には、岡村や高嶺の頑張りで浦和の2トップを中心とした速攻を食い止めてはいたものの、この2人にはそれなりの負荷がかかっていたと思います。また、浦和のボール回収位置があまり高くないことも札幌にプラスだったかもしれません。


4バックであることを押し付ける:

  • 浦和は、前節の鳥栖戦もリンセンとユンカーを2トップとした1-4-4-2。ボールをあまり持たないスタイルだとするなら、リカルド監督としては1-4-4-2が使いやすいのかもしれません。
  • リンセンは公称170cmながら競り合いに自信があるようで、GKからのフィードのターゲットは全て右のリンセンと大久保のところ。右に流れていたのは、札幌の左SBが菅、左CBが高嶺と、こちらもあまりサイズがない選手が並ぶからでしょう。

  • 浦和は1トップ+トップ下、もしくはトップレスというか、本来サイドアタッカーや1.5列目的な選手を多く起用することが多いようですが、リンセンとユンカーの並びは古典的ないしはオーソドックスな2トップのそれですし、実際の2人の振る舞いも2トップであることを明確に意識していたと感じます。
  • この試合で、2トップの最も重要なタスクは、札幌を4バックの形であることを押し付けて、高嶺を完全にCB化させることです。相手が1トップ(3トップ)なら、札幌は3バックのままで守れますし、高嶺は相手のトップ下の選手をマークする、本来の適性に近い仕事を担える。
  • 相手が2トップなら、岡村と組んでCBの仕事を押し付けられ(誰から?というと、相手チームからでもあるし、我らが名将からでもあります)、ゴリゴリマッチョマンではない高嶺が90分間それを担うのは難しいのは、この試合のクライマックスに札幌が打った交代策を見てもわかるでしょう。


  • 一般に、2トップが横並びになると相手がマークしやすいので、2トップは奥行きを作るポジショニングとムーブが望ましいとされます。
  • しかし、浦和の2トップは、札幌のCBを左右に分断してカバーリングを難しくするために、ニュートラルなポジションではリンセンとユンカーが左右にわざと開いて立ち、2トップをサポートするのは、小泉や大久保といった2列目の選手を使っていたと思います。
  • ですので、浦和もトップにボールが入ると、次の経由先は中央よりもサイドであることが多く、見方によっては、中央に安易にボールを入れないことで、ゲームがオープンになりすぎないようにしていたと思います。


  • 後半徐々に試合はオープンに。そして交代カードが続々と切られます。
  • まず68分に浦和がユンカー→松尾。スペースがある状態でユンカー、ではなくて松尾なのはちょっと意外でした。一応考えてみると、リンセンとユンカーが並ぶよりは、片方はリンクマンっぽい役割が担える選手がいた方がカウンターの際にスムーズかな、という気はしました。まぁ松尾がそういうタイプかというと微妙ですけども。リンセンはターゲットとして残したかったのかもしれません。

  • 札幌にいわゆる”得点の香り”があった訳ではないですが、脈略のないところから71分に、札幌のクラックがスコアを動かします。ドリブルからのシュート、は浦和のディフェンス陣も警戒していたと思うのですが、この間合いから打ってくるのは無警戒だったでしょう。
  • 得点直後、札幌は小柏→キムゴンヒ、浦和はリンセン→明本、伊藤→柴戸。オープンになるからターゲットのリンセンは不要、ということでしょうか。結果的には予想通り?さらにオープンな展開になり、またアクシデントもあって札幌が決壊します。
  • 77分に札幌は負傷の菅→福森、荒野→宮澤。福森がハンドでPKを献上して露骨に失点に絡んだことで議論を呼ぶ交代となりましたが、ゲームをクローズするには、中村よりは経験のある福森で、福森を入れるならSBかCBかでいうとCBしかないから、高嶺をSBに回して福森、となったのでしょう。


雑感

  • うまく言えないのですがお互いに苦労している感じがします。浦和は2年間でスタメンを総とっかえしたはずなのに、まだ監督のサッカーにしっくりきていないというか、まだ入れ替えが必要か?と思ってしまうような状態。というか、やはりクラブのカルチャーにちょっと合わないのかもしれません。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。



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