2022年9月13日火曜日

2022年9月11日(日)明治安田生命J1リーグ第29節 北海道コンサドーレ札幌vsジュビロ磐田 〜ある意味での”らしさ”〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果

  • 18節からリーグ戦10試合で1勝1分けと出口が見えない磐田。3バックは維持したままメンバーを入れ替えて試行錯誤しているようです。ここ数試合は、最終ラインに小川や鈴木雄斗といったCBではない選手を入れたり、前線に金子翔太が入ったりといった変化がみられます。遠藤は伊藤前監督の末期はベンチスタートも多かったですが、渋谷新監督となってからはまた頼りにされているようです。
  • 前節劇的勝利でガラッと空気が変わった札幌。金子が右シャドーでスタメンに復帰した以外は、ほぼ同じメンバー。プロの選手や監督でも勝つと自信が芽生えるのでしょう、遠藤と同様に一時期序列が下がっていた福森は、しれっと3試合連続で先発しています。


2.試合展開

いいとこ取りを試みる磐田:

  • 磐田は変則的なシステムでした。基本形は、3バックとWBはいいとして、中盤は山本康裕がアンカーで、インサイドハーフ右に遠藤、左に上原。2トップが杉本と金子、といった具合に見えました。
  • おそらく遠藤をある程度、FWに近い位置でプレーさせたくて、遠藤の背後をカバーする役割として山本を置いたのだと思います。
  • そして、引いて守る時は1-5-4-1の陣形を取ることが多くて、この際は金子が下がって杉本が1トップ。中央に遠藤と山本、といった並びでした。
  • ですので2トップのうち金子翔太が常に右寄りで動き、金子を見ている福森も中央よりも左サイドに寄って行きます。そして札幌は上原を左シャドーと捉えて田中駿汰がマンマークですが、上原は結構引いた位置に立つので、田中駿汰も前にどんどん出ていくようになる。最終ラインは岡村1人が残って、杉本を見ている同数の状態で、杉本が岡村に勝てると結構面白くなる構図ではあったと思います。

  • 序盤、札幌がボールを持っていると、磐田は結構前に出てきます。この時の”形”がなんとも言えなくて、札幌の選手をどう捕まえるか整理されている感じはあまりしないけど、山本を残して中盤から前の選手がどんどん前に勢いよく出てくるな…という感想でした。
  • この磐田の前線守備がいまいちだったのは、形に言及すると、札幌のアンカー(駒井)のところでマッチアップ的に残っている山本が前に出れないので、アンカーがちょっと浮いた状態になったり、落ちてくるシャドーのシャビエルも捕まえられなかったりで、前に出て空いたスペースの管理まではあまり考えられていなかったのが一つ。
  • もう一つが、先制点のFKにつながるプレーがそうですが、札幌はさっさとロングフィードを蹴ってくるので、それだけで磐田の中盤から前の選手の守備は空転させられていた、ということです。

  • 高嶺の対角へのフィードが、右シャドーの位置にいた金子に飛びます。金子は左CBの大井と、5バック化していたWB松本の間にいて、松本に当たり負けしない形で金子が胸トラップ。
  • 金子が着地したところを大井が倒してFKでしたが、シンプルにこれはベテラン大井の対応がラフで、福森がいるのでファウルには気をつけろ、みたいな指示が磐田にあったかは謎ですが、金子がバランスを崩していたこともあって軽率な印象でした。

ある意味Jリーグらしさ:

  • 両者の構造的な違いは、札幌はバックライン〜GKでボールを保持できる(磐田は10分もたつとあまり前に出て守ってこなくなる)のに対し、札幌がマンマークで捕まえてくると、磐田は前に蹴るしかないので、前線の負荷は大きくなります。
  • かつ、杉本はあまりDFを背負って時間を作れるタイプでもないので、磐田の攻撃はポストプレーが起点というよりは、FWが競る(岡村に競り負ける)あとでのセカンドボールを拾うところからになりますが、蹴って拾うを繰り返すスピードが求められる展開を、遠藤と上原で担うのはちょっと無理があったように見えました。

  • 最後にシャビエルの2点目でもう1回、磐田の守備について考えて終わりにします。
  • 磐田は1-5-4-1ないし1-5-2-3の守備に切り替えてから顕著なのが、札幌のボールを持っている選手に対し、シャドーが制限をかけて中盤の選手がボールを奪うのか、中央の選手が前に出るのかはっきりしなくて、結果的に中盤みんな前にふらふらと出ているような構図になることが多くて、1-5-4-1なのだけど「5」と「4」の間にかなりスペースができるのが常態化します。
  • そうなると、5バックは札幌のFWにアタックできず自陣に張り付くだけ。5バックが並んでいる状態というのは、こういう速いパスもそうですが、シンプルな裏抜けとかで一気に無効化されやすい状態で、ボールホルダーに圧力がかからない磐田は5バックをうまく使いこなせていないと感じました。
  • 田中→興梠→金子と渡るところで、人を見るのか、コースを切るのか。おそらく人を見るのが主体なのでしょうけど、田中にまず圧力がかかっていないのでDFは先読みできず後手に回ってしまって、あとはなすすべがない、といったところでしょうか。

雑感

  • 予想通り、磐田のアタッカーやビルドアップをする選手をマンマークでほぼ守り切れて、目立ったトラブルもなく危なげない勝利でした。ミスマッチ以外でビルドアップが成立しにくいJリーグ(少なくともJ1中位以下)における、マンマークの有効性がよくわかる試合だったと思います。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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