2022年4月10日日曜日

2022年4月10日(日)明治安田生命J1リーグ第8節 名古屋グランパスvs北海道コンサドーレ札幌 〜彗星の軌道〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 長谷川健太新監督を迎えた名古屋は、リーグ戦ではここまで2勝2分2敗。ただ2勝はここまで不調の神戸と湘南相手で、まだ調子が上がっていないのかもしれません。
  • 前線はいまだにシュヴィルツォクが使えず、金崎もおそらく負傷でメンバー外のため酒井がフル稼働。試合を動かすならサブの相馬か、18歳の甲田になるでしょうか。
  • 札幌は、興梠が右膝内側半月板損傷で手術及び離脱とのレポートがありました。浦和戦に続いてトップにはシャビエル。そして名古屋サポーターが強力プッシュの青木とのユニットがスタートから実現しますが、果たして機能性はどうか、といったところです。

2.試合展開

健太メソッド:

  • 前監督のフィッカデンティ体制から、名古屋の強みはCB・中盤センターのスクエアにGKのランゲラックを加えた後方のユニット。丸山は離脱中?ですが藤井の台頭や、サブにチアゴが控えていたり、中盤にレオ シルバが加わったりでこの辺りの特徴は大きくは変わっていないように感じます。
  • ですので元々名古屋はここでボールを奪えるチームで、かつマテウスのような個人で長い距離を走れる強力アタッカーがいることもあって、あまり高い位置からボールをハントするインセンティブがあまりない。

  • 加えて長谷川健太監督が好むスタイルだと思うのですが、撤退時に4人のDFでペナルティエリア幅を守って、大外はプレスバックしたサイドハーフがカバーするやり方を用意している。
  • ですので名古屋は元々のチームの状況と、新監督の指向性が相まって、自陣でブロックを作って札幌がボールを蹴ってくるのを待つような戦い方でゲームに入りました。
サイドハーフが横幅を守る(ために走る)タスクを担う

酒井の空回り:

  • ただこの時の名古屋の失策というか、札幌に対してうまくいっていなかった点を挙げると、1つは前線で酒井が頑張って走って、高嶺だけでなくてGK菅野にもアプローチしていたのですが、柿谷は一昔前のブラジル人FWのように気まぐれというか、明確なタスクを持っていないようで、酒井と連動して何ができた、というと、ほとんど何もできていなかったように見えました。
  • 酒井と連動していないのはマテウスと仙頭も一緒で、おそらく後ろのスペースを埋める意識が強いのか、たとえば酒井がコースを限定して、マテウスと柿谷で福森と駒井を捕まえれば札幌はそれなりに困ったと思うのですが、そうした2人、3人で機能的にやれていた部分はほとんどなかったと思います。
  • ですので酒井(この試合の登録上、唯一のFW!)がどれだけ走っても、札幌がそれでボールを持てなくなるとか困ることはほとんどなくて、ボール持ってどうすんねん!って問題はあるのですが、とりあえず札幌はボールは持てていました。

  • もう1つが、札幌のWBにボールが渡るシチュエーションへの対処。名古屋としては、最終的には札幌のサイドアタックはクロスボールの放り込みで終わり、かつそれはターゲットがいないこともあって、中谷や藤井で簡単にクリアできると思っていたはず。これはその通りで、札幌はシャビエルが退く60分前後までシュート1本(これは誰の何のシュートでしたっけ?セットプレー?)と沈黙します。
  • ただ札幌のWBにボールが渡ると、名古屋のサイドハーフは低い位置まで下がってくる必要があるというか、そういう設計になっているので、WBに渡ってからの攻撃が不発であっても、戻ってくる選手の体力を削ることになるし、何よりも上下の移動距離やカバーするレンジが長大であるため、ボールを持った時に速い攻撃を仕掛けるのは、マテウスや仙頭にはかなり難しそうに見えました。
  • 結局福森の左に対して、名古屋がマテウスをぶつけているのも、おそらくは福森が攻撃参加から戻っていないようなシチュエーションで突っ込ませたいはず。ただマテウスへのタスクが重すぎて、これだと選手は省エネでプレーせざるを得ないかな、と、そんな感じに見えました。

  • 前半は、札幌がボールを持っているけどどうやってシュートを1本打ったのかわからないような展開。結構スペースはあるのですが、お互いに展開がスローすぎてまた「エンタメ性…」と言いたくなる展開でした。
  • 最大の決定機は、14分にマテウスの右からの高速低空クロスに酒井がダイビングヘッド。菅野が左手1本でビッグセーブで、いつものようにまず1点防いで札幌は命拾いします。

もしかして、何もないんですかね:

  • 後半頭から名古屋は仙頭→相馬。前節も仙頭が左で先発していましたが、多分彼をサイドで使いたいというより、ジョーカーが相馬しかいないので相馬を温存したいんだと私は読んだのですがどうでしょうか。
  • ですので相馬が入って名古屋はペースアップして、札幌は厳しくなるかな?と見ていたのですが、49分にセットプレーから宮澤のヘッド(この日、チーム2本目のシュート)で札幌が先制します。

  • 対する名古屋は、相馬が入ってやり方が変わるか、というと、そうでもなくて、またまずどのシチュエーションでボールを回収するか、から再定義が必要な状況でした。
  • というのも、札幌が名古屋のゴール前にあまり侵入してこないで後ろで回しているから、名古屋の強みである後ろのユニットでボールを回収するシチュエーションが殆どないんですよね。先行されるとカウンター主体のチームは弱い、をものの見事に体現します。

彗星の軌道:

  • 札幌は61分にシャビエル→中島。2分後、荒野が拾ってのカウンターから、中島が藤井の背後を取る動きから頭で合わせて追加点。
  • これはまず青木のクロス(ボールの質もそうですが、それ以上にタイミング)が良かったですね。藤井は首を振る回数が少ないように思えますが、ただ背後はSBに任せるところもあるので、吉田が戻っていたものの最後、体を投げ出せなかったのは、吉田にしてはらしくない感じもします。
  • 中島はリーグ戦初ゴールのセレッソ戦でもそうでしたが、CBの背後でボールを待つ(風間八宏氏ふうに言うと「背後をアタックする」)は徹底できていますね。近年札幌にはサイズがあってもこれができない選手が多かったので、中島は空中戦だけでオプションになりうるというか、ベンチ入りの7枠に入るのは妥当だと思います。

3.雑感

  • 0−5の前節も書きましたが、サッカーにおいてゴールは水物で、プロセスを見ていきましょう。
  • この予想はあまりあっていなかったというか、長谷川監督の名古屋が思ったよりも完成度が低かったですね。まずボールの奪いどころが明確になっていない(前線がチグハグで後ろのユニットを活かしきれていなかった)し、マテウスや柿谷が前残り気味で、後ろは個の強さで解決、みたいなやり方が札幌には嫌だったのですが、そうはならなかった(あとセットプレーも考慮に入れていたのですが、スーパーゴールに含めるとして。名古屋はセットプレーもあまり堅牢な感じはしなかった)。
  • あとは、酒井を高嶺にぶつけるとかもできたと思いますし、レオシルバを荒野に当てて、その不安定な振る舞いを狙うこともできた(荒野や駒井がシャドーでこれだけボールを失わないのは珍しいですね)。そういうミクロな部分でも、名古屋には物足りなさを感じました。

  • 札幌は興梠が3ヶ月くらい?の離脱で、前線は更に悩ましくなります。快勝でポジティブな気持ちでいるのはいいのですが、シャビエルがトップに入った2試合はほとんど流れの中でシュートチャンスがないんですよね。お得意の飛び道具で先制したからいいものの、荒野、駒井、シャビエルだと誰もゴールに向かってプレーしない(菅だけ)し、青木をスタートから使うとベンチの選択肢が減る。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

2 件のコメント:

  1. いつもレビューありがとうございます。途中で駒井と荒野を入れ替えた意図と効果(あったのか?)を教えて頂けないでしょうか。

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    1. 見ていただいてありがとうございます。
      名古屋の対応だと、アンカーのところにはよりスペースがあって、シャドーのところにはない。荒野はシャドーだと前を向けなくてキツそうだけど、アンカーなら十分スペースがあるので、駒井の方がより小回りが効くし入れ替えた方が、特に荒野はプレーしやすい、ってところだったと思います。
      それは当たってたかというと、少なくともアンカーでロストしたりはしないし、荒野は守備で体を張ったりもできるので、割と効果的ではあったかなと思います。

      というか、この2人なら最初からそれでいいと思うんですよね。荒野のシャドーはあまり効いてる印象ないです。前やってたFWの方が、細かいこと気にしなくて突っ込めるので向いていると思ってます。

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