2022年4月7日木曜日

2022年4月6日(水)明治安田生命J1リーグ第7節 サガン鳥栖vs北海道コンサドーレ札幌 〜Dead end〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 開幕から鳥栖は3バックの1-3-4-2-1で落ち着いたようですが、この日はルヴァンカップと同様に1-3-1-4-2(というか札幌をマンマークで対処するのが目的なので1-5-3-2と言った方がいいか?)に形を変えてきました。
  • これまでリーグ戦ではFWと、左CBジエゴを除く最終ライン2枚は同じ選手が出場していましたが、契約条項により岩崎を使えない左CBに中野伸哉、シャドーの2枚:菊池と堀米を外してアンカーの藤田と2トップの一角に本田風智。ジエゴがCBではなくWBなのがポイントですね。DFの島川とファンソッコは負傷中らしいです。
  • 札幌は興梠がスタメン復帰で、金子がシャドー、シャビエルがベンチスタート。配置は実態に則した形にしています。お互いにほぼ純粋なマンマーク志向なのもあって、攻守でほぼ変わらず、この配置でプレーしていました。

2.試合展開

がっぷり四つ…ってほどでもないか:

  • 簡単に、互いの陣地内でボールを持っている時のマッチアップだけ確認します。
マッチアップの確認
  • 鳥栖は「普通の1-3-1-4-2」って感じの配置でスタートします。
  • 特筆事項は、GKのパクイルギュが積極的にボールに関与することで、図では田代が右にずれてますが、田代は左にずれる方が多かったかもしれません。
  • そして鳥栖はジエゴと中野伸哉以外はみんな右利きで、センターラインに右利きの選手が集まっているのもあって、全般にボールを右足に置いてプレーし、右方向への展開が多かったと思います。ただ利き足の問題以外にも、後述しますがWBの飯野の特徴を活かす意図もあったのでしょう。

  • この鳥栖を、札幌は高嶺が下がってCBとして振る舞ってマンマークします。これはいつも見ている形なのですが、田中駿汰と福森が中盤の選手とマッチアップしているのは、(何度も言ってますが)どうにかならんか、って感じでもあります。
  • そしてこちら側のポイントは、興梠は田代とマッチアップのはずですが、田代に当たっていくことはほとんどなくて、アンカーの藤田を背中で消すことを意識していたようでした。サッカーのセオリー的にはおかしくはないんんですけど、「あれ?同数マンマーク戦法は?」って感じですよね。興梠はこの試合以外もそんなに相手のDFを捕まえることをしないので、おそらくチームにはコンセンサスがあるんでしょうけど、あれだけこだわっていたやり方を1人のFWの選手によって変えるのは、なんだかなぁ、という感じでした。
  • そして札幌のやり方だと、1人フリーの選手を作ると一気にプレスが機能しづらくなるので、興梠の隣の金子と駒井もあまり相手のDFにアタックしない。ですので鳥栖はとりあえずバックラインではボールを持って、休んだり考えたりする時間を得られます。
  • そして札幌の田中と福森が鳥栖の中盤の選手を捕まえるので、背後にはスペースが出来やすい構造でした。加えて、この2人はボール保持時も高い位置を取るので、そうなると常に最終ラインにいることがなく、戻ったりスペースを埋める意識は高くない。攻守の切り替わりからの全力スプリントで、鳥栖は何度もこのスペースを突いてきます。

  • 対する鳥栖の、札幌のボール保持への対応は、(興梠加入前の)札幌のやり方を完コピしたかのような局所同数によるマンマーク基調のやり方。藤田はアンカーというより、深井を捕まえるために高い位置をとる。最終ラインも、下がってくる札幌のシャドーやFW興梠を捕まえるために高い位置を取ります。

  • こうなると両チームともGKがボールを持つ展開になる。パクイルギュは言わずもがな、菅野も今や(Jリーグ基準では)フィードがうまいGKと言って差し支えないでしょう。
  • ただ互いに受け手をマンマークで守っているので、フィードがどれだけうまくても、受け手が特にFWや前線の選手であるほど受け手は自由にボールを扱えないことが多い。
  • ただ垣田のパワーには宮澤や高嶺は苦戦していて、ここに放り込むとファイルを誘発して鳥栖ボール、みたいなのは何度かあったでしょうか。

左WBジエゴの狙い:

  • こういう、お互いにマッチアップが噛み合っていてボールの収まりどころがなさそうな試合は落ち着くまでに時間がかかることが多いです。が、この日は10分の本田のゴールで鳥栖が主導権を握ります。
  • そしてこのゴールに、この試合の鳥栖の狙いが集約というかよく現れていました。まずは確認しましょう。
  • 冒頭、見切れてますが札幌のボールを回収したところから始まります。右インサイドハーフの福田が時間を作りながらドリブルで運ぶ(conducción)。ジリジリと下がる札幌のDF福森、そして切り替えてプレスバックするWB菅を上回るスピードで鳥栖の右WB飯野がオーバーラップ。
  • 最後は菅が福森に任せますが、福森の寄せが甘いところを突く形で飯野が速いクロスをファーに。本田がこれに飛び込んで合わせました。

  • 後半の4点目も小野の右クロスから。フィニッシュはDFの中野でしたが、ファーにジエゴも待っていました。

  • 度々書いていますが、優れたチーム、監督は自陣ゴールと敵陣ゴールから逆算したチーム作りをします。
  • 鳥栖の川井監督の”回答”は、札幌に対してストロングポイントとなるのは飯野の高速オーバーラップとクロスボール。特に、福森が不安定なポジションをとりがちな、攻守の切り替わりのシチュエーションを狙うと効果的です。
  • 加えてゴール前にはターゲットが必要になる。本田はそんなに空中戦に強くなさそうなので、もう一人欲しいとすると左から突っ込んでくるジエゴ。突破したりクロスボールでアシストしたりはしないけど、サイズがあり攻撃が好きなジエゴを岩崎の代役に立てたのは、とにかく右から仕掛けさせるから左はファーに詰めててくれ、って約束事だったのでしょう。岩崎もそもそも、似たような仕事なのでしょうか。
  • 結果的には、右クロスで得点したのは本田と中野伸哉、ってところは全てが筋書き通りではないにせよ、右クロスを狙っていくところまで決まっていれば十分でしょう。

持ち場意識の低さ:

  • スコアはこうなりましたが、鳥栖がものすごく完成度が高いチームだったかというと、そうは思いません。
  • 怪しかったのは撤退時の対応で、1-5-3-2でセットして、一転してスペースを埋める意識が強くなるのですが、守備のやり方自体はマンマークで決めているので、札幌はWBが大外に張れば割と簡単に釣り出してスペースを作れていました。
  • 鳥栖の守備は、札幌陣内だと、「どこまでもついていく」で対処できるのですが、鳥栖陣内に入ると、たとえば深井が下がった時にアンカー藤田はあまりついて行ってスペースを空けたくない。札幌が3枚になると、宮澤なり深井なりがフリーで配球できるようになるのですが、この辺をどうするか?は鳥栖はあまり考えていないように見えました。

  • じゃあ札幌の攻撃がなんでショボかったか(前半はシュートゼロ)というと、色々ありますが、一つはシャドーがあまり効果的ではなかったことでしょうか。
  • 鳥栖のプレッシングによって、前線にボールが供給されないので、興梠、金子、駒井が次第に下がってきます。
  • 興梠はボールを収めてそこからポジションを取り直すことが多いのですが、金子は受けたらそのままドリブルで突っ込んでいく。かつてキングカズが自陣からドリブルをすると、代表監督ハンス・オフトが「カズ、ダメよ!」と日本語で諌めていたとの逸話がありますが(ファウルで潰されて怪我するから。当時はファウル基準が今よりもはるかに厳しかった)、金子もそんな感じの非効率なプレーの選択を繰り返します。
  • 駒井はそもそも下がりすぎ、動きすぎで、札幌はペナルティエリア周辺まで侵入しても、ゴール前に興梠しかいないことが多かったと思います。

3.雑感

  • サッカーにおいてスコアは水物みたいなところもあるので、効果測定にはプロセスが重要です。問題はプロセスがずっと悪い(武蔵の移籍後から)ことで、それを、後半途中からオープンでぐちゃぐちゃなゲームにして誤魔化しながら点を取るのがいつものパターン。鳥栖も1点リードだとそうなるかな?と予想してましたが、「いい時間帯」に2点目を挙げたのと、ゲームコントロールも良かったと思います。特にコメントすることもなく完敗でしょう。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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