2019年12月6日金曜日

プレビュー:2019年12月7日(土)明治安田生命J1リーグ第34節 北海道コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレ ~何も恐れず 何も失わず~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)DF濱
MF檀崎

IN(夏マーケットでの加入)※特になし
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 雪が降り積もる季節になり、アンロペの家族はもう帰国してしまったようだ。2月23日に開幕→12月7日に閉幕というのは、改めてクレイジーなスケジュールだと思う(天皇杯もあるチームは…)。
 荒野と宮澤、深井は誰が出てもおかしくない。これに対し前線は、ゴールから遠ざかっているアンロペよりもジェイ、守備面でより信頼されていそうな白井の起用を予想する。そして、キム ミンテのリベンジの機会も奪わないのではないか。

1.2 川崎


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF中村(11/2広島戦での左膝前十字じん帯損傷)
*(負傷等で出場微妙)GK新井

IN(夏マーケットでの加入)GK馬渡(愛媛FCから期限付き移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DF舞行龍(アルビレックス新潟へ完全移籍)
MF鈴木(ガンバ大阪へ期限付き移籍)
MFカイオ・セザール(V・ファーレン長崎へ期限付き移籍)
FW宮代(レノファ山口FCへ期限付き移籍)

 3位鹿島とは勝ち点差3。鹿島が名古屋に敗れるという条件付きだが、自力でのACL出場権獲得の可能性を残している。中村以外はほぼ、負傷者が戻ってきた。GKは新井に負傷により前節は久々にチョン ソンリョン。が、マリノスの猛攻に晒され4失点したのは不安材料。CBは山村がレギュラーを守っている。前線はダミアンと小林の交互の起用が続いていたが、やや小林の起用が増えている。

2.今期の対戦の振り返り

2019年6月14日(金)明治安田生命J1リーグ第15節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌 ~カオスの調停者~

 宮澤とルーカスを欠き、ジェイとアンロペも故障明けの札幌は川崎にボールを渡し、自陣からのダイレクトな攻撃に活路を見出す。しかし(毎度のことながら)札幌の人を受け渡す守備は川崎の流動的な攻撃に翻弄される。前半からク ソンユンの度々のビッグセーブでなんとか0-0を維持し、武蔵のPKで1点のリードを奪って折り返し。後半はカウンターにも結び付かず防戦一方の展開で、小林のヘッドで川崎が追いつく。その後も川崎が攻めるが1-1で試合終了。

2019年10月26日(土)2019JリーグYBCルヴァンカップ 決勝 北海道コンサドーレ札幌vs川崎フロンターレ ~陽はまた昇る~

 ほんの1ヶ月前の話なので簡潔に。札幌が得意のGKからの幅を使った攻撃でまさかの先制も、すぐに川崎が押し込み、札幌が撤退する展開に。ダミアンや脇坂の逸機が続く中で、武蔵かロペスがカウンターを制していれば、という展開だった。

3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌


コンセプト極限まで後ろの人数を削って、なるべくゴール前に多く人を送り込む。
ボール保持
(自陣)
1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持
(敵陣)
引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持
(敵陣)
「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持
(自陣)
1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブ
トランジション
前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブ
トランジション
自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

3.2 川崎


コンセプトスモールフィールドでの戦いに持ち込み、選手の質とユニットのコンビネーションで局面を制圧。
ボール保持
(自陣)
DFと中盤センターはあまり広がらず、あまり動かずに中央でボール保持から、下がってくる家長やトップ下に預けながらゆっくり前進。
ボール保持
(敵陣)
サイド(特に左)に人を3~4人集めてコンビネーションで突破からのクロス。中央も同様に人を集めて、基本的に足元でのプレーからの突破を狙う。
ボール非保持
(敵陣)
なるべく[1-4-4-2]は維持したまま前線4人+1人で高い位置から人を捕まえ、成功すればショートカウンターを狙う。4+1人でのプレスが失敗すると自陣ゴール前に最終ラインを引き直す[1-4-4-2]へ移行。
ボール非保持
(自陣)
ブロックが整ったら人を捕まえる。最終ラインのCBはスライドするので相手FWが流れるタイプだと中央から不在になることも。
ネガティブ
トランジション
密集攻撃からボールホルダーを囲い込んで即時奪回を狙う。
ポジティブ
トランジション
自陣で回収後は長いパスで前線の選手を走らせての、まずはダイレクトな展開を狙う。
セットプレー攻撃キッカーは中村→脇坂。左足なら下田など。
セットプレー守備CKではマンマーク基調。
その他memoダミアンが出場している時はロングボールの比率がやや多め。

4.想定される試合展開とポイント

4.1 何を怖がっているんだ


 試合展開は互いのスペックよりも、「意思」で決まると思っている。
 川崎に対し、1年目のミシャ札幌のアプローチは「札幌陣内に入らせないためにハイプレスでいこう」。だったのだが、このゲームプランは等々力の7-0の悪夢により、押し入れの奥に片付けられてしまった。2019シーズン、等々力でのリーグ戦、そして埼玉でのルヴァンカップ決勝とも、札幌の戦い方は、自陣にいかに枚数を確保して、川崎の密集攻撃に対抗するか、という点にフォーカスされている。アプローチが180度変わっていることになる。

 願望が多分に含まれるが、札幌にとってタイトルもACL出場権も懸かっていないこの試合では、再び2018シーズンでの対戦のように、また11月の横浜F・マリノス戦のように、札幌陣内ではなく敵陣でプレーする意思をもった試合展開が見たい。
 これは単に好き嫌いの問題よりも、川崎相手の苦手意識を払拭し、2020シーズン以降に真にタイトルを狙えるチームとしてエントリーするなら、自陣にこもっていては難しいと考えるからだ。ルヴァンカップ決勝は深井の奇跡的な得点、川崎の数度の逸機もあり、PK戦にもつれる展開となったが、25分以降、得点の期待値が高かったのは常に川崎だった。要するに、自陣ゴール前で耐える時間が長い試合展開では、守備の文化がないミシャチームが勝つことが難しい。勝つなら前に出るしかない。

 そして川崎は、ビルドアップ(自陣から敵陣までボールを運ぶこと)が実はそこまでうまくない。川崎の代名詞として、パスが何本も繋がったゴールシーンが想起されるが、相手ゴール前での密集地帯での即興を含めたフィニッシュワークは得意であるものの、ピッチを広く使うことが要求される自陣でのビルドアップには難がある。GKにそうしたタイプの選手を保有していないし、実際にマリノスのエリキに谷口が狙われて失点してもいる(前節)。札幌としても、十分に勝算があるはずなので、前に出て戦うべきだ。それが未来に繋がることにもなる。

4.2 怖いフリーマン


 ミシャチームに”その気”があるとして試合展開を考える。
 ハイプレスをするなら、マッチアップを合わせる(川崎にフリーのフィールドプレイヤーがいない状況を作る)必要がある。これは下図の通りできるので問題ない。過去にも似た形で数度、運用している。
「枚数を合わせる」

 F・マリノスのチアゴ マルチンスのように、「CBが中央からサイドに開くことで相手のFWのプレスを回避し、CBを始点にボールを運ぶプレー」は、どの居酒屋にもある厚焼き玉子のような定番になって数年が経つ。これをやられると、運動量に乏しいFW(はっ…ジェイボスロイド様のことではありません…)が1列目を務めるチームだと厳しいが、川崎はあまりCBが開いてプレーしないし、ビルドアップにおいて決定的な役割を担ってもいない。サイドはSBの滑走路だ。

 川崎のポイントガード(ボールの運び役)は、中央のMFと下がってくる2列目…特に家長。田中にせよ大島にせよ、札幌はマーカーを用意できるので問題ない。
 問題になりそうなのは家長で、その奔放なポジションチェンジは福森のマンマークによる対応を難しくさせる。福森は典型的な”ソファの幅しか守れない”選手で、四方田ヘッドコーチが頑なに、最終ラインに過剰なまでの枚数を用意するかのような戦い方をしていたのは福森にかなりの原因があると思っている(福森の左右に選手を置いておかないと簡単に攻略されてしまうので、最終ラインに常に5枚揃っている状況にしておきたい、ということ)。
CBはあまり貢献しないが選手が降りてきて解決する

 だから川崎としては、札幌がハイプレスでくるなら家長のところで勝負、が最も合理的だ。ただ、その家長をどこで使うかという点は要検討。ピッチのどこにいても対面の選手に勝てるなら、ゴール前で働いてもらった方がいい。もっとも、自由に動き回る選手なので、どこまでコントロールできるかという問題もあるが。
 札幌は福森に限らず不利なマッチアップをカバーしたい。が、マンマーク色が強くなるとカバーリング関係は働きにくくなり、限度がある。家長-福森のマッチアップ以外だと、オリジナルポジションが離れている両ウイングバック、そして機動性のある大島と宮澤のマッチアップは気になるところだ。この点を考慮すると、宮澤ではなくこちらも機動力のある荒野の起用は、ハイプレス戦術を採用するなら普段よりも有力なオプションになるだろう

4.3 現実論


 とはいえ、仮にハイプレス戦術を採用したとしても、札幌が自陣ゴール前で川崎のアタックにどう対抗するか、は用意しておく必要があるし、これまでの経緯からいっても重要だ。

 ルヴァンカップでの川崎は、家長や車屋をスタートではサイドに配置していた。これによって、札幌のDFの横幅を拡げ、より中央に選手が走り込むスペースを作ろう、とのアプローチだった。
 この形になると札幌には分が悪い(と筆者は思っている)。札幌の強みの一つに、チャナティップ・ジェイ・武蔵が分業で行う速攻がある。ジェイがボールを収め、武蔵が走り、チャナティップがスルーパスを狙う。この3人が「速攻での攻撃に関与できる状況」を常に維持しておきたい。が、図のように車屋が攻撃参加すると、右サイドは白井1人に任せられない。武蔵が下がらざるを得ず、前線でジェイが孤立(それでも、山村には結構買っていたのは流石だ)、というデジャビュになりかねない。
車屋が攻撃参加すると右は1人だけでは足りなくなる

 何らか、武蔵を前に残しておける手立てがあると面白い。宮澤がカバーする(2列目はは深井との2人ではなく、チャナティップを含めて3人で守るイメージか)、進藤がポジションを捨てて早めに対処する、など。

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