1.スターティングメンバー
- この試合を含め残り5節となったJ2。水戸は14節でPO圏内の5位に浮上し、20節から首位に立ち33節を終えた時点でも長崎に次ぐ2位につけますが、8-9月は2勝4分2敗、8試合で8ポイントしか積めず正念場を迎えています。
- 上記は夏のマーケットでFW寺沼を放出(→ヴェルディ)した時期と重なっていますが、彼のような前線で体を張れゴール前にも入っていけるFWを欠くことになった影響は小さくないでしょうし、一方で他にも色々要因はあるでしょう。ただそもそも、負けなしが続いていた4-7月までが出来すぎだった感はあります。
- スタメンは前節からFWの粟飯原→多田。13ゴール7アシストの渡邉が負傷離脱する中で、U20日本代表の齋藤俊輔が前線を牽引している印象です。
- 柴田監督就任後ホームで1勝3敗のコンサは前節から青木→スパチョーク、浦上→宮。浦上は加入後初のベンチスタート。スパチョークは新監督就任後は右シャドーが多かったですが得意の左シャドーに入りました。
2.試合展開
1-4-4-2 vs 1-3-2-5 その1(コンサのビルドアップ):
- 柴田監督就任後のコンサは、岩政前監督が末期に採用していた形を踏襲し、ボール保持の際にCB3人のうち中央(浦上)がGKから見て右、左(西野)がGKから見て左に立ち、右(髙尾)は右SBの位置に立つ形でスタート。
- しかしこの日は浦上ではなく左利きの宮がスタメン起用のため、ここをどう変えてくるかが一つの注目点でしたが、開始直後は浦上と同じく宮が右に立ち、西野とはそれぞれ利き足と反対サイドに立つ珍しい形をとっていました。
- 特に左足でのプレーが多い宮に対し、水戸のFW奥田がその左足を切るような守備の仕方をするとコンサは結構困るかなと思いましたが、水戸はチームとして前線からそこまで明確にマンツーマンではめてくるような守り方ではなく、コンサがロングボールなどで水戸ゴール付近に運んできた時に素早く撤退できるように、あまり前掛かりになりすぎないようにしていたと思います。
- ですのでまず宮が中央〜右寄りにいることがそこまで不都合を生じてはいなかったとの感想です。ただあまり良い形もなかったかもしれません。
- コンサはその後、GK高木の前に宮と西野の2人が並ぶというよりは、髙尾も含めた3人が並び…つまりオーソドックスな3バックの1-3-2-5の形からスタートすることが多くなります。水戸があまりマンツーマン色が濃くない1-4-4-2でしたので、宮と西野が水戸の2トップ、髙尾が左MFの斎藤に捕まりやすいのでこの配置になったのは自然かなと思います。
- ただコンサにとっての問題は、WBとシャドーが最初から高い位置にいて3人のDFと距離が離れている。ここを中継するには中央の宮澤と高嶺を経由するか、左右のDFが持ち運ぶかなどして前線の選手へのパスの距離をもう少し短くしたほうが良さそうでしたが、コンサのDFにはそうしたプレーが皆無だったことでした。
— AB (@british_yakan) October 26, 2025
- たまに「相手が2トップに対し3バックで数的優位なのでうまくいっている」みたいな戦評を目にしますがそうした人数配置の問題だけではないことがわかります。
- このコンサの場合、DFのところで数的優位なのですが、それなら髙尾や西野はボールを持ってより前に出ていくことが必要だし、そのために中央の選手は髙尾や西野をなるべくフリーにするとか、逆に自分が開いたら前を向くとか縦パスを出すといった絵を描いている必要があります。
- またWB、特にパクミンギュがいつもより高い位置にいたのは、水戸の右SBの飯田のところに圧力をかけていくイメージだったかと思いますが、パクの選手特性(本来はSB)を考えても、もう少し低い位置に配置して、水戸のSBとSHの間でプレーさせ、飯田をアタックする役割はスパチョークと分担するようなイメージでもよかったかもしれません。
- パクも近藤も、シャドーのスパチョークも長谷川も、出し手となるコンサのDFから離れていたので、コンサのDFはとりあえず前に放り込むような選択が多かったですし、高嶺と宮澤が前を向けるようなパスが宮から出てくることもほぼなかったと思います。
1-4-4-2 vs 1-3-2-5 その2(水戸の籠城):
- コンサがボールを持っている時に、水戸はセンターサークルの直径に合わせるようにFWとDFの高さを設定し25mくらいの縦幅のミドルブロックを設定するところからスタート。
- コンサがロングボールを蹴ってセカンドボールを拾うとかで何らか水戸陣内に入ると、水戸が自陣ペナルティエリア付近で1-4-4-2のうちの4-4が並ぶような、かなり低い位置にブロックを作って対応することが多くなります。
- 水戸は全体的にボールホルダーにアタックする守備が少なく、人を多く、中央に並べてスペースを消し、簡単に飛び込まずに相手のミスを待つような守りを展開します。
- 試合後の会見で水戸の森監督が近藤と高嶺の名前を挙げていたようですが、自陣ゴール付近にこれだけ人を並べてスペースを消す対応だと、組織で打開することが難しそうなコンサとしては何らか個人技に頼りたいところですし、それならばワイドで1v1、1v2でも勝てる近藤と、中央でドリブル突破や遠距離からのシュートがある高嶺の2人が候補になるのは誰が考えてもわかる話かと思います。
- ワイドでは近藤とパクミンギュに対してはSBとSHの2人で対応し、高嶺に対しては早めに中央の大崎や山崎が出てFWがプレスバックする。この2人に対してこれだけ警戒がされていれば他の選手が空くように思えますが、コンサはそこまで考えていなかったというか、彼らが水戸の選手を引きつける構図を理解していなかったように思えました。
- 水戸はこの自陣ペナルティエリア付近で枚数をかける対応が前提で攻守にわたる全てが設計されており、一度コンサが水戸を押し込んだあとのラインアップもそこまで迅速ではない。コンサが水戸を押し込んでプレーすること自体は簡単でしたし、そういう試合展開は予期できたと思いますが、籠城する相手に有効なプレーをなかなか見せることができませんでした。
若武者のゴラッソ:
- 序盤、水戸はボールを持った時にはほぼ毎回前線へのロングボールを選択。この試合に限らずですが右SBの飯田をやや高めの位置に置く形から始まることが多いですが、コンサが前から水戸のGKとCBを捕まえることが多かったのでロングボールが多くなり、飯田はそのターゲットとしても割と使われていたと思います。
- ↓のように本来前にいる加藤が引いて、パクミンギュがそちらのマークについたところで飯田がフリーになるような形もあり、単純なサイズとか体の強さで勝ち負けが決まらず、前進の手段としては悪くなかったかと思います。
- 水戸の前進が成功すると、コンサとしては自陣で1-5-4-1で引いて守るイメージがあまりないのでしょうけど、シャドーの長谷川とスパチョークがそこまで迅速に戻ってこない(長谷川はそうでもないかもしれないが、少なくともスパチョークはあまり迅速ではない)とするなら、水戸は高嶺と宮澤の間のスペースを使ってよりコンサ陣内のペナルティエリア付近に近づきたいところですが、水戸はこのスタメンではコンサの陣内で前方向に進んでいくには左MFの斎藤頼みという印象でした。
- 2トップの多田や奥田は足元でのプレーもスペースへのランでも、宮や西野にとってそこまで脅威ではありませんでしたし、右の加藤はバランスを取るように中央寄りにいることが多く、前線に走り込むような機会も控えめでした。
- そんな唯一の脅威?だった斎藤が26分に、左サイドで反転から4人に囲まれながらも素晴らしいミドルシュートを突き刺して水戸が先制。
個人技で魅せた斎藤俊輔の強烈ゴラッソ🔥
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) October 26, 2025
🎦 ゴール動画
🏆 明治安田J2リーグ 第34節
🆚 札幌vs水戸
🔢 0-1
⌚️ 26分
⚽️ 齋藤 俊輔(水戸)#Jリーグ pic.twitter.com/qGm1rLXI0P
- このプレーでスコアが動いた後のキックオフから、水戸は斎藤が下がって5バックになる形でコンサに対応しますが、これは森監督のコメントでは選手の判断だったとのことです。
- その監督のコメントの通り、奥田がシャドーまで下がって1-5-4-1になるのではなくやや中途半端な位置どりだったため、斎藤が下がったところにスペースがある状態でした。27分には宮澤がそのスペースに入ってボックスすぐ外からミドルシュートを選択したのはさすがでした。
- コンサはこの時間帯、高嶺か宮澤が下がって宮からボールを引き取るとともに、西野の攻撃参加を促します。左にパクとスパチョークに加え3人目を投じることで、数の力でなんとか崩そうという考えだったでしょうか。
- スパチョークは前に走り込むというよりも、下がってボールを受けたりスペースを作ろうとしているような素振りが多く、それ自体は理解できるのですが、宮澤と高嶺の関係性が前者が前、後者が後ろが多かったこともあり、高嶺がそのスパチョークが空けたスペースに走り込むことはほぼなく、スペースを意識していたのは寧ろ西野でした。
勝負の時間帯…:
- 後半頭からコンサはパク→荒野で長谷川を左WBに移します。水戸相手に押し込む形にはできるので、相手のSBに対して仕掛けられる選手として長谷川に期待したのでしょう。
- 後半開始からは水戸は再び1-4-4-2に戻してきて、お互いにミスマッチでマンツーマンベースの対応ではマッチアップが噛み合わずプレッシングがあまりはまらない、お互いに大ロンドというかDFとワイドの選手でボールを動かすことができる時間帯だったとお思います。
- 水戸がボール保持の際にDF3枚気味になるので、コンサは荒野、スパチョーク、バカヨコの3枚で同数関係にできなくもなさそうでしたが、後ろでミスマッチになることを嫌ってかあまりそうした仕掛けはありませんでした。
- 58分にコンサは宮澤→大﨑。61分に水戸は多田・奥田→粟飯原・山本。
- 水戸は前線に大きい選手がいなくなり速さや仕掛けが持ち味の選手が並びます。
- カウンターで2点目を奪いたいのは当然なのでしょうけど、シーズン後半になって水戸は追加点を奪えず、前がかりになったところでバランスを崩して失点…というパターンで何度か勝ち点を落とす憂き目に遭っている。
- この試合もまさにその傾向があり、水戸の4人ほど人数をかけてくるカウンターをコンサが守って(斎藤と山本の仕掛けを止めればそう怖くない)、半オープン気味なところでコンサが逆にカウンター返し、という場面は何度かありました。しかしコンサもそこでシュートまで持ち込めないのはお互い様といったところでした。
- コンサは後半開始から左に入った長谷川が、高い位置で水戸SB飯田への仕掛けというよりは、反対サイドや中央をよく見ていた印象で、水戸が警戒していた右の近藤で勝負する形が何度かありました。
- 一方で近藤に対しては水戸の左SB大森が流石に特徴を熟知しており、斎藤や山本のプレスバックが間に合わなくても、近藤が簡単にクロスボールでフィニッシュできない状況には持ち込んでいました。
- 64分にコンサはその長谷川→田中宏武、髙尾→中村桐耶。髙尾が
- 74分に水戸は斎藤・加藤→塚川・新井。コンサは77分にバカヨコ→マリオ セルジオ。82分に水戸は最後のカード:山崎→久保。
- 終盤コンサは中村だったり、シャドーの2人だったり大﨑だったりでポケットへの侵入を繰り返しますが、侵入からのクロスボールに対しては水戸はSBの背後を取られても常に1〜2人がその進路上で待機しており、コンサはシュートチャンスを作れないままだったと思います。
雑感
- 長年のよしみ?みたいな感情がありこのシーズン終盤戦に挑む水戸をひっそり応援しているのですが、水戸は現状こうした先行逃げ切りしか勝ちパターンがなさそうで、また60分過ぎ以降くらいに足が止まり、追加点を奪えないと追いつかれて勝ち点を落とす展開が何度かありますがこの試合はコンサの相手ゴール前でのクオリティ不足もありなんとか水戸が逃げ切りました。
- 水戸がシステム1-4-4-2ですので、基本的には
- 相手の4バックに対して横幅を使う
- 水戸のSHが低い位置でSBへのサポートのタスクが小さくなく、あまり前に出てこないことから、相手の2トップの脇のスペースを使う
- あたりがまず最初に足掛かりになるところかと思います。1つ目に関しては近藤がワイドで1〜2人引きつけ、中央に展開して…という場面は頻繁に見られたのでそこはチームとして共有しているのだろうとは感じました。
- 2つ目がより改善の余地ありと思うところで、水戸の1列目〜2列目の周辺でプレーするコンサの選手がもう少し水戸の2列目を引きつけないと、水戸がペナルティエリア付近に8人でブロックを作る最終形に変形することが簡単になってしまう。選手個人のパフォーマンスも足りなかったですし、そもそも2トップの水戸に対して3バックをアシンメトリーにする意図がよくわかりませんでした。
- あとはこの試合に限った話ではないですが、ワイドに展開した時にクロスボールでフィニッシュするとして、コンサはシャドーにあまりサイズがなくFWとしての動きが得意そうにも見えない選手を起用しているので、頭を狙うクロスボールというよりは、DFとGKの間のスペースを狙うようなフィニッシュを用意したほうが良さそうに見えます。
- 現状はセンターFWしかターゲットがいないにも関わらず、近藤が頑張ってその人の頭に合わせようとして、確度の低そうなフィニッシュに終始しています。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。







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