2025年10月20日月曜日

2025年10月19日(土) 明治安田J2リーグ第33節 カターレ富山vs北海道コンサドーレ札幌 〜首を垂れる慎吾かな〜

1.スターティングメンバー



  • 勝ち点27で17位の大分と7差の富山は前節と同じスタメン。18節(17節よりも先に開催)から安達亮監督が指揮を執り、16試合で3勝3分10敗。小田切前監督は16節までで3勝6分7敗ですのでチームを浮上させることはできていません。システムは2節前のvs長崎から3バックの1-3-4-2-1ベースとしているようです。
  • コンサは長谷川と、出場停止明けの近藤がスタメン復帰で代表帰りのスパチョークがベンチスタート。前線はバカヨコが柴田監督体制では初陣となった26節以来2試合目のスタメンで、故障明けの宮はベンチスタート。宮澤は19節(6/15、vs今治)以来のスタメン。

2.試合展開

上位互換と下位互換:

  • 「やっていることは似ているチームだと思う」というのが、試合前インタビューでの富山・安達監督のコンサ評。
  • 富山がボールを持っている時の様子を観察すると、右CBの深澤が右にズレてSBのような位置からスタートするのは、コンサの右DF髙尾のポジション移動と似ている。それに対しボールを持っていない側の振る舞いは、そのポジション移動に対しマンツーマンで担当を決めて対応していく。この辺りは確かにお互いにやっていることがほぼ同じでした。

  • 一方でこの形を基本形としつつ、両者の違いというか互いにそれぞれ強み、弱みが見られました。
  • 富山がコンサに対して上回っていると思った部分は、ボールを持っている状態で自陣から敵陣に入っていく際のプレー。

  • コンサはボールを持っている時に3バックの中央(から、右にスライドして右CBの位置でスタートすることが多い)の浦上が、あらゆる展開の始まりであり最もボールに多くタッチする選手。この浦上が右にズレることと、右WBに白井または近藤というボールを持っている時の特徴が明確な選手がおり、その背後にスライドした髙尾がいるということで、コンサは左右でいうと右サイドでの展開が左に比べて多い
  • 一方で富山は、コンサ同様DFが右にズレて右の方が人が多いにもかかわらず、左サイドからボールを前に運ぶプレーが多かったと思います。
  • 対コンサでいうと、富山は左サイドでコンサの1列目のうち右シャドー・長谷川を外してその背後にボールを送り込むことを徹底しており、序盤から何度も成功していました。
  • ボールを持っていない側の対応をマンツーマンベースで考えると、長谷川は富山の左DF香川が担当になりますが、富山の変形布陣に対しコンサがマンツーマンベースで対応するがゆえ、コンサの前線はバカヨコと長谷川の2トップで青木が下り目のような形になる。
  • そして長谷川が2トップっぽい位置どりと役割になったまま対面の香川に対して出ていくと、コンサの前線右には誰もいない状態になり、そこに富山は左WBの吉田が、香川からの斜めのパスの受け手として登場(下がってくる)。この吉田に対し、5バックを維持するコンサは近藤があまり出てこないので、吉田がフリーで時間とスペースを得られることになり富山はボール保持が安定します。
  • そこから近藤や髙尾が出てきたら、富山はその吉田なり、左シャドーの吉平なりが背後を取る動きをする。出てこないなら、吉田からシャドーの吉平に斜めのパスを入れてコンサの5バックと勝負、という具合でした。

  • 富山のこうした、ボールを持って敵陣に入っていくプレーはコンサよりも明らかに整理されている印象でしたが、一方でコンサの5バックを崩していく局面において富山は問題を抱えていたとも言えるでしょう。逆にコンサの5バックは比較的、落ち着いて対処ができていたと思います。
  • コンサは浦上加入後からの傾向通り、相手の前線の選手にボールが入ったら、DFはなるべく我慢して食いつかず背後を取られないようにし、中盤の選手がプレスバックで加勢する時間を稼ぐ。
  • 高嶺がこの仕事をやってくれるのはそこまで以外ではないですが、加えてこの日のコンサは青木のプレスバックというか下がっての対応が効いていました
  • 富山の右DFの深澤が高い位置を取る関係上、青木は最初から下り目にいることが多い。この低い位置でのプレーを強いられた時に単なるアタッカー以上の振る舞いができるのが青木の強みで、富山がコンサのDFやMFの前で左右にボールを動かしてきた時にしっかりステップを踏んで縦のパスコースを切り続けることで、高嶺、宮澤と3人で中央を固めることができていたと思います。

  • 富山は吉平にボールが入るのは良いとして、そこからのコンサの守備を中央で割ることがほとんどできず、サイドから放り込むか強引に突破を計るか、距離があるところからミドルシュートを撃つか、に終始しており、ボール保持がなかなか前線のチャンスの質に結びついていない印象でした。

xG 0.07:

  • コンサがボールを持っている時は、↑に書いたように互いの配置と、ボールを持っていない側のマンツーマンベースでの対応であることは共通しますが、富山はコンサ以上に前線の選手がボールを持つDFに対して高い位置から近い距離まで寄せてくる対応でした。
  • そしてコンサはGK高木がそのプレーに関与することを好み、高木がバックパスを処理する機会も多かったですが、富山は1トップの小川が高木に対しても2度追いで頑張ることが多かったと思います。
  • そうなると高木やコンサの選手は無理せず?長いボールを前線に蹴るのですが、コンサはこの日前線にバカヨコがいて一応ターゲットが明確になっている。
  • 対する富山は、CB3人が右から175、178、176cmとかなりサイズがない(ついでに言うと中盤センターの末木と河井は177、166cm)。
  • この身長差だけで何かが決まるわけではないとは思いますが、重要なのは、富山は前線の3人+中盤センターの末木と河井が前方向にコンサの選手を捕まえようとして出てくるのに対し、5バックは押し上げることができず、末木と河井と5バックとの間にかなり大きなスペースが生じている状態が終始見られたということです。
  • 富山のDFが押し上げられないのは、バカヨコとのマッチアップなのか、解説の方(富山のGKコーチなどを歴任されていたらしいです)が指摘する長谷川の動きなのか(DAZNで見切れるので私はあまりわからなかったですが)、近藤の速さを警戒なのか、色々あると思いますがともかくこれだけスペースが空いてしまうと、前で奪いきれない場合は厳しいなという印象でした。

  • そして20分の高嶺の先制ゴールは、互いのそうした構図が見えてきたくらいの時間帯だったでしょうか。
  • 直前のプレーは、コンサのDFとGKが自陣ペナルティエリア付近で富山の前線守備の圧力を受けながらもボールを保持して、左の西野からバカヨコへの縦パス。バカヨコ→宮澤→青木、とまさに↑で図示したように富山の2列目-3列目のスペースでプレーして、青木からパクミンギュへの浮き玉のパス。
  • 富山のDFがなんとか戻って対応しますが、香川?のヘディングでのクリアが中央に飛び、そして前に出ていた河井のプレスバックが間に合わず高嶺が先にぼーるをコントロールして…という場面でした。

  • やはり構図的に、富山のDFの強度のなさと対応の弱気さというか前で処理できない問題と、前後で分断気味でスペースができやすいという部分が現れた形だったとは思いますが、それでも高嶺の素晴らしいシュートは特筆に値するでしょう。
  • xGでいうとだいたい0.07…10数本撃って決まるかくらいの指標になっていますが、おそらくJリーグのxGは「長い距離を走りながら浮き玉を処理してボレーシュート」という文脈まではアルゴリズムに入っていない(シューターの座標とシュートのおおまかな種類のみ、DFの位置が考慮されているかは不明)ので、そこも考慮するとxG約0.07というよりももっと難しいシュートだったと思います。

ボックス付近での攻防:

  • スコア0-1となって以降、前半は特に試合の構図(お互いのビルドアップと、それへの対応の仕方)は大きくは変わらなかったと思います。
  • 相変わらず富山は自陣でボールを持つことはできる。対するコンサは「3-4分に1回くらい」の頻度で富山のDFにバカヨコと長谷川、青木でマンツーマンで捕まえようとして前に出る様子が見られましたが、富山がボールを動かして長谷川を外すことで回避することはほぼ毎回できており、コンサはそれを見て自陣で1-5-4-1ブロックを作りバカヨコだけを残して撤退することがめいんになっていきます。

  • そうなるとコンサの中盤センターの高嶺と宮澤の脇に生じるスペースは小さくなることもあって、富山は河井がやや下がって中央、バカヨコの周囲でボールに触ることが多くなり、また左の吉田→吉平の斜めのパスコースが見つかりづらくなったこともあって、富山は徐々に中央〜右サイドにボールを展開することが増えていったと思います。
  • 富山は右サイドでは余り気味(枚数的にも左よりも1枚多く、かつ明確な仕事がそれまでなかった)だった右WBの布施谷がパクミンギュの背後に走って、そこに浮き玉でパスを出すような、左サイドに比べると手数が少ないやり方を使うことが多かったと思います。
  • シャドーの佐々木はボックス付近でボールに関与するよりも、落ちてきてその前の局面で関与することの方が目立っていたかもしれません。だいたい右サイドの最前線にいるのは布施谷でした。

  • 最終的には富山はこのワイドで違いを作れるかが焦点になっていたのは、序盤からの左サイドの攻防、中盤以降の右サイドでの攻防とも共通していました。
  • そしてコンサはこのワイドでは最低限は蓋をしていたので、富山はボックス付近でのシュートチャンス自体はそこそこあり、布施谷に加えてDFの深澤が攻撃参加してポケットを取る動きも見せたものの、崩し切ってのシュートはかなり少なく、中央に入れたとしてもコンサのDFを外していない状態で打つ、強引なシュートが目立っていました。

  • 対するコンサが、前半終わり際の43分頃と後半に入って50分頃にシュートチャンスを得ますが、これはいずれもバカヨコが背後というかワイドのスペースに走って浮き玉のパスを受けてのポストプレーで富山のDFをボックス内まで撤退させてから。
  • 43分の青木のシュートは高嶺のゴール同様にDFが下がってできたスペースに走り込んだもので、49分には一度やり直してからボックス内に長谷川がクロス→宮澤が落としてバカヨコがボレーシュート。このあたりは富山に対してどこを突いていけばチャンスになるかある程度、見え始めている印象でした。

  • この際、後半になると富山はそこまで高い位置から前線の選手がコンサのGK高木やDFに突っ込んでいくことはしないので、コンサが富山のボックス付近でボールを持っている際は、富山が1-5-4-1のブロックを低い位置に作るようになり、このブロックを攻略しない限りは簡単にシュートを撃てない状況に徐々になっていたと思います。


xG 0.03:

    • 61分にコンサは宮澤・バカヨコ→木戸・荒野。荒野はそのままFWでした。富山は65分に佐々木→松岡。
    • 61分のコンサの交代くらいから富山が再び前に出てくるようになり、プレーのスピードが上がって互いにミスが生じたりもしてオープンな展開になります(互いのGKが同じ様な局面で芝に足を取られてあわやゴール、という場面も1度ずつありました)。交代の際に時間を使って一息ついた、ということもあったのかもしれません。


    • コンサの選手交代からオープンになった数分間が、富山の選手交代で一息ついて、直後に高嶺が再び格の違いを見せます。

    • コンサはFWに入った荒野が、富山のCB中央の神山に対しマークを明確にするというミッションがあったようで、この直前のプレー…富山のゴールキックの際に荒野と長谷川で富山のCB神山と香川を牽制します。それを見てGK田川が低いフィードを、CBを飛ばして河井のところに蹴ったところをここもマンツーマンで見ていたコンサが回収…というところからのプレーでした。

    5バックの有効性:

    • 71分に富山は吉平・吉田→亀田・伊藤。コンサは74分に長谷川・髙尾→宮・中村桐耶。

    • 富山は亀田が投入直後に左からコンサのDF3人ほどを横断するドリブルからミドルシュート。高木が正面でかろうじて弾きます(リバウンドを富山の選手が詰めますが枠外)。
    • コンサはトップの荒野が富山のCB間の(横方向の)パスコースを切って片方のサイドに誘導してから、マンツーマンで捕まえている選手が対処するという守り方だったかと思います。
    • 富山の左WBに入った、仕掛けるタイプの選手っぽい伊藤に対しては近藤(この日あまり仕掛けていなかった)がまだ余力がありそうな対応を見せ盤石でしたが、中央にパスが入るとマークが曖昧になったりで富山はまだコンサのボックス付近でプレーする機会を得ます。
    • それでも富山は、コンサの5バック+2列目も戻って9人、場合によっては10人がボックス付近でスペースを消す対応に有効打を示せないのは相変わらずで、コンサのゴールを脅かすクリティカルなシュートはほぼ見られないままタイムアップの笛が吹かれました。

    雑感

    • ↑はコンサの柴田監督の弁ですが、
    • まず富山のボール保持・コンサのボール非保持の局面において、富山は自陣のGKやDFから前線のシャドーの選手のところまではどうやって前進するか、コンサの選手が向かってきた時にどう剥がすかが同じ絵を描けており、コンサの極めてシンプルなマンツーマンベースのプレッシング(基本的には1v1の対応を決めて、その決められた人を常に見ている、というもの)だと、富山が2v1の関係性を作るだけで簡単に無力化されていました。まずこの点が、柴田監督のいうところの相手コートでプレーすることができなかった理由の一つでした。

    • 一方で富山はシャドー(吉平)まではボールが入るのですが、そこからコンサの5バックを崩すフェーズにおいて、個人のドリブル突破なのか、裏抜けとスルーパスなのか、ボールを持っている選手から始まるワンツーなのか、ワイドからのクロスボールなのか、サイドチェンジして横幅を使うのか…どうも有効打を持っていない印象で、最終的にはワイドからとりあえずクロスボールを放り込むかミドルシュートで終わることが少なくなかったですが、前線も小川・吉平・佐々木(それぞれ166、172、173cm)でパワー不足感は否めませんでしたし、ミドルシュートも亀田の1本以外はほぼ全て枠外。最後のところのクオリティは大いに課題だったと思います。
    • DAZN中継の最後に、枠内シュート本数とその位置がプロットされたグラフィックで示されますが(著作権の問題があるので転載は控えますが)富山の枠内シュート7本のうち6本は左のハーフスペース付近…吉平(と、途中交代の亀田)のポジション付近で生じている。この付近までは到達するんだけど、シュートの際に最後にコンサのDFを動かせなかったのが富山でした。
    • コンサは浦上中心にディレイまたはリトリート気味で守ることが多く、ゴール前でもう少しボールにアタックした方が良いと思う時もありますが、富山相手にはスペースを消す対応は効いていました(もっとミドルシュートの精度があるチーム相手だと…)。

    • 対するコンサがボールを持っている局面では、コンサは富山のように相手のプレッシングを剥がすことがイージーにできていたかというと微妙でしたが、本文中にも書いたように富山はDFが前で守れないという致命的なウィークポイントがあり、ピッチ中央に簡単にスペースが生じる構造でした。
    • 1点目はそのスペースから始まるプレーでしたし、全体的にコンサが縦もしくは背後を突くところから富山のDFをさらに押し下げて…といった展開になっていたのは、個人的には意図していたなら悪いプレーではなかったと思います。
    • そしてコンサの枠内シュート4本のうち高嶺が3本(残り1本はおそらくバカヨコのボレーシュート)。この点に関しては高嶺の、コンサの他の選手よりも2段階くらい上に思えるスーパーな能力が決定的だったのは否定のしようがありません。

    • こんな感じの試合内容でしたが、監督が首を垂れるというか一定の危機感を抱かれているようなので今後何らか変わっていくことに期待でしょうか。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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