2022年6月19日日曜日

2022年6月18日(土)明治安田生命J1リーグ第18節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌 〜覚悟なきものに哲学なし〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果

  • 川崎は、直近リーグ戦では鳥栖、湘南、京都相手に3試合連続で無得点の1分2敗。一方、ルヴァンカップにはまだ登場しないこともあって、この中断期間(代表ウィーク)の公式戦は6/1の天皇杯が最後。札幌大学相手に主力を休ませた上で順当に勝ち上がっており、調整する時間は十分に確保できたことでしょう。
  • メンバーは、シーズン序盤の負傷で休んでいた大島が復帰してHolding MF(アンカー)に。開幕時はこの構想があったけど頓挫しかけていたものでもあるし、札幌相手ならここにサイズのあるシミッチのようなタイプでなくても良い、との考えもあったでしょう。
  • その大島不在時に中盤センターで存在感を発揮していた橘田が左SBに。ここが一番のサプライズで、更にその前にはチャナティップが3トップの左。左サイドには、本来中央の選手を2人並べてマルシーニョはベンチスタート。

  • 札幌は、中断期間にルヴァンカップと天皇杯があり、リーグ戦再開まで殆どオフらしいオフはなかったと思います。誰がどう見てもカウンターしか狙ってない広島にボコボコにされたり、桐蔭横浜大学に負け寸前まで追い詰められたりとスペクタクルな3週間でしたが、田中駿汰と興梠の復帰は明るい材料だと言えます。
  • 想定外だったのは、岡村とDF中央、宮澤を一つ前にスライドさせたこと。以前書きましたが、岡村と宮澤はいずれも中央しかできないので、併用が難しいのですが▼
  • 昨年4/24の仙台戦以来となる禁じ手…宮澤の中盤起用で解決されます。高嶺の不在と、駒井の前線起用で中央も手薄になっているので、そこまでセンセーショナルな話でもないのですが。

撤退は死なり:

  • この対戦カードになると毎回同じことを言ってますが改めて。

  • 川崎が2010年代後半〜のリーグで覇権を握った理由の一つは、引いた相手をなんらか崩すだけのクオリティがあるからです。
  • たまに言われるのが、「ボール保持率は高くても6割くらいがベスト」。サッカーはスペースを使う、相手のスペースを突いて攻撃するゲームなので、例えばボール保持率が7割とかになると相手はずっと自陣ゴール前で守っている試合展開になってスペースがない状態で攻めあぐなることも少なくない。
  • ただこれは川崎には当てはまらなくて、相手が引いて狭小なスペースしかなくてもそこで前を向いてプレーしてシュートまで持ち込むことができる。

  • ですので川崎相手に引いて守る、からの自陣から長い距離を走ってカウンター、だと、これらの要素にかなり自信のあるチームじゃないとジリ貧になることが多い。引いて守っている間に持ち堪えられなくてゲームプランが成り立たなくなるためです。またこの試合は欠場ですが、たいしたことないカウンターアタックだと、ジェジエウのようなpush upして守れるDFの存在によって打ち消されます。
  • 札幌はルヴァンカップ決勝で善戦したように思われがちですが、得点は全部セットプレー(菅の先制ゴールもゴールキックでセットされていたシチュエーションから)で、流れの中では、引くことを選択したので完全にジリ貧な試合展開でした。

  • というわけで、改めて確認ですが、川崎相手に引いてもどうにもならないので、札幌としてはとにかく下がらず川崎陣内でどれだけプレーできるか、がゲームプランとして重要になる。
  • このロジックを後押しする要因は他にもあります。一つは、守備の原則が「常に人を捕まえて1対1で対処する」なので、引いてスペースを守る(≒パスコースを消す)考え方とはあまり相性が良くない。コンサがそれをやると、人をマークするんだか、マークしないでスペースを守るんだか、で混乱するでしょう。
  • もう一つは、足の速いFWがいるなら、自陣に引いて守って、ボールを回収したら爆走カウンターで攻撃できますが、▼

  • 今のコンサには小柏以外に足の速いFWがいないので、自陣に引いて守るとすると、あまり走力がない(何度もアップダウンできない。興梠は若い頃は非常に速かった)興梠や青木が自陣から70m走って、その間にミスをせず川崎のDFをかわすところまで行かないとシュートに持ち込めない。これぞmission impossibleですね。

  • 今やチーム人件費で浦和と名古屋を上回る(”外れ値”の神戸に次ぐ2位の)川崎相手に勝てよ!とは個人的には思っておらず、こうした、勝つためにロジカルなゲームをどこまでできるか?をKPIとして私は見ていました。

2.試合展開

川崎の札幌対策:

-前に出ていく攻撃の迫力、それに遅攻でも速攻でも迫力を出せたが?
前に人数をかけていきたいとずっと話していた。単純にマイボールの時間を増やして、攻撃回数を増やしたかった。多少、後ろに重たくなった前半だったが、それでもボールを持ちながら進んでいけた。先制されたことで大変になったが、そのプレーを続けていたことが良かったと思う。人を追い越す動きなどが徐々に出てきたので、継続してやっていきたい。この2週間、やってきた形の守備もできていた。それを評価したい。
  • 攻守両面でプランを用意してきたようですが、まず攻撃の方から見ていきます。

「攻撃回数を増やす」ということ:

  • 先に解を示すと、サッカーは表裏一体ですので、相手の攻撃機会なり時間なりをいかに奪うかが重要になります。
  • 左右のウイング、チャナティップと家長は、いずれも本来は中央付近でのプレーが得意な選手ですが、川崎がボールを持っているときは必ずタッチライン付近からスタート。かつてタイのメディアに、「四方田監督のころは”左ウイング”でのプレーを強いられてやりづらかった」と語っていたチャナですが、私が見ていた限りでは、この試合の開始15分間はタッチライン付近を一度も離れていない。

  • 鬼木監督による選手の強みを殺す采配に見えますが、これによって、札幌は金子と菅が、最終ラインの田中と福森の外側に一旦戻ってから守備の態勢を整える必要が生じます。
  • 例えば、川崎のゴールキックの時に、チョンソンリョンが家長のところに長いフィードを蹴っ飛ばすとする。福森が家長に出ていくと、福森と、中央のDF岡村の間に広大なスペースが生じるので、例えばそこで家長がワンタッチでスペースにパスをして、山根か脇坂が出てこればそれだけで決定機になる。
  • だから、タッチライン付近まで目一杯開く(≒ピッチの横幅を使って攻撃する)と、守備側は絶対に3人では守れない。4人か5人が必要になる。絶対というか、「3人」の内訳がカンナバーロ、ネスタ、マルディーニとかキミッヒ、ボアテング、アラバ、ウォーカー、ストーンズ、ラポルトならできるかもしれませんが、福…いや、この辺でやめときましょうか。

タッチライン付近からスタートすることで結果的に札幌の攻撃機会を削ぐ

  • ▲に図示しましたが、金子と菅が高い位置をとりづらくなると、川崎のSB、橘田と山根にはプレッシャーがかかりづらくなります。
  • ここで、かつてのチャナティップ・駒井・荒野の3トップなら、1人で2人、場合によっては3人を見るような守備ができるので、谷口と山根を、車屋と橘田を見るような守備もできるけど、青木と興梠にはそれは求められない。
  • そして興梠はたいへん賢い選手ですので、自分がCBにアタックしても味方が連動してpressingの形にならないとわかればそこは無駄な動きをしない。下がってスペースを消す対応に切り替えますが、そうなると谷口や車屋はno pressureでボールを運べるようになる。そして川崎は札幌陣内に容易に侵入し、札幌は全員が自陣で守っている状態に、前半の早い時間帯から陥っていました。

前半序盤でゲームプランが崩壊していた札幌:

  • 冒頭に書きましたが、札幌にとって撤退は死を意味します。▲で図示した通り、興梠と青木は進むべき方向に背を向けて守備に加わり、川崎ゴールから60-70m離れた位置にいる(実際はもっと下がることも少なくなかった)。フィジカルモンスターではないこの2人(+駒井)が、川崎のDF数人を打破しつつシュートに持ち込む姿を、私たちの誇る200勝監督は描いていたのでしょうか。
  • そして、金子はこの2人よりも更に川崎ゴールから遠い位置をスタート地点としてカウンターアタックに加わります。金子はちょっと分かりづらいかもですが、興梠や青木がいかに低い位置でのボールタッチを強いられたかは、▼でなんとなくわかるでしょうか。青木はボックス内でのタッチ1(ゴールのみ)、興梠も3くらいで、シュートはおそらくゼロですね。

  • そして、これも極論、「選手やチームによる」ところはあるのですが、自陣ゴール付近でのプレーはミスが許されないので選手はナーバスになります
  • エデルソンとかビクトルバルデスなんかは平然とボールを扱ったりする(バルデスは若い頃はメンタルに課題があって物理的に現実逃避とかしてた)のですが、札幌の選手は自陣ゴール付近で長い時間プレーを強いられ、かつ川崎の選手と対峙した状態だと常に強いプレッシャーがかかった状態になっていたと推測します。
  • スコアを1−1とした家長の同点ゴールは、宮澤のミス▼なんですが、我らがキャプテンは「大事にプレーしたい」ということでクリアではなく(気持ちもプレーベクトルも)後ろ方向にパスを選択したのでしょう。
  • これに関しては、立ち上がりから文字通り圧力をかけ続けた川崎にとって妥当な結果というか、決壊するのは時間の問題だったな、と感じます。

  • この時点で、すでに札幌は本来志向するはずの試合展開から大きく乖離していて、スコアこそ青木のゴールでリードしていたけど、「勝てる試合」にはなっていなかった。3年前のルヴァンカップと全く一緒です。

2手でマンマーク崩壊:

  • 川崎の選手はいわゆる「流動的に動く」ように見えますが、パターンは大体決まっていて、本当の意味で「決まっていない、ランダムな」動きはほとんどしない。
  • 典型的なものを挙げると、
  1. SB山根は中央付近に絞るところからスタート
  2. WG家長が引いて、スペースにSB山根やIH脇坂が飛び出す
  3. IH遠野は高い位置で待つ
  4. 札幌のPressingが比較的、うまくいってそうだと、IH脇坂は引く
  5. FW知念は背後にスペースがないなら引く
  • これらは全て川崎の選手が好き勝手、動きたいからやっている、というより、マンマークでついてくる札幌の選手をオリジナルポジションから動かすことのメリットの方が大きいから。
  • 例えば、岡村はゴール前での強さを買われてCB中央で起用されていますので、岡村をゴール前から遠ざけたい。一方で、荒野は運動量があるが、DFとしてゴール前で守れない(ファウルが多い)ので、中央からどかした方がいい。
  • 左サイドでは福森は機動性がなく、広いスペースを守れない。菅はカウンターアタックのキャストでもあるので、押し込んで後ろに下がらせると良い…
  • という具合に、川崎の選手に札幌の選手がまず、ついてくる習性を逆手に取る格好で、ある程度、規則性を持ったポジションチェンジをしながらボールを動かします。

  • 象徴的なシーンなんですが、札幌は岡村や田中駿汰がGKまでPressingに走ることが前半1度あって、それはどこかでマークがずらされた状態から始まって、かつPressingをする範囲というかどこまで対応するのかも決まっていないから。直接的にそこからゴールが生じたりはしていないのですが、主体性を持ってプレーしているというよりは、相手に完全に操られた状態でありました。
川崎が2人動いただけで守備が整わなくなる札幌

あんたが大将:

  • ここまで書いて、疑問に思う方が1人か2人くらいいるでしょうか、「それでもチャナティップを左で使う理由はあったのか」。または「左ならマルシーニョがスタメンでいいじゃないか」。
  • これは、おそらくゲームプラン的に、川崎は札幌のパフォーマンスが落ちる後半に仕掛けることを考えていて、前半はむしろスロースタートで行きたかったので、あえて中央に人やボールが入らないようにしていたのでしょう。
  • 結果的に、「あんたが大賞」を受賞したのは2ゴールの小林でしたが、川崎のゲームプラン的にはマルシーニョがメインキャストで、札幌のディフェンスが崩壊したところでマルシーニョのスピードで勝負されると札幌はどうしようもないので、スタートからは使わず温存していたのだと思います。

大島の周囲のスペース:

  • 札幌の1点目、青木のゴールに繋がる話をします。あのゴールは”まぐれ”だったのかというと、そうではなくて、セットした状態での川崎の対応のまずさが前半はしばしあったと感じています。鬼木監督は「狙い通りの守備」と言っていましたが、前半は少なくとも、それがうまくいっていた感じはしませんでした(他の局面の話を指しているのでしょうか)。

  • 川崎はセットした状態では1-4-3-3が基本で、ただチャナティップと家長は、チャナは田中駿汰に出たり、岡村に出たりで、たまに前方向の意識を見せますが、家長はほぼ福森を警戒するポジショニング。知念もそこまで大きいタスクを持っていない。
  • 札幌は、岡村はまだ実戦でボールを運ぶ役割を担うのは大変そうで、宮澤は左足にボールを置けない。だからこの2人にプレッシャーをかけると何かが起こりそうで怖いのですが、川崎はそうした選択を殆ど取らなくて、宮澤が右足を使うなどしてボールを持ち出すことはできていたと思います。
  • 川崎の1列目に強度がないので、札幌はそこを越えるのは容易。「たまに」、荒野や宮澤が列を越えると、脇坂と遠野が動いて対応するのですが、この2人も札幌の前進を予測していた感じはしなくて、対応は緩め。
大島の周囲のスペース管理
  • 見た感じでは、川崎は1列目も2列目も仕事量が少なくて、1-4-3-3で広く守る必要条件を満たしていないように見えました。例えば知念がプレスバックして中央のスペースを消すとかできるといいのですが、それもなかった。
  • 結果的に、大島が露出されると、大島の背後にも前方にもスペースがある状態になっていて、こうなると1人ではどうしようもない。あとは札幌の前3人がスペースに出てきて、ウイングバックにボールを届ける得意のパターンが発動します。
  • 青木のゴールも、札幌が大島の周囲のスペースを使って難なく前進したところからでした。川崎はボールの奪いどころがいまいち不明瞭で、おそらく外を切って中央で奪うイメージだったのでしょうけど、だとしたらもう少しスペースを狭めたり、宮澤の右足を知念が切るとか、があってもよかったでしょうか。

川崎のシステム変更による影響:

  • 42分の家長の得点直後のプレーで、チャナティップが中央、遠野が左サイドに出る形になっていて、以降もそれまでずっと左にいたチャナティップが中央に顔出したり、札幌のGK小次郎から始まるプレーでは右に知念、左にチャナティップの形になっていて、おそらくはスコアが1−1となったところで川崎は1-4-4-2ないし1-4-2-3-1に変更したのだと思います。
  • 遠野が左とか、チャナティップが中央とか、ボールがいい形で入ると札幌に脅威を与えやすい配置にシフトしますが、まず影響があったのはディフェンスで、札幌の岡村と宮澤に同数かつ高い位置からアプローチできる形になる(チャナティップ・知念と2on2)。この変化にGK小次郎は察知できておらず、続くリスタートを2回連続で川崎ボールにしています。

  • そしてハーフタイムを挟んで後半。遠野の2本の枠内シュートでオープニングでしたが、観察していると、札幌は荒野がチャナティップ、宮澤が脇坂をマークしている。大半の人はこれで違和感ないと思うんですが、重要なのは、宮澤はボール保持時に岡村と福森の間に下がってCBとしてプレーする役割がある。
  • だから、1列下がった脇坂(大島とWボランチ)に対応すべく宮澤が高い位置まで出張すると、GK小次郎がボールを持った時にCBとして後ろでプレーするタスクとの両立が難しくなる
  • 荒野が宮澤の代わりに下がるとか気を利かせる、臨機応変さがあるといいのですが、荒野はそうしたタクティカルな判断ができるかというと不安定で、そうなると小次郎からボールを受けてサポートする役割がいなくなる。小次郎は札幌史上、最もボールを持てるGKなので、ここでGKはパスを繋いでビルドアップしたいけど、DFやMFはその次元に追いついていないというアンバランスな状況になります。そして前の枚数を増やした川崎がPressingを仕掛けると、小次郎は蹴るだけになって、川崎ボールになります。

互いのジョーカー:

  • 札幌のアンバランスな状況を解消することになったのが、54分頃の知念の負傷。時間を使って、公式記録では58分に小林と交代しますが、このタイミングで札幌は興梠⇨ドドちゃん、宮澤⇨深井のカードを切ります。
  • 深井はチャナティップのマークと、左CBとしてのボール運びを1人で両立できる(能力が、というか、選手特性的に深井はアンカーだと皆が認識しているから、荒野との前後関係がピッチ上で整理しやすい)ので、先のアンバランスな状況は一旦解消されます。
  • 川崎は、ダミアンよりも先に、ここまでリーグ戦で不発の小林。知念は岡村の視界の中で、岡村に背中を向けてプレーしますが、小林は岡村の背後をアタックするポジショニングでスタートし、クロスボールが岡村の頭を越えれば…という構図が生じます。

撤退は死なり(2回目):

  • 互いに流れの中では決定機に至らない膠着状態から、66分に右CKに荒野。

  • 荒野のヘッドってこれまでありましたっけ?財前監督期に前線起用されていた時にあったような、ないような、ですが、そんな荒野でも枠に飛ばせるかつDFの頭を高速で越える福森のスーパーアシストからでした。
  • この試合、岡村がファーで常に谷口とやり合っていて、最後には岡村がマークを剥がすことが多くて割と”雰囲気”を感じたのですが、荒野は全然駆け引きしなくても、福森のアシストが完璧すぎました。

  • が、リードは本当に一瞬で、リスタートから2分ほど、69分に小林が見事なバイシクルキックでスコアは2−2。
  • ゴール自体は小林の瞬時の対応がスーパーというか、ロジカルに説明が難しい偶発的なゴールだと思います。これは出来過ぎなんですが、「川崎相手に引いても守れないよ」という私の忠告通りではありますね…
  • ちなみに私が2018年夏に骨折してブログの更新がストップした時は、あんな感じのシュートを撃ったら着地の際に腕から落ちたのが原因です。真似する人は小林の受け身の取り方を何度も見ておくといいでしょう。

  • ただ、それまでの展開に目を向けると、川崎が左→右へと短いパスでサイドを変えた時に、この展開がそこまでクイックではないんですが、札幌は殆どボールにアタックに行けなくで、ボールを奪えそうなポイントがない。ついていくだけの対応になっていました。この直前のプレーでは、中央で荒野がチャナティップを倒して警告を受けたりはあったのですが、サイドに振られたところでは人が誰かついていくので精一杯。
  • あとは、横パスのタイミングで最終ラインを押し上げるとかも有効なんですが、これは試合を通じてできていないし、この試合以外でもそうした意識は薄い。どうしても、マンマークというかマークをはっきりさせることが優先なので、ラインを上げるセオリーのシチュエーションでも相手選手を捕まえる動きをしてしまうので、ズルズルと下がりがちなのは指摘できるでしょうか。

覚悟なきものに哲学なし:

  • 雨の中、70分を経過して段々とフットボールがロジックとタクティクスから、パッションとフィットネスの戦いに変化していきます。
  • 川崎は74分にチャナティップ⇨ゲームプラン通りにマルシーニョ(スコアは予想外かもしれませんが)。札幌は駒井⇨西。
  • 札幌は、一応ベンチに檀崎、田中宏武、中村がいるんですが、要は川崎の選手と一対一でストップできる水準にないからこれらの選手は負傷者が出ない限りは使いにくい、ということなんでしょう。金子が右サイドを駆け上がって毎回切り返しているのを見ると、右に宏武なんかはアリなんじゃないかと思いますし、ディフェンスが問題ならみんなでカバーするやり方でいいじゃん、と思いますが。

  • 一応深井、ドドちゃん、西と交代枠を3つ使っているものの、札幌はもう75分を過ぎるとヘロヘロになっていて、川崎はラスト30m付近まではボールを運べるようになっている。駒井だけじゃなくて本当は青木も交代させたいのでしょうけど、それは叶わずと言ったところ。
  • 川崎は82分に遠野⇨ダミアン、脇坂⇨シミッチ。余談ですがHTの練習でポストシュートをやっていましたが、ダミアン、マルシーニョ、小林、シミッチの中で一番成功率が高かったのはシミッチ。7/8位決めていてしかも全てペナルティエリアの外から、ゴールの隅に流し込んでいました。

  • 川崎が完全に2トップになっても、札幌はDFの枚数を合わせないで普通の3バックみたいな感じになってましたね。83分のCKの際にミシャが荒野を呼んでいたのはその辺の話もあったのでしょうか。ピッチ上からは読み取れませんでした。

  • そして86分に問題のシーン。

  • これは直接的には小次郎のミスですね。最後、岡村が準備ができていないところにボールを預けたのが直接の原因ですので。
  • ただ、そもそも岡村も深井も準備ができていない(≒ボールを運ぼうとしていない)のは問題で、ペナルティエリア内でGKから見て左右に立ってるんですが、この2人のポジショニングがそもそも相手のFWと近すぎて、出し手からするとボールを受けたいのか、そうじゃないのかわからないんですよね。
ボールを受けて何かをする気があったのか?

  • 岡村からすると、「マルシーニョがプレスかけてくるの見え見えなんだから俺に出すなよ」って感じなんでしょう(終了後に小次郎と話してました)けど、GKからすると、じゃあそこにいるなよ(前に行けよ)って感じでしょうか。
  • ヨーロッパのチームだと、相手がどれだけ前からくる場合でも、リスタートの際はペナルティエリア内に入れないので、そこの時点でボールを繋げるかどうかは明確に判断基準を持っていますし、繋ぐならゴールラインギリギリまでDFは下がってプレーするのは普通のことなんですよね。▼
  • ですので、私の感想としては、コンサはこの試合を左右する重要な局面で選手がどうプレーしていいかわからない(ボールを持つのか、捨てるのか、判断基準もないしリスクを負う覚悟も信念も哲学もない)という状況なんだな、というものです。

  • ライオンハートことジェイボスロイド様がTwitterでキレのある言論を炸裂させていましたが、ジェイの言うとおりミシャは基本的にボールを保持する練習(という名のミニゲームとロンド)しかやってないみたいなので、となると小次郎の選択は間違ってない。
  • ただ、フワッとした概念やイメージだけなんとなくあるけど、じゃあボールを持ってから相手をかわしてどうプレーしたらいいの?って部分は、この場面に表れているように、特に何も指導してないのではないかと予想します。コンサの選手は下手なんじゃなくて、技術がないんじゃなくて、プレービジョンや哲学がないんですよね。

雑感

  • 点の取り合いというか、お互いにどうぞどうぞなゲームでした。
  • 試合前にポイントとして挙げていた「プレス強度」ですが、川崎の大島いわく「嫌なチーム」であり「やりづらいスタイル」。ただ、やりづらいけど脅威まではないのでは?という感想を抱きました。得点は確かに「お金がないから」で片付けられる部分はあるとしても、presssingはお金がなくても整理できると思うのですが。あと10年くらい経てば良くなるでしょうか。みなさん長生きしましょう。それではみなさん、また逢う日までごきげんよう。

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