2021年12月6日月曜日

北海道コンサドーレ札幌の2021シーズン(1) ~選手個別雑感・GK&DF編~

※このシーズンはチームのプレー内容に対する総括が難しいので、選手への感想から書くことにします。


GK

1 菅野 孝憲:36試合(内スタメン36)、3,240分出場、46失点

  • 個人的にチームMVPを選ぶなら菅野です(次点が田中駿汰、3位が宮澤)。このシーズン、14勝のうち1点差勝利が8勝で、セーブ数とかのデータが乏しいので印象論になってしまいますが、菅野は平均して毎試合2本くらいは枠内シュートを防いでいるとしたら、順位や結果に最もポジティブな影響を及ぼしていると言えると思います。
  • プレーを見ると相変わらず、このサイズの選手としては抜群に完成度が高くて、特に放り込まれても殆ど弱点を露呈しないのは頼もしいです。
  • また、コンサドーレのここ2シーズンで最もスキルアップした選手かもしれません。バックパスの処理を毎試合完璧とは言えないとしても、入団直後と比べると処理の安定性は見違えるほど向上していて、以前はただ蹴っていたシチュエーションでも役割を遂行することができています。
  • クラブとしては小次郎の台頭に期待したいのでしょうけど、恐らくあと3年程度はかかると考えると、まだまだトップフォームを維持してほしいですし、自陣で形らしい形がない守備対応をしていて、依然として緊縮財政下であることを考えると、2022シーズンも菅野の存在が生命線なのかと思います。


34 中野 小次郎:2試合(内スタメン2)、180分出場、4失点

  • アウェイの浦和戦(5節)で、菅野に特にトラブルがないのに起用されたのは莫大な期待の表れで、この試合では持ち味のフィード能力を披露しながらクリーンシートを飾りましたが、翌節は神戸相手に4失点で「育成投資としても危ない」とする認識になったのか、また負傷の影響もあって以降は出番に恵まれませんでした。
  • 菅野をJ1水準の比較対象とすると、まだシュートストップが不安定で、それは中~遠距離の反応もそうですし、至近距離で誘導しながらコースを消す対応にも課題は感じます。入団前の紹介だと、「高3~大学で急激に動けるようになってきて…」とありましたが、見ている限りはまだこうした身体動作も向上の余地がありそうで、25~6歳くらいまでは長い目で見守るべき大器なのかなと思います。


DF

2 田中 駿汰:37試合(内スタメン37)、3,285分出場、1得点1アシスト

  • 「安定」や「秩序」という言葉とは無縁のフットボールをピッチ上で展開するチームにおいて、フィールドプレイヤーでは最もそれらをもたらしていた選手でした。
  • 特に2021シーズンは対戦相手のシステムが1-4-2-3-1ないし1-4-4-2系が大半のため、右サイドバックっぽい仕事や役割がメインだったと思いますが、アウェイ川崎戦(14節)で三笘を封殺したように、役割がセンターバックから変わっても寧ろ強みを発揮していたと感じます。
  • 選手特性としては、顔は小籔千豊さん味がありますが、駿汰は手足が長くリーチがあるので、相手と対峙した際に無理に足を出してボールを取りに行く(バランスを崩す)必要がないのが特徴かと感じます。役割は違いますがパトリック・ヴィエラを少し想起させます。
  • ボール保持時は、こちらも相手が1-4-2-3-1ないし1-4-4-2だとSBになりますが、2021シーズンはSBというよりはフリーマン的に中央に出ていって、セカンドボールを拾ってシュートしたりと攻撃性能を発揮していました。この点ではミシャの言う「なるべく高い位置をとって対面の選手を押し込め」に忠実で、今のチームでそこそこ楽しんでやれてはいそうですが、恐らく引く手あまただけにオフの動向は注目されます。


3 柳 貴博 :25試合(内スタメン1)、335分出場、0得点0アシスト

  • まず本人はすぐに試合に出たいと思っていたでしょうが、年齢や選手構成も考慮すると、クラブとしては短期的だけでなく中期的な視点もあっての獲得だったと思います。結果としては、短期的には強みも一定は出せていたものの、スタメンで使うにはまだ課題があって、特にチームのスタイルというより可能性のある役割(最終ライン)への適応に苦労したシーズンだったでしょうか。
  • 田中駿汰の項目で書きましたが、最終ラインの左右の選手はサイドバック的な役割が強まりつつある中で、”SB歴”が割と長めの柳には一定の期待があったと思います。
  • 宮澤の不在もあり、リーグ戦で唯一のスタメンとなった名古屋戦(第26節)も、対峙する名古屋のサイドアタッカー(マテウス)への対応を期待されてのもので、実際に、ピッチに立っていた前半の45分間はまずまずのパフォーマンスだったと記憶しています。
  • ただ、この試合後半から駿汰を右、高嶺を中央に移す形が一時期定着したように、駿汰が務めることが多くなった右DFは「最初に敵陣にボールを届ける人」の側面が強くなっていて、どっちかとうと大外の滑走路をアップダウンするタイプの柳はこの役割を最後まで消化できず、コンサドーレの最終ラインだと使い方が難しくなってしまいました。
  • それでもこのチームにはon the ballで特徴を発揮する選手は飽和気味で、監督もそうした選手を好みますが、ボールは常に1つしかないので柳のようなoff the ballでも活きる選手は不可欠でしょう。
  • そのフリーランとサイドを封鎖する能力はWB起用の貴重なオプションとなり得ましたし、また一定のサイズがあり空中戦で頭数に含められる、そして3バックでの起用も可能である点は、シーズンを追うごとに徐々に重要性を増していきました。(正直ここ4シーズンを見てこの点の監督の手腕にはあまり期待していないのですが)こうしたタイプの選手を今後カスタマイズして、期待している役割を遂行できるようにしていけるかは、選手を自由に買えないチームとしては極めて重要な視点かと思います。


5 福森 晃斗:32試合(内スタメン32)、2,798分出場、1得点5アシスト

  • ポジティブな面を挙げると、前方向に突っ込んで守備をしたいとするチームポリシーによって菅の庇護も弱まり、また俊足のDFキム ミンテもいなくなった中で、相手のウイングに対して福森はどこまで守れるか?という点は大きな懸念でしたが、結果的には思ったほどSBとしてweaknessが問題になることはなかったと思います。これは福森がどうというか、Jリーグにはそもそもウイングとしてプレーできるタイプの選手が非常に少なくて、だいたいの選手は中央に入った時に特徴を出せるタイプだから、と言えるでしょうか。
  • 攻撃面に関しては相変わらず、チームで一番信頼されている選手で、出し手として(無論トライの数相応のエラーもあるとして)びっくりするパス(いや、福森だとそうは驚かないか)で決定機を演出したりもありましたが、チームにとって大きいのはGKや中央のDFからのボールの逃がしどころとして非常に頼りになる点でしょうか。田中駿汰にも言えますが、多少難しいボールでも体で収めてくれるので、中央で相手の圧力を受けてもとりあえず福森に預けておけばそうそう事故にはならないのは、柳や岡村、一時代役を務めた高嶺、そして中村にはないスキルで、これらの選手が出場機会を増やすにはそこがポイントになるかなと思います。
  • 気がかりなのは、これはまず福森個人の問題ではないのですが、中盤で触って展開できるチャナティップが不在だと最終ラインから前線にダイレクトに蹴っ飛ばす雑なアタックが増えるな、という点は、チャナティップ不在期間が長いシーズンにおいては特に感じるところでした。もう一つは、恐らく慢性的に足の状態が悪そうで、プレースキックを田中駿汰や菅に任せたり、全般にピッチ上を動いている時にあまり足に負荷をかけないような動きが増えている(ように見える)点です。


10 宮澤 裕樹:29試合(内スタメン28)、2,423分出場、0得点0アシスト

  • アンカーでスタートしましたが、ミンテの不調によって最終ラインにスライド。その後はミンテの事情だけでなく本人のパフォーマンスによって最終ライン中央として不可欠な存在でした。「宮澤はCBじゃないでしょ」と言い続けた私ですが、30歳を過ぎても衰えない能力と向上心によって、今やチームで一番DFらしい選手になっていると思います。
  • 役割的にはまず相手の1トップをマークすることが大きくて、ここ物理的にめちゃくちゃ速い選手がいると厳しい時もあるのですが、宮澤のすごいところはパワーで劣勢でも簡単にやられずに粘り強く対処できる(荒野だと相手にチョップして退場でしょう)点で、対人能力は年々進歩していると感じます。
  • そして最終ラインからの配球については、アンカーでもCBと同等の要求水準ではありますが、最大の違いはアンカーに高嶺が入ると宮澤は右に回れる点で、ミンテと組んでいた時は左で窮屈そうにしていたのが解消されたことで本人の負担も減りました。カップ戦で最終ラインに宮澤も田中もいないと、誰も相手を引き付けてからパスしてくれないので、中盤から前は狭いスペースで走って蹴るだけのプレーに終始していましたが、今のところは、CBとして基本的なタスクを必ずやってくれるキャプテンの存在なしにはチームの未来が想像できないところです。


20 キム ミンテ:9試合(内スタメン7)、628分出場、0得点1アシスト

  • あくまでこのシーズンに関しては、結論としては、ミンテニスタの私も全面的に認めますが、宮澤との競争に敗れた格好となりました。
  • 2020シーズンにかなり序列が下がった印象でしたが、今シーズンは開幕からスタメン出場が続きました。それは相手に対して1on1で対処する方針が再確認されて、パワーとスピードのあるFWに対してはミンテが不可欠だと考えたからででしょう。
  • 開幕戦では横浜FCのクレーベに対して期待通りの強さを発揮するなど、ミンテにとってこのチームスタイルは追い風だなと思っていましたが、次第にチームのプレス強度が落ちていき、また各チームとも札幌にボールを持たせる選択を続けたことで、対人の強さよりもボールを運んで味方に届ける能力が重要になっていきます
  • そうなると、ずっとミシャが4年間気にしていて、試合中も大声でミンテの名前を読んでいる理由なのですが、ミンテは相手と対峙すると簡単にクリアでボールをリリースしてしまうので、味方(主に中盤の選手)に負荷がかかっていく。最終的には2度の退場(8節と15節)は、そのポテンシャルに期待して我慢し続けたミシャが考えを変えるには十分だったかと思います。
  • それも8節は数的優位下で相手の誘い出しに乗ってしまってDOGSOを取られて、15節はクローザーとして投入されたATにバックパス処理のミスから。それぞれずっと課題とされていたプレーでもあったので、残念ながら擁護は難しいものでした。


50 岡村 大八:21試合(内スタメン4)、458分出場、1得点0アシスト

  • ポジティブに言うと、勝っている試合のラスト10分でピッチに送り出すだけの能力は信頼されている(彼よりも若い選手にはその役割が与えられていないので、ここには明確な差がある)。一方でスタメンのDFとしては、サイズにせよDFとしての経験にせよ不足なのは承知で、終盤は高嶺や菅の後塵を拝していました。
  • ラスト10分跳ね返すだけならOKなのですが、イーブンのスコアからスタートして90分プレーすると考えると、大八にできることが現状少なすぎて、位置づけとしてはミンテに近いのです、味方のMFに負荷がかかることが、その守備能力のプラスを上回っているので起用には慎重にならざるをえないのは理解できます。
  • 一度書きましたが、ボールを保持している時の振る舞いは悪い意味で進藤化していて(とにかく高い位置を取れ、というのはミシャが言っているようですが)、受け手及び出し手としては全く機能しなくなるので、右DFで出ていると1人少ない状態でプレーしているぐらいの影響がある。ボールを預けられないとか運べないとか配球ができないとなると、モダンなフットボールでは、その選手のかなり可能性を狭めてしまうというか、非常にクラシカルな選手だなと感じました。
  • ただ24歳でJ3からプロデビューの大卒3年目、クラブの戦略としては、彼のような選手が主力になってくれることが前提でもあるので、何とか出場機会を確保してほしいところ。ただそのためには、繰り返しになりますがもっとモダンなDFにならないと難しいかなと思います。

1 件のコメント:

  1. たぶんですが、岡村については原因と結果が逆です。
    岡村の動きについては、もちろんチームの大枠はありますが彼が起用される時点で、最初に規定されているのはチーム戦術ではなく岡村の技量でしょう。
    岡村の良さと育成を含めて起用を前提としたときに、彼のできることが限られているためにそれでもチームとして最大活用しようとする選択として、岡村にはできるだけ高い位置を取らせていると思います。
    正直、岡村をめいっぱい高く上げてもチームにメリットはそうないです。

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