2021年10月17日日曜日

2021年10月16日(土)明治安田生命J1リーグ第32節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~あくまで”お祭り”なのだ~

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • マリノスは畠中が離脱中で、岩田が8試合連続のCB起用。かつてのオシム・ジェフにおける中島浩司氏(阿部勇樹とストヤノフのバックアッパー)みたいな?重要な位置づけになっているようです。前線はエウベル&前田の組み合わせが多かったのが、仲川を右に起用してきたのは、マッチアップする札幌の左DFを意識でしょうか。
  • 札幌は宮澤が左ふくらはぎ痛、岡村も恐らく中断期間中のエリートリーグ何らか受傷があったようでDF2人を欠きますが、福森とチャナティップの復帰は好材料。

マンマーク対策:

※以下、札幌の布陣はルーカス交代後とします。
  • 何度も似た話を書いているので細かい説明は省きますが、マリノスのマスカット監督が考えていたのは、札幌の同数守備に対してリスキーな3on3のマッチアップ…マリノスの快速FW陣と札幌のDFのところで、FWをスペースに走らせて速い攻撃を繰り出したかったのだと思います。結局のところ、同数で守る相手に対してこれが最もオーソドックスな攻略法というか攻略の考え方になるでしょう。
  • FWを走らせるには(正確には、走るFWを使った攻撃を繰り出すには)配給役とその仕組みが求められ、札幌のマンマークをかいくぐって誰かが前を向ける状況を作る必要があります。マリノスはこの点は、前半スタート時点ではレオ セアラのポストプレー等の展開を用意していたと思います。

  • 同数でマンマークで守る札幌は、マリノスのポジションチェンジにも基本的についてくる(移動しても、マークが外れるという重大な問題になりにくい)のですが、一部の選手/シチュエーションにおいては、人を守るだけではなくてスペースを守るタスクもあるので、この点ではポジションチェンジによって、スペースを放棄していいのか否か?という選択を札幌の選手に迫ることができます。
  • 同数守備に対してよくとられるのが、CBの間にMFが落ちてくるもの(サリーダラボルピアーナ、サリーダデバロン)。柴崎岳とか遠藤(ガチャピン)がよくやるやつで、彼らは自身がフリーになるためにこれをやりますが、マリノスの喜田や扇原が動いても、札幌の駒井や青木はそれについてくるのでフリーにならない。だから、マスカット監督は、彼らではなくてほかの選手を動かす方が効果的だと考えたのでしょう。ここでレオセアラと高嶺のマッチアップが注目されます。

  • 高嶺はレオをマークする役割ですが、CB中央の彼が”持ち場”を離れると、そのスペースに彫り込まれて、そしてマリノスの前線の選手が突っ込んできたらそれだけでやられます。ですので、マーク対象のレオが動いても、高嶺がそれに全部ついていくという単純な判断は、DFのセオリーとして採用しづらい。この点では攻撃側の方が優位だと言え、実際レオのポストプレーを高嶺は潰せていなかったと思います。
  • ここから、ボールを落として前を向く選手を確保からの、最終的には仲川と前田のスピードで強襲、というイメージがあったと思います。
マンマーク対策(レオセアラのポストプレー)
  • ある意味ゼロトップっぽい形でもあって、仲川と前田は2トップみたいな働きが多くなります。流れの中で仲川が左によく移動していたのはこのため(中央方向に入ってくる)です。
  • なお、だいたいレオセアラは左に降りてくるので、マリノスの組み立てはティーラトンのサイドからが多かったと思います(松原の視界には殆ど降りてこない)。

  • ただ、先に結論を書くと、「FWが長い距離を走って攻撃するサッカー」はどうしても大味な展開になり攻撃の精度を欠きます。パスの距離が長いとコントロールが難しいですし、前田大然であっても全力スプリントで体に負荷がかかった後はプレーの精度に影響を及ぼすためです。
  • そして札幌としては、本来MFの高嶺を筆頭に、引いて守れるような選手がそろっているわけではない。よって、マリノスが自陣から長いパスでFWを走らせるような攻撃に終始する展開は、そうなると後ろでブロックを作って守らなくていいので実は好都合でした(福森vs仲川のマッチアップなどはもちろん危険性はあるのですが)。それは最終的にマリノスの2ゴールが、札幌のDFが下がったシチュエーションから生まれていることからも示唆されると思います。

こっちもマンマークからの速い展開に:

  • この試合に限った話ではないですが、大胆な可変システム(攻守で人の配置が全然違う)の札幌は、ボール非保持→保持の”仕切り直し”においてゴールキックの局面を最大限に活用する傾向があります(いつぞやの記事で書きましたが、ゴールキックにかける時間は全チーム中トップ)。ですので札幌の意図したボール保持攻撃の形は、ゴールキックからのスタートが特に多くなります。
  • この時、札幌が時間をかける間にマリノスもある準備をしています。それは喜田をチャナティップにつけて、最終ラインのミスマッチを解消すること。チアゴが小柏、岩田が青木を見るような関係です。後は前線も枚数が合うので、マリノスもマンマークっぽい形からプレッシングをスタートして、できるなら高い位置でボールを回収からの攻撃に移行したかったのでしょう。
マリノスもマンマーク気味の仕組みで対抗
  • これに関連したポイントっぽい事象を挙げると、①札幌もマンマークっぽく守られるとやりづくらくて、菅野がシンプルに放り込む展開が増えるが、ターゲットがいないのもあってボールが前線で収まらない。一応、青木が溜めを作ろうとしたり、チャナティップもいますが、後者は徹底マークを受けている。
  • よって札幌の攻撃は、誰かがボールを拾って前を向いたらとにかく前に蹴る!という選択が大半で、ボールをキープして陣形を整えたり小休止したりといった要素は稀でした。攻撃機会自体も、ほとんどが速攻から上がれる選手が上がっていく、場合によってはこぼれ球から二次攻撃、みたいな展開が多かったと思います。
  • 上記の前提に加え、②小柏が常にチアゴマルチンスとのマッチアップになりやすい。マリノスは撤退すると4バックの1-4-4-2に切り替えると思うのですが、札幌の攻撃が速攻が多いので、明確にブロック守備に切り替えるというより、そのままマンマークで対抗するシチュエーションが多くなります。
  • 小柏は札幌で数少ない、”個”で勝負できるアタッカーなのですが、リーグ最強のDF相手だと分が悪くて、小柏を何度か札幌は走らせるものの悉く不発に終わり、この点では彼をうまく活かせていなかったし、割を食った格好で、その意味ではあまり効果的なアタックだったとは感じません。
  • 何度か書いていますが、いいチームとはゴールから逆算されているチームだと私は思っていて、その意味では小柏がフィニッシャーなら、彼がチアゴから解放される仕組みが何らかあるべきでした。まぁ、こういうカオスな展開でも決めろよ、ってのが、野々村社長なのかミシャなのかが提示する”個の力”なのかもしれませんが。

2.試合展開(前半)

怪我の功名(サッカー星人の活躍):

  • まず公式記録では7分、ルーカスが接触プレーで痛んで青木と交代。青木が金子の位置(守備時はインサイドハーフ、攻撃時はシャドー)で、金子が右に回ります。
  • ルーカスは単なるドリブラーというか、中の状態を見てからラストパスを配球する能力に優れているので、金子や菅といった他のサイドアタッカーよりも圧倒的にアシスト能力がある攻撃のキーマンで、戦力的には痛手なのですが、
  • この試合のように、相手がプレッシングの意識が強く、かつ前線にターゲットがいなくて時間を作れない展開だと、誰かボールを収めてくれる選手が欲しくなるんですよね。
  • それに対して、右にルーカスと金子、中央に小柏、そして中盤に駒井、最終ラインに高嶺だと、縦に突っ込む選手が過多すぎる感があって、ちょっとスピードダウンしようよ!落ち着こうよ!って場面でも縦に行ってしまう。ガンバ戦では相手の守備に問題がありすぎて、ひたすら突っ込む攻撃で5点取りましたが、本来サッカーではこの判断を使い分けるべきです。
  • その点では、青木は縦だけじゃなくて横方向にも空いているスペースを探して、人なりボールを動かして、また彼自身が簡単にボールを失わないため、良い意味でチームをコントロールしようとしていたと思います。

急がば回れ:

  • 前半、縦に急ぎすぎなのは札幌だけでなく、マリノスも一緒で、獲得したボールは殆どが前田と仲川を走らせる攻撃に終始していました。
  • 確かにこの2人は速さという強みがありますが、ここも小休止がないとマルコスジュニオールなども2人に追いつけなくて、マリノスのアタックも札幌と同じく、もしくはそれ以上に散発的なものだったと思います。
  • これは、過去の対戦の例にもれず、というか札幌の視点だと毎試合そうなのですが、本来ボールを運ぶ役割があるDFなりMFの選手に対する、マンマークでのプレッシング自体は機能していたため。先述のレオセアラのポストプレーなどで、僅かな時間を創出したり、一瞬マークが外れてフリーになることはできても、札幌はすぐに誰かが捕まえにくるようになっていて、マリノスはフリーの選手を探すのに苦労します。
  • 本来プレスとか強度とは寄せる速さや当たるときの強さだけを指すのではなくて、体の向きなり追い込み方なりも関係するのですが、相手がこれだけ困る対応をしているのは多分札幌以外にないので、この話はそんなに間違ってないと思います。

  • 先述の通り、札幌は引いて守るのは難しそうなのですが、前半はセットプレー絡みの展開以外は、そうした場面は殆どゼロだったと思います(誰かカウントしてください)。ゼロだとすれば、マリノスが前進に苦労していたことの裏付けになるでしょうか。

オムカレー 正直もん:

  • ともかく24分に菅のゴールで先制します。

  • 確かこの後に飲水タイムがとられて、その前後くらいのタイミングからの変化として、マリノスはレオセアラを前に残す形が多くなる。それまではポストプレーで主に組み立ての部分で貢献していましたが、やはりゴールを奪うためには最後にゴール前に9番がいてほしい、ということで、変更の意図があったのでしょうか。
  • そうなると、それまではSB(ティーラトン)から、①トップのレオセアラ、②ウイングの前田、で少なくとも2つの展開ルートを確保していたのが、中央方向の展開がなくなって、ウイングを使った外→外の展開で前進するようになる。前田がサイドで受けることが何度か増えますが、前田は1on1で田中駿汰を突破できるタイプではないので、ここからチャンスになるかというと難しい状況でした。
  • 中央はマルコスジュニオールもいますが、彼はマンマークを受ける札幌戦だとここ最近あまり元気がなくて、この試合も60分過ぎで退いています。恐らくデスマルケ(マークを外す一瞬の動き出し)があまりうまくなくて、背負って受ける役割には向いていない。よって前半に関して言うと、レオセアラが降りてくる形の方が、マリノスとしてはまだ機能していた印象でした。

3.試合展開(後半)

實藤投入の狙い:

  • マリノスは前線にボールが入らないので、変えるなら中盤の構成かと思っていましたが、HTに扇原→實藤。岩田が1列上がります。
  • マスカット監督はこのようにコメントしていますが、
  • おそらくボールを握る前提だと、扇原はまだ残した方が良さそうだと私は思いましたし、ピッチ上の現象を見ていても、ボールをどうやって奪うか?のところにも問題意識があったのではないでしょうか。

  • 例の、札幌の最も再現性のある形、GKからの展開を例に確認します。マリノスの選手の役割は、岩田が扇原の役割をそのまま引き継ぐのではなくて、岩田は喜田の役割、そして喜田が扇原の役割になっていました。
  • 先述の通り、マリノスも札幌にマンマーク気味で対抗すると、最終ラインは5人で守れるからいいとして、中盤から前は1人1人の受け持つ範囲が広くなり、所謂”広く守る”が求められることになる。おそらくこのやり方なら、扇原よりも喜田の方が適任ということなのでしょう。
守備範囲の広い喜田を前に出す
  • 札幌は、相変わらず菅野の選択自体はシンプルに蹴るのもありましたが、青木が常にスペースを窺っていて、彼が落ちてくると、喜田は駒井だけではなく青木も見る必要がある(實藤が出て対応すると小柏に背後を取られる)。喜田なら広く守るタスクも任せられると考えてこの形にしたのでしょう。
  • そして札幌がシンプルに蹴ると、やはりトランジションが多くなって、その際も扇原よりは、プレースピードが上がっても対処できる岩田が中央にいた方がいい、とする判断だったのではないでしょうか。

「取れそうなパス」の撒き餌とその効力:

  • ただ、少なくとも65~70分くらいまでは札幌の足はまだ止まらず(この日に限らずシーズンを通じた傾向ですね)、その間は、マリノスはボール保持の仕組みが劇的に変わったというほどでもないので、ボールを運ぶところでは苦戦して、札幌の守備からカウンターを食らう場面も少なくなかったと思います。
  • この辺を少し細かく言うと、マリノスは、前半立ち上がりは先述の通り、レオセアラを動かすやり方を採用していたのが、徐々に、リスクもあるがリターンも期待できるやり方にシフトしていきます。
  • 具体的にはCBがより開いてプレーして、CBのところでボールを動かして札幌の1列目守備を引き付けてプレーしようとしていたと感じます。

  • 後半になって、マリノスはCB同士、またはCBとGKだったりと、「ゴールエリア付近での横パス」が増えたような印象を受けています。往年の曽田選手のボールの持ち方なんかを思い出すとリアリティ増すかもですが、ゴールを横切るパスはミスが即失点になるので、リスクを回避するなら避けたいですし、プレスを仕掛ける側としては狙いどころにしたいところです。
  • 一方で、逆説的に考えると、あえてこういうボールの動かし方をすると、相手がボールを奪いに出てくるので、背後にスペースができたり、相手の1stDFを引き付けて、それによって生じたスペースやフリーの選手を使って攻撃することができます
「奪える」と思わせると食いつく(が、駒井がカバー)
  • ナーゲルスマンはどっかで、ビルドアップの”コツ”として、「わざと緩いパスをしたりして、相手に”奪える!”とどこかで思わせることが必要」と言ってましたが、それに近い事象を生じさせている、とも言えるでしょうか。
  • そして札幌の前線…特に負傷明けのチャナティップの運動量が落ちてくると、チャナはGK高丘やチアゴを追うけどボールは回収できない、という状況になって、マリノスの蒔く”餌”は、▲の図でチアゴがフリーになるように徐々に効力が生じてきます。

  • ただ、1列目の守備が甘くなっても、札幌は誰かがフリーになるとすぐマークをスイッチして、この時は駒井だったりがボールホルダーに行く、駒井が空けた選手(岩田)は青木がスライド…という具合に対処できていて、1人バテたくらいではまだ持ちこたえられそうな感じでしたし、個人的には駒井にあまりポジティブなことを書かない時もあるのですが、こうした役回りでは非常に聞いていたと思います。

  • こんな感じの構図がまだ後半の15~20分くらいまではあって、マリノスは最終ラインでは徐々にオープンになっても、そこでできたスペースはハーフウェーライン付近にまで進出すると消失してしまう。そこで手詰まりになって、札幌のプレスからのカウンター、が何度かあり、バックスタンドの私の周囲で見ていたマリノスサポーターからもマスク越しにイライラが伝わる感じがしました。

重要なピースを失い、露見される不都合な事実:

  • 63分にマリノスがマルコスジュニオール→天野、レオセアラ→エウベル。あまり前線で決定機に絡むことがなかった2人を下げて、トップには左の前田をスライドさせます。
  • そして前田がトップに入って、ボールを保持しようとする札幌の後方の選手を、その持ち前の走力を活かして追いかけるようになると、見ていてちょっと嫌だな、という感じがする。
  • そして65分頃?に、マリノスの選手交代があってからそんなに時間がたたないくらいだと思いますが、突っ込んでくる前田を、荒野が自陣深くで切り返しで対処したり、またロスト後にスライディングタックルで切り抜けたりと頑張っていたのが仇になって、荒野が足を攣って札幌は交代を用意します。
  • 結果的には69分に荒野→柳、そしてチャナティップ→ドウグラスオリヴェイラの2枚替えをします。柳が右DF、田中駿汰がアンカーになるいつもの形です。前線は、ドドちゃんがトップで、小柏が右シャドー/インサイドハーフ、青木が左に回って左FW/シャドー。青木と小柏は逆でいいと思うのですが、ミシャはどうもこの形にこだわります(小柏の負担は確実にデカいはず)。

  • この時は、チャナは殆ど2トップのFWの役割で、そこそこボールを収めたりとチャナにしかできないタスクもあったのですが、まぁドドちゃんも一応FWだし、身体も強いしで何とかいけるかな、というバランスに見えました。
  • どっちかというと、サイズがあって競り合いに強い、走力(運動量もスピードも)ある、ボールも収まって運べる、荒野が抜けると、「トータルフットボール」じゃないですけど、選手が担えるタスクの総和は明らかに減少するな、という印象で、荒野と田中駿汰で、簡単に蹴っ飛ばすだけではなくボールを運ぼうとしていたのが、田中駿汰と柳に置き換わったことで、札幌がボールを持つ余地は確実に減ることになります。
  • そしてこの時間帯でボールを持てなくなると、相手選手を追いかけるだけの時間が増えて、さらに疲労感が増していくことになります。

祭りのあと:

  • だいたいもう試合的には書くことがないのですが、マリノスは74分に喜田→杉本で、ターゲットを2人に増やして勝負をかけます。そして右に仲川から、クロスのスペシャリストである水沼(これは定番の交代のようですね)。
  • マリノスはモンバエルツの頃から、サイドアタックからのクロスボールでのフィニッシュをかなり意識しているようで、この日の試合前の練習を見ていても、だいたいのチームの練習はゴール正面から1人ずつシュートして仕上げると思うのですが、マリノスは全部クロスボールに合わせるタイプのアクションで仕上げていました。
  • 練習を見なくても、ニアとファーでそれぞれターゲットを用意する形を持っているな、というのはずっと前から思っていました。ここで、高さがなくて動き出して勝負する前田はニアに走って合わせる形は得意だけど、ファーではそうでもない。そこで、高さのある杉本を入れると、最終局面でのパターンが一気に充実して、守る側としては脅威が高まります。

  • 札幌は遅れること5分、79分に小柏→ジェイ、金子→トゥチッチ。ジェイがトップ、トゥチッチが小柏の位置で、ドドちゃんが左FW…ややこしくなってきたので図で整理します。
選手交代変遷
  • 運動量が全般に落ちてスペースがいろんなところにできている、という状態で、最終的にはジェイとドドの2トップ、トゥチッチが中盤に居る布陣になっている。
  • Twitterではこの外国籍選手3人の守備能力をやり玉に挙げている人が見受けられましたが、確かに駒井とかと比べるとジェイはあまり頼りにならないとは思います。
  • ただ、そもそもこのシチュエーションで投入できるのがFWしかいない(後は、ベンチには小野だけ)という状況なので、ミシャとしてもFWの選手を何らか入れるしかない状態なんですよね。だから私はミシャの選択はアリっちゃアリかなと思います。普段ほど違和感はなく。
  • 試合後のインタビューで、「戦力の差」と言っていたみたいですけど、それはよく言う「スーパーなFWやGKが勝敗を分けた」というよりは、今回はサブのMFすらうちのチームにはいない、って話を指しているのではないでしょうか。
  • もっとも、田中駿汰が右で駒井がアンカー(=2トップをマンマークで守るとCB化する)は、いつものことなんですけど設計がおかしいなとは思っていますが。

  • そんなプロのトップカテゴリとは思えないお粗末な事情をマリノスは考慮してくれません。完全に札幌の運動量が落ちて、自陣で守るしかない状態になると、後はウイングまではボールが届くので、最後の精度の問題になります。
  • そしてその答えは…この記事の冒頭でも書きましたが、高嶺がCBをやっている時点で、札幌は自陣ゴール前で跳ね返す守り方を採用するのは悪手なんですよね。そして荒野も下がって、駒井がCBになって、さらに強度が落ちている。後は、誰でも予想できる展開だったと思います。

4.雑感

  • この試合に関してそんなに、新たな発見とか声を強めて主張したい話はないです。いつもミシャはこのやり方ですし、マリノスも予想の範疇で、結末もそらそうよ、って感じでした。善戦した感じ、というか事実ですが、ただ菅の年一(と言いつつ複数決めている)ゴールがなかったら見栄えはもっと悪い試合だったと思います。相変わらず、流れの中で意図した決定機は殆どなかったので。

  • ミシャチームのこのスタイルについては、色々意見がありますが、一つ言えるのは、それこそアタランタみたいにマンマーク”基調”だったり、部分的に試合の中で強烈なプレスを繰り出すチームはあるのですが、それを常にやっている、試合の中でプランとしての変化が札幌のように少ない極端なチームは、私は他に知らないです。プレッシングにせよ引いて守るにせよ、あくまで勝つためのオプションにすぎないので、それをやるのが目的みたいに見えるのはいまだに違和感があります。

  • 同じ話をまた書きますが、サッカー批評の、ミシャの「試合はお祭り」という表現は非常に腑に落ちるんですよね。ディティールにこだわって、勝つために手を尽くすというよりは、それはある程度のところで妥協している。
  • そしてこの試合から透けて見えるのは、この「お祭り」メンタリティは現場監督のミシャの範疇からクラブ内部にも伝染していて、例えば今日クローザーを用意できないような選手編成になっている(もともとDFが極めて手薄で、かつ途中補強もFW)のは、手堅く勝つみたいな価値観ではないよな、というのは非常に感じます。クラブの立場でも、試合はお祭り化していて、J1に居続けさえすれば後はボーナス、という考え方が強くなっているのだろうと思います(いや、元からそうなのかもしれませんけど)。

  • ですので読者の皆さんに考えていただきたいのは、ミシャと共に旅を続ける限りは常にこういうチームであり続けると予想します。「試合はお祭り」であって、主体としてのプレイヤーのenjoy性は何よりも重要であり、試合に勝つためのディティールよりも優先される、というのが彼の哲学であるためです。

  • そして今日の新聞報道でもまた、例の「プレミアリーグ」の構想実現に向けて動き出す…みたいな報道がありましたが、そうなると「試合はお祭り」の哲学のクラブはどうなるか。私の予想はこんな感じです。
  • 「そこそこの結果」というのは、上を目指して取り組んだ結果として得られるものであって、最初からそこそこを目指してそこそこに落ち着く、というのはあまりないのかな、と思います。それこそ、プレミアリーグ化が14チームでスタートするとしたら、14チームがトップになる努力をする、札幌はそこそこの努力をする、だと、限られた椅子に居られるかは怪しいな、と、今から勝手に心配だけしています。
  • それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

2 件のコメント:

  1. いつもブログ拝読しています。
    今回のブログは最近の疑問?なんかもやっとした気持ちが晴れた内容でした。
    社長、クラブはあまり高い目標を持っていないのではないか?はなんだ悲しいですが、腑に落ちます。
    俗に言う「個人昇格」も、ある程度クラブの成績についてくる物で、そうなると違約金収入も怪しいのではないかと思うのですが、それは別の話ですね。
    マリノス戦後、Twitterのサポーターの間でも「善戦だ」とか「今のスカッドなら仕方ない」が結構見られたので、ベコムさんの指摘以上にサポーターの間でも「今の立ち位置ならこんなもん、そこそこの結構やん」は広まっている気がします。そして数年に一度のお祭り、ルヴァン杯に行けるか行けないかもある意味身の丈で、そこに一喜一憂し続けるクラブ、サポーターの未来も透けて見えた気がして、先の読めるフットボールほど面白くないものはないなと、少し辟易してしまいました。
    j2に降格するような胸高鳴るドキドキは欲しくはないですが、毎試合をこなすような変化も成長も感じられない試合が続くようだと俺個人は試合を見なくなるなぁと思いつつ、案外マスコット・ミシャは大衆受け(スポンサー)がいいみたいなので、大きなハプニングでもない限りこのままなんだと、色々と考えてしまいました。

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    1. 読んでいただいてありがとうございます。
      ・最終的に監督は順位やタイトルを保証できない(それは優れたGKとFWやDF=を獲得できるお金がもたらす)
      ・であれば監督はプロセスで評価されるべき
      ・経営サイドは所属ディビジョンが重要(収入に大きく関わる)
      ・主体ではない、サポーターとして「中位でいい」という価値観はあり(あくまで結果の話)
      ・選手には野心がある(いい選手になる、上の舞台でプレーする、金を稼ぐetc)

      →であれば
      ・J1中位という結果は経営面では成功
      ・FWやGKにお金をかけていないので中位という結果は監督スタッフが責められるものではない(失敗ではない)
      ・一方でプロセス(チーム作り)の評価は別になる

      そして中期的に見ると
      ・各クラブはサイクルを回し、結果を出すためのプロセスを試行錯誤しているので、
       札幌は「結果を出すためのプロセス」にこだわらない(試合はお祭り、のスタンス)なら、
       中期的に見ると他所よりも努力していないことにならないか?
      ・選手には野心があるので「そこそこのキャリア」でいたいとは思わない
      (そこそこでいいと公言するチームに、中期的に良い選手が集まるか?)
      →今「そこそこ」のチームが、今後も「そこそこ」でいられるには努力が必要
      (競争がある中で、都合よく現状維持、は、通常ありえない)

      みたいな話が皆、ごっちゃになっているかもしれませんね。

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