2019年9月27日金曜日

プレビュー:2019年9月28日(土)明治安田生命J1リーグ第27節 鹿島アントラーズvs北海道コンサドーレ札幌 ~代役の条件~

1.予想スターティングメンバー


予想スターティングメンバー

1.1 札幌

×(非帯同、欠場確定)FW鈴木(累積警告4枚で出場停止)
FWジェイ(累積警告4枚で出場停止)
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)DF進藤(右足首捻挫)

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 前節ジェイと武蔵が揃って累積4枚目の警告を受けて出場停止。前線の3つの椅子はチャナティップ、アンデルソン ロペスを加えた4人で回してきた中で、2人同時の離脱は勘弁してくれと内心ミシャも思っているだろう。順当にいけば右シャドーにルーカス。順当にいかないとすれば中野と菅の左サイドの候補2人のいずれか、深井を中盤起用で荒野。特別指定選手の金子も、大学との兼ね合いがあるがこの試合に帯同できるとの話もある。ちょっと前に「お前らは札幌の将来を背負うんだ」と言いくるめたルーカスをベンチスタートにすることが許容されるのはこのあたりか。ただ、ルーカスが有力なので、となると他のポジションも必然と見えてくるということで図には名前を書いていない。

1.2 鹿島

×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF三竿(9/14FC東京戦での左ハムストリング筋損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)MF小泉(柏レイソルから完全移籍)
MF相馬(名古屋グランパスから期限付き移籍)
FW上田(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF安西(ポルティモネンセSCへ完全移籍)
MF安部(FCバルセロナへ完全移籍)
MF平戸(FC町田ゼルビアへ完全移籍)
FW鈴木(シント=トロイデンVVへ完全移籍)
FW金森(サガン鳥栖へ期限付き移籍)

 ターンオーバーを敷きながら並行して4つのコンペティションを戦うシーズン。AFCチャンピオンズリーグでは準々決勝で敗退したが、まだ国内3冠を狙える位置につけている。
 その1つ、水曜日にホームで天皇杯(vs横浜F・マリノス、4-1で勝利)を戦っている。この試合に先発出場しなかったメンバーでスタメンクラスの主力選手は、GKのクォン スンテ、DFの町田、内田、MFの土居、レアンドロ、小泉、白崎。これらの選手は優先的に起用されると考え、また連戦でも起用されている左SBの小池もスタメンが有力だろう。三竿が離脱中で、天皇杯でレオ シルバと永木を使っているため、小泉は本来の中盤起用を予想する。となると右SBは久々の内田か。
 予想が難しいのは2列目。コンディションはレアンドロ、白崎の方が良さそうだが、前線で最大のポイントゲッターになっているセルジーニョを外せるか。

2.今期の対戦のおさらい


2019年3月17日(日)明治安田生命J1リーグ第4節 北海道コンサドーレ札幌vs鹿島アントラーズ ~2手先の準備~

 前々節浦和に埼玉で2-0、前節清水を5-2で粉砕し勢いに乗る札幌はホーム連戦。鹿島は札幌の攻撃力の源であるロペス-ルーカスの右(鹿島から見て左)にウイング然と張る安部とロペスの背後を取る安西の攻撃参加で序盤から差し込んでいく。
 狙い通り15分で安西の仕掛けから札幌右サイドを突いて先制し、以降はいつも通りのマンマーク守備で札幌の攻撃を封殺。ロペスと武蔵はスペースを消され、チャナティップには何度目かの永木によるスッポンマーク。ルーカスは安西に封じ込まれ、背後を取られるリスクが顕在化する。
 後半札幌が前掛かりになったところを、福森の背後を突く定石通りのカウンターアタックで鹿島が追加点を挙げ、3点目も同じく前掛かりになった背後を突いて追加点。鹿島の完勝に終わった。


3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌

青字が前節との更新・変更点。(今回は特に変えていない)
コンセプトより多くの人数による攻撃を突きつけ、相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持(自陣)DFが自由なら福森からの展開。難しければジェイへのロングフィード。ゴールキックは相手がハイプレスの構えを取らなければCBにサーブする。
ボール保持(敵陣)サイドアタック主体。押し込んでから仕掛けるのは右の白井。菅は極力シンプルにクロス供給に専念か、相手SBを押し込んで福森をフリーにする役割。白井は得意なタイミングで仕掛けるが、左はより役割が決まっている。福森はファーサイド狙いを徹底する。
ボール非保持(敵陣)ジェイ出場時はジェイをセンターサークル付近に置いてリトリート。ジェイ不出場時は、相手がボール保持が得意なチームならハイプレス。ハイプレス時、リトリート時ともにマンマーク基調の守備を展開する。特に相手のCBと中盤センターに同数で守備できるよう、前線の枚数を調整することが多い。時間帯にもよるが、先制したらリトリートの傾向が強くなる。
ボール非保持(自陣)基本は1-5-2-3で、前3枚はポジティブトランジション用に残しておく。ゴール前からCBを動かさないことを重視。なるべくマンマーク関係を維持する。
ネガティブトランジション中盤2枚や前目に位置するDFは即時奪回を目指す。ビルドアップが成功するとともにポジションと役割がCBからセントラルMFのそれになる。但しトップ(ジェイ)のネガトラがあまり有効ではないこともあり、あくまでMF2人の個人での対処になりがち。
攻撃時に予防的に残っているCBは2枚、時に1枚で相手のFWと同数。裏はGKク ソンユンの極端な前進守備で何とかさせようとの考えがここ数試合は強くなっている。
ポジティブトランジションシャドーが裏に飛び出しての速攻がファーストチョイス。
先制したらリトリートからの速攻狙いに切り替える。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任だが、ルーカスもたまに蹴る。ファーサイドで、シンプルに高さを活かすことが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他メモ5バックの相手に対してはCBの攻撃参加(福森サイド)で基準をずらす。

3.2 鹿島


 分析対象は第24節(vsガンバ大阪)、第25節(vs清水)、第26節(vsFC東京)。
コンセプト各ポジションのマッチアップを明確にし、対人での優位性を前提に相手のウィークポイントを突く。
ボール保持(自陣)(明確な約束事はないが)最後に大外を使うためか、ビルドアップは中央が出口になる傾向。2CB+2MFに加えて土居が列を降りて助ける。意外と?ボールは大切にする。
ボール保持(敵陣)最終的には2列目が中央に密集して空けた大外をSBが滑走。仕掛けられる左の小池が重宝されている。
ボール非保持(敵陣)1-4-4-2でセットし、まずゴール前から人を捕まえてマッチアップを明確にする。プレスの開始位置は相手次第。責任を持っている選手を監視しつつFWがスイッチを入れれば敵陣から仕掛ける場合もあるが、基本はセンターサークル付近で待ちの守備。
ボール非保持(自陣)とにかく人を捕まえる。FWも戻ってブロックに加わることもすくなくないが、カウンターアタックへの備えの側面もあると思われる。
ネガティブトランジション個々人での判断によるところが大きい。敵陣ゴール前では特に2列目の選手が大胆にポジションを移動していることもあり、あっさり逆襲を食らって自陣ペナルティエリア付近まで運ばれることもある。
ポジティブトランジションボール奪取からの速攻を常に狙っている。奪ったらトップの選手によるポストプレーよりも、スペースに走り込むMFを使って仕掛けていく。なので相手がスペースを与える局面を狙っている。
セットプレー攻撃キッカーはレオ シルバ、左足は小池、セルジーニョ。
セットプレー守備CKではマンマーク基調。
その他メモ相手によってボール保持の狙い、形をかなり変えているので明確な決まりごとは試合ごとに見ていく必要がある。一方非保持は基本的にいつも、人を捕まえるシンプルなやり方。

4.想定される互いのゲームプラン

4.1 札幌のゲームプラン


 アンデルソン ロペスとジェイを欠いた5月は、相手にボールを持たせる戦い方に取り組んだ期間だった。首位のFC東京には敗れたものの戦績はまずまず。しかし鹿島相手にそれが通じるかというと、今年3月の対戦や、2年前の6月の対戦で露になったシステム上のミスマッチにより生じる問題は解消されないためにボールを持たせたところで殴られて終わり、という展開も想定される。
 ミシャ自身は浦和時代に鹿島を得意としていることもあり、4バックのチーム相手にそこまでパッシブな戦い方はしないだろう。

4.2 鹿島のゲームプラン


 人間の本能には逆らえない。今の札幌は、本能的にボールを持ちたいチーム。ジェイと武蔵がいなくとも、鹿島はその札幌の本能や習性を活かして試合を進めさせると考えるだろう。要するに3月の対戦と同じ。サイドを押し込み、札幌のアタックを封殺して、更に前掛かりになるところをカウンターアタックで突いていくことをまず考えるはずだ。

5.予想される試合展開とポイント

5.1 予想される鹿島の振る舞い


 鹿島のリーグ戦直近3試合を見た印象は、相手によってかなりアプローチを変えてきている。相手を見てプレーするのは、あらゆるスポーツや勝負事で当たり前のことだが、それを一定の水準で実践できているのは少なくともJリーグでは一部のチームだ。

 具体的には、5バックで引き気味に構えるガンバ相手には、ガンバのブロックを横に広げることを意識していた。特に左サイドで、町田・小池・白崎の3人でボールを循環させながら、サイドを守る倉田と小野瀬を動かす。序盤25分まではサイドを変えて右サイドでも、守備が苦手な宇佐美を引っ張り出していた。
(ガンバ戦の鹿島)ワイドに開いてガンバのブロックを拡げる

 序盤は攻め急ぐことなくボールを動かして相手DFを拡げてスペースを作る。25分以降、中央に人を集めて攻略する得意のパターンに移行していた。
(ガンバ戦の鹿島)倉田と小野瀬を動かす

 FC東京戦では、気を抜くと1発で致命傷となる快足FW永井のケアが重要なミッション。この試合、ブエノの開始早々の得点で先制した鹿島だが、速攻が得意な東京にボールを持たせて撤退するかと思いきや、先制後もボールを保持して試合を進める。それはセーフティな2点のリードが欲しかったということ等もあるだろうが、事前のゲームプランが明確だったためだろう。
 鹿島の狙いは白崎とサイズのミスマッチが生じる右SBの室屋。フリーロール気味のセルジーニョに対して、白崎はサイドに張って室屋と対峙する。
(FC東京戦の鹿島)白崎と室屋のミスマッチを作る

 その白崎の高さを活かしつつ、ボールサイドに寄せてくる東京の守備を逆手に取るサイドチェンジを使う。これは他の試合では見られなかった特徴だった。サイドでポイントを作り、東京の2列目を守備に回らせた。
(FC東京戦の鹿島)サイドでポイントを作って押し込む

 これらに対し、清水(1-4-4-2のブロックで守るが、横圧縮は札幌戦同様にそんなに強くない)に対しては、最初から決め打ちだったかのように両サイドハーフが中央に入ってプレーしていた。

 という具合に、試合ごとに相手の特徴を踏まえてアプローチを変える鹿島。いい意味で型があまりないチームだ。札幌に対しても、札幌が望ましくない展開に持ち込むことを画策してくるとまず予想される。3月の対戦でルーカスのサイドを押し込んだような策だ。
(第4節)ルーカスのサイドに安部を張らせて押し込みつつ安西と2人で攻略w

 同じような形を鹿島が用意してくることは当然予想される。札幌の右は恐らく白井。白井を押し込むことは、3月にルーカスに対して行ったことと同じかそれ以上にリターンがある。
 一方で鹿島にもリスクがある。小池の背後のスペースの管理能力は、前任者の安西と比べると明らかに劣る。ガンバ戦でもリードしている状況で、ロングフィード1発で背後に走り込まれてPKを献上している。
 白井と白崎のマッチアップは、互いに消し合うとする。膠着状況なら、白崎の背後、白井の前を守る小池とルーカス(想定)のパワーバランスが重要になる。小池の背後のスペースは、本来右ウイングのルーカスなら十分に使える。小池は押し込んでくるだろうが、札幌はここに背後を突ける選手を必ず用意したいところだ。
小池vsルーカスのマッチアップなら背後にプレッシャーを与えられる

5.2 右シャドーの選択


 前節の仙台戦もそうだが、[1-4-4-2]マンマーク型の守備には札幌の攻撃陣は相性が悪い。
 ミシャチームは本来4バックの攻略を念頭に置いたパッケージとして誕生した。しかし札幌においては、特にチャナティップらの前線の選手のキャラクターを活かすやり方にマイナーチェンジしており、これが鹿島や仙台とは相性が悪い。
 札幌のシャドーで起用される選手のうち、左のチャナティップは本来のシャドーポジションから中盤まで下がってくる。逆に右シャドーのロペスや武蔵、そしてワイナリーの開業を間近に控える都倉もそうだが、右にはFW的な選手が起用される。つまり、選手特性上、1トップ2シャドーというより2トップっぽい形になりやすいので、[1-4-4-2]のCB2人でFWと右シャドーを封殺、チャナティップは中盤にマンマークが得意な選手を置いて対処するのが、鹿島や仙台がこれまでに見せてきたやり方だ。もっとも、チャナティップやジェイ、ロペス、武蔵にマンマークで対処できる能力のあるDFは不可欠だが。
(第4節)5トップに同数で人を用意されて攻め手が消える


 2017年以降の5試合で札幌が最も鹿島戦の勝利に近づいたのは、2018シーズンの鹿島でのゲーム。この時のキープレイヤーは、今をときめく男・三好康児だった。
 三好はFWとして最前線で張るのではなく、チャナティップと並んで、相手の2~3列目の間でプレーする。三好を捕まえるのはCB(昌子)か、MF(レオ シルバ)か。そのポジショニングによって常に判断を迷わせていた。
(2018シーズン第4節)三好のシャドー起用

 CBがマークするなら、最終ラインが揃わずスペースが生じる。この現象を作るために、右シャドーに”シャドーのプレーができる選手(できれば左利き)”を置きたい。アンデルソン ロペスや武蔵はその得点力、クオリティとの兼ね合いになるが、両者が右シャドーに入らないとしたら、残りの候補者の中からの選択基準はここになる。
(2018シーズン第4節)右シャドー三好をCBが捕まえると最終ラインが揃わなくなる

 筆者がスタメンを予想するルーカスは、少なくともFWにはならない。プレーエリアはシャドーのそれだが、シャドーよりもタッチライン付近でプレーしたい選手だ。ルーカスが我慢してシャドーのポジションをとれるか、はたまた得意なエリアに逃げるか。ここが不確定だとしたら、代役はその選手適性を考えると左利きの金子か、中野あたりが適役に思える。

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