0.プレビュー
スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-4-2-1、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、横山知伸、福森晃斗、MF菅大輝、宮澤裕樹、兵藤慎剛、石川直樹、都倉賢、チャナティップ、FWジェイ。サブメンバーはGK金山隼樹、MF前寛之、稲本潤一、キム ミンテ、早坂良太、小野伸二、FW内村圭宏。前節負傷交代した荒野に代わり、ボランチに兵藤がスライドし、シャドーで都倉が3試合ぶりにスタメン復帰。早坂がサブで、菅の右ウイングバックは誤植(アウェイ新潟戦で小野と稲本の誤植があった)かと思ったが、そうした類の話ではなく菅が右に配されていた。鳥栖からの期限付き移籍中である菊地は、次のシーズンから完全移籍の交渉をしているためこの試合での起用が許されたが、故障の影響によりベンチ外。
この試合の2日前、木曜日の夜に2018シーズンよりミシャことミハイロ・ペトロビッチ氏と監督就任で合意したとの衝撃的なニュースがあった。また金山のファジアーノ岡山への移籍、杉山、増川、石井、上原の契約満了による退団の報道もあった中でのスタメン選びは注目されたが、四方田監督の言う「クラブステイタスを上げるための戦い」であるということで、菅の起用以外はベストの11人を起用するというのが答えだった。
サガン鳥栖のスターティングメンバーは4-3-1-2、GK権田修一、DF藤田優人、キム ミンヒョク、鄭昇玄、三丸拡、MF河野広貴、高橋義希、小野裕二、吉田豊、FWビクトル イバルボ、田川亨介。サブメンバーはGK赤星拓、DF小林祐三、青木剛、MF安庸佑、石川啓人、FW豊田陽平、池田圭。原川は累積警告4枚で出場停止。福田はアキレス腱痛で欠場のため、今シーズン初の中盤底に2枚を置く布陣を採用している。コンスタントに勝ち点を積み重ね、危なげなく6シーズン連続のJ1残留を決めており、試合前の段階で8位につけている。勝ち点差2の7位浦和とは得失点差が離れており、この試合に勝ったとしても順位で上回るのが難しい状況。
1.前半
1.1 台所事情と謎の事情
1)鳥栖の4-4-2
鳥栖のスカッドを今更ながら確認すると、アンカーやインサイドハーフが務まりそうなMFが殆どいない。しかも小川佳純や太田徹郎が夏に放出されたことで、シーズン中に更に手薄になっている。フィッカデンティ監督は3センター系の布陣を好むはずだが、よくこの駒の量でシーズンもったな、という印象である。よって、原川と福田を欠くこの試合では、そもそも駒の数が足りないので、中盤センターを2枚とする4-4-2にしたという消極的な要因があったのだと思う(前寛之を期限付き移籍させると重宝されるのでは)。
2)菅の右サイド起用の謎
札幌は菅の右サイド起用に何か、特に攻撃面で理由があったのだと思うが、見ていた限り明確な狙いは読み取れなかった。基本的に左足でボールを持ちたい菅は、タッチライン際でボールを受けると、左足でのフィニッシュを意識し中央方向に切り込もうとする。しかしこの中央のエリアを菅が使えるような仕掛けは特になかったし、むしろこの動きは都倉と完全に被っていた。シーズンラストゲームということで出場機会を与えたかったのかもしれないが、それにしても右サイドに配されて終始窮屈そうにプレーしていた。
1.2 疑似セットプレー
1)フィッカデンティの言葉の意味
鳥栖のフィッカデンティ監督の試合後のコメントのコメントが興味深かった。
2-2となった後、こちらがリードする可能性があった場面も作れた中で、相手は90分を通して鳥栖を相手にこういうやり方というプレーを続けていました。徹底的にセットプレーの形を作り、ペナルティーエリアに人数をかけるというプレーをやってきて3点目を奪われてしまいました。フィッカデンティの言う、「徹底的にセットプレーの形を作り、ペナルティーエリアに人数をかける」という言葉は、札幌がたくさんセットプレーを獲得していた(鳥栖が与えてしまった)という意味合いではないと思う。
確かに早々とスコアが2-0にとなったため、イバルボや一部の鳥栖の選手のファウル気味の接触が多い印象もあったが、筆者の解釈では、フィッカデンティのコメントは、札幌が「前線にターゲットとセカンドボールを拾う選手を揃えて、後方に砲台となる選手がオープンの状態を作ってジェイや都倉に当てる」という形を指していて、それはフリーキックやリスタートのプレーに限らず、オープンプレーからの展開も含めていると思われる。
2)視線を操りビッグマンへ
札幌がシーズン開幕時から徹底しているのは、ゴールキックや自陣からのリスタートの場面でとにかく時間をかけて場をセットすること。具体には、ターゲットとなる都倉や前線の選手がポジションを取るだけでなく、セカンドボールを拾えるように中盤の選手もポジションを上げ、入念にセットする。シーズン序盤に、札幌はJ1で最もリスタートの際に時間をかけるチームだと指摘したが、この傾向はシーズンが終わっても変わっていない(特に、同点の際のゴールキックを蹴る時間に特徴が表れている。)。またク ソンユンが遅延行為で5枚の警告を受けていることもこうした戦術に原因がある。
これは夏以降、早坂がスタメンに復帰し、石川とジェイがスカッドに加わってから更に先鋭的なものとなって、180センチオーバーのサイズのある石川と早坂も高い位置をとることで、都倉、ジェイと合わせ、相手にとっては複数のターゲットを見せられているので、守備枚数の増員や空中戦要因の分散による対応を余儀なくされる。
ジェイがスタメンに定着して以降の攻撃で、最も再現性のある形だが、特徴はターゲット2枚のうち1枚を中央、もう1枚をペナルティエリア角付近に配すること。ジェイが中央、都倉がサイドなら、まずDFはジェイを放置できないのでジェイを基準にポジションを取る。4バックの相手なら、都倉にはサイズのないSBが相手をするしかないので、かなり分のある勝負となる。
このサイド寄りに配された選手がターゲットとなるが、ここへの放り込みは必ず中央のエリアから行う。特にサイドのエリアでFKを得た場合に、兵藤が中央にパスし、中央から福森が放り込むというプレーに見覚えがある人も多いと思うが、兵藤からの横パスは、相手DFの視線を”リセット”させ、ボールとターゲットを同時に視界に入れにくくする効果を狙っている。
視線をリセットして中央からペナルティエリア角へ |
3)疑似セットプレー
そしてジェイと都倉が起用されている場合、オープンプレーでもこの形を作りやすい。それは基本布陣となる3-4-2-1の状態で、前線にジェイと都倉を最初から前方に配しているため。この2人に、セカンドボールを拾う選手を用意するだけで、ほかのチームがセットプレーでやっている攻撃を、札幌はオープンプレーでも展開することが可能になる。例えばこれが、前線の組み合わせがヘイスと内村、チャナティップなら、空中戦のターゲットとして物足りないので、セットプレーなら長身のDFを上げたりして高さを補強できるが、オープンプレーで手数をかけずに行えるのはジェイと都倉を擁している札幌の強みとなっている。
4)疑似セットプレーの条件
この放り込みの形を流れの中で作るために必要なことは、最終ラインで安定してボールを保持できること。その理由は、最終ラインが最終的に砲台となるからでもあるが、それ以上に、中盤の選手がポジションを上げるための時間をつくるため、その時間を作るために後方でボールを保持して相手の圧力をやり過ごす必要があるからである。セカンドボールを拾う中盤の選手を上げることができれば、札幌は常時前線に強力なターゲットマンを2人置いているので、放り込むだけで簡単にチャンスになる。
フィッカデンティの言う「札幌は徹底的にセットプレーの形を作り…」を鳥栖の視点で考えると、札幌の3バックが持った時に、より圧力をかけることで放り込みを阻害する必要があったが、序盤あまりに札幌の3バックをオープンにし過ぎたという反省があったと思われる。
6分の先制点は、センターサークル付近のFKから兵藤が中央の横山に戻し、横山が都倉に放り込み、ジェイが見事なボレーで合わせた得点だったが、選手の配し方は札幌の基本陣形である3-4-2-1の形で、キッカーの福森もボールサイドにいないかったで、鳥栖はゴール前にイバルボや田川など高さのある選手を置かず、放り込んでくることに無警戒で、ジェイもフリーになっており準備ができていなかった。よく教師タイプの監督(ヤ○ツー氏ら)は開始早々に失点すると「選手が眠っていた」等と評することがあるが、ジェイや都倉へのマークが甘くなるには相応の理由がある。
1.3 片翼は行き止まり
1)左からの形
中盤のキープレイヤー2人を欠き、いつもと違う形で臨んだ鳥栖だったが、基本構造や狙いは鳥栖の「いつもの形」と共通点があった。
その一つは、左サイドがキーになっていること。前回アウェイで鳥栖と札幌が対戦した際もそうだったが、鳥栖は中盤の選手をSBの位置に落とし、ボール循環を安定させたうえでSBを攻撃参加させる形を持っている。前回の鳥栖の攻撃の形は、大半が左で原川の支援を受けて上がってきた吉田からのクロス。この試合は、吉田が中盤で使われていて三丸が左SB、小野がボランチという形だったが、小野がSBの位置に落ちて三丸を押し上げ、吉田が中央に絞って三丸の滑走路を作る、という構造は非常に似ていた。
↓の図は14:00頃にみられた形で、鳥栖は後方でボールを動かすことで札幌の前3枚を引き出し、Wボランチを孤立させる。Wボランチが孤立したところで、吉田は中央に絞って札幌のボランチ脇で河野とともに待ち構える。この時、進藤や福森がボランチ脇の迎撃を担うのだが、この2人が簡単に前に出られないよう、イバルボと田川は最前線に張り付く。イバルボは、カウンターでボールを収めないといけない時は必ず下がり目で中盤の選手を支援していたが、このセット攻撃の形では序盤は殆ど前に張っていた。
小野が落ちて起点となり左から侵入 |
そして基本的には吉田にボールを入れ、吉田が囲まれる前にサイドの三丸に逃がすことで少しずつ前進を図る。この時はCBの鄭昇玄から縦パスが入ったが、札幌はこの前3枚が引き出された形になると、選手間でかなり明確にコミュニケーションを取り、ボールにアタックしていかないと、所謂カラーコーン守備になりがちなのは相変わらず(都倉がスタメンを外れたここ2試合では、兵藤が前3枚のリーダーであり、うまくジェイのカバーをしていた)。この時も、右にいたジェイと中央の都倉が殆どその場に突っ立っているだけで、簡単に縦パスを許してしまう。
2)福田ロールができなかった河野
左はこうした形を作っていたが、右はどうなのかというと、これも基本的に「いつもの形」と同じ。具体には、右はSBを低い位置に置いて、SBにボールが入ると中盤の選手がタッチライン際に開きパスコースを作る。「中盤の選手」は、いつもはインサイドハーフに入る福田が担うが、福田は低い位置で受けることで前方にスペースを作る。福田の前方のスペースを利用するのが、夏にフランクフルトに移籍するまでトップ下で起用されていた鎌田や、”鎌田以後”の攻撃の核となりつつあるイバルボであり、中盤の選手はあくまで場作りがメインの仕事である。
ただ、この試合、右サイドハーフに起用されている河野が福田と同じようなイメージで使われていたのだと思うが、14分の札幌の追加点は、SB藤田⇒SH河野のボール循環がスムーズにいかなかったところを引っ掛けられての失点だった。CB経由で藤田にボールが渡った時、いつもなら福田が鬼の運動量でサイドに開いたり、中央に絞ったりして作っていたはずのパスコースは確保できていなかった。
札幌の石川がポジションを上げて藤田に出ると、藤田はいつもであれば藤田が張っているポジションに苦し紛れのパスを出すが、河野と合わずに宮澤が引っ掛け、兵藤の縦パスから最後はジェイがフリック、都倉が抜け出し一人で持ち込み2点目。
河野がいないので藤田の前にはパスコースがなかった |
前回とは札幌のシステムも選手も異なっているが、アウェイの対戦では札幌がこの位置(SB⇔福田の右サイド)でボールを奪ったプレーは殆どなく、福田はほぼ全てのボール循環を成功させていた。福田というピースを欠いた鳥栖の綻びと、見逃さず最初にチェックに行った石川の判断が命運を分けた格好となった。
1.4 シフトチェンジ
1)4-3-3に変えてきた鳥栖
21分に札幌の進藤のファウルでプレーが止まったタイミングで、鳥栖は4-4-2から4-3-3にシフトする。前線は右から河野、イバルボ、田川。中盤は高橋がアンカーで右に小野、左に吉田となる。これは先の2点目が入ったプレーを見ても、小野が原川の役割はできるけど、河野には福田の役割は厳しいので、別のやり方を考えなくてはならないという判断だったのだと予想する。
21分~ |
鳥栖がこの形をどの程度、準備していたのかわからないが、少なくともシフトした直後はやや混乱が見られた。2点ビハインドということもあり、イバルボは「前から捕まえに行くぞ!」というジェスチャーを25分頃に味方に対して送っていたが、他の選手と意思統一できていたかというと、高橋や吉田は自分がどこまで持ち場を離れて良いのか、札幌の動きや全体のバランスを考えながらプレーしていたように見えた。
それでも時間経過と共に、守備の形はだいたい以下のようなマッチアップで落ち着く。まず制約条件として、ジェイと都倉に対応するためにCB2枚と三丸は前に出られない。前線は札幌の3バックに数的同数で当てるのが最も効率が良い。となると吉田は自然と、菅を射程に入れて守ることとなるので、4-3-3で中盤3枚と言うけれど実際は小野と高橋の2枚で宮澤と兵藤に対抗していた。
守備の考え方 |
なお、フィッカデンティは田川と河野の位置を入れ替えろ!と執拗に指示していて、それが伝わったのが28分頃だというが、河野がすぐに交代したためその意図は読み取れなかった。
2)張ってろ攻撃解禁
30分過ぎのジェイとキム ミンヒョクの競り合いを発端とし、更に相変わらずの小野裕二が石川直樹に肘を入れたりする等、計5分間ほど両チームで小競り合いが続いた。この前後に鳥栖は再び布陣を変える。河野を諦め、池田を投入した後の布陣はDAZN中継のピッチレポーターによると4-2-3-1。恐らく「1」が池田でイバルボがトップ下なのだと思うが、バランス的には開始時の布陣に近くなった。やはり4-3-3は殆ど練習してなかったのかもしれない。
32分~ |
鳥栖の1点目は、この交代によってようやく本来の攻撃的なポジションに配された小野の個人技から。40分、札幌のプレッシャーが甘いのを見ると、鄭昇玄が右で張る小野にロングフィードを通す。先述のように、河野は攻撃時のスタートポジションを中央寄りで札幌のボランチ脇のスペースを狙っていたので、鳥栖の右サイドのMFがウイング然として張るプレーはこれが初めて。札幌はこの時、都倉とチャナティップが中盤に吸収されているので鳥栖のCB2枚は完全にノープレッシャーだった。これはベンチの指示だったのか、選手の判断でポジションを下げていたのかわからないが、ともかく鄭昇玄はあまりにもフリー過ぎた。
サイドで張る小野に渡ると、石川が寄せてくるが、小野は寄せきれない石川の目の前を横切るように、中央に切れ込んで時間を作った後に左足でファーサイドへクロス。大外を守っている菅は池田のプルアウェイで簡単に守備対象を見失う。池田の頭での折り返しを田川が押し込んでスコアは2-1。鄭昇玄も小野もここまで簡単に「張ってろ攻撃」が成功するとは思わなかったのではないか。
4-2-3-1にしてからの鳥栖は、あくまで基本形はイバルボがトップ下、池田が1トップと考えていたようだが、イバルボはあまり細かい規律を意識するよりもフリーダムに前線で動く。右利きで、基本的に右サイドでのプレーを好むようで頻繁に右に流れてくる。また鳥栖の攻撃が失敗し守備に切り替わった時の切り替えもチームで一番鈍い。どことなくクラシカルな香りを漂わせる。
鳥栖がイバルボへの放り込みを続けると、札幌は毎回下がっての対応を強いられ、また食い止めるのに人数が必要となるので5バックと2ボランチは低い位置への撤退を余儀なくされる。一方で、ジェイ・都倉は既に疲労がみられ、小野を低い位置での肉弾戦に投入することは得策ではない。結果、前3枚と後ろの7枚が分断し、DFラインの前方にスペースを与えることとなる。
また宮澤と兵藤との距離が離れた都倉とジェイは、ロングボールを当てられてもサポートが得られず孤立する。この2人はダブルターゲットとして並べて運用すると脅威だが、どちらかがターゲット、どちらかがサポート、という運用を確立できていないので、前線がこの構成だと非常に散発的な攻撃になってしまう。
都倉を欠いた清水戦、ガンバ戦では、ジェイに当てると兵藤かチャナティップが必ずサポートできる近いポジションを取っていた。言い換えると、兵藤とチャナティップは高い位置を取っていたので、札幌ボランチの脇はしばしば空くことになっていたが、この点は河合や横山が高いラインを保つことでボランチ脇への前進守備を容易にすることでカバーしていた。
張ってる小野に簡単に通されて失点 |
2.後半
2.1 振り出しに
豊田陽平の時代から過渡期を迎えている鳥栖は、かつてのような極端なキック&ラッシュ志向から脱却を図っているように感じるが、あくまでロングボールの放り込みというのは攻撃のオプション、又は陣地回復の手段として依然として持っている。それはこの試合前半からたびたび肉弾戦を仕掛けてきたことでもわかるし、また池田の投入は、シンプルに前線に体を張れる選手を増やしたかったという意図もあったと思う。
放り込むなら豊田でも良かったのでは、とも思うが、基本的に9番タイプで中央に張る豊田に対し、池田はイバルボが動くスペースを空けられる。また放り込みが失敗した後のトランジションでも池田に分がある印象である。
後半立ち上がりも、両チーム放り込むプレーが目立った。鳥栖は50分、左の田川が放り込みから抜け出しクロス。CKからのシュートは宮澤がライン上でクリアに成功するが、2回目のCKからキム ミンヒョクのヘッドが決まりスコアは2-2に。
2.2 前残りからの斬り合い
1)前残りが生むカオス化
一方で鳥栖はこのイバルボのフリーダムなポジションを攻撃時に利用する。イバルボが右サイドに残っている時、このエリアの対応はルーズになりがちなので、福森からのロングボール等で侵入を許しやすくなっていたが、
鳥栖はイバルボが残り、小野が下がるなどして枚数を確保して対応する。そして奪った後は前残りのイバルボに放り込み、手数をかけずに攻撃に移行する。都倉やジェイのプレーを見てもわかるが、フィジカルコンタクトの強い選手がサイドに流れ、タッチラインを使い身体でボールを隠すようにしてドリブルで運ばれると、守る側としては厄介で、対峙する福森や石川もイバルボのこうした巧さに苦戦する。
札幌としてはボールは運べる、アタッキングサードに侵入できるのだが、そこでシュートまで持ち込めないと押し込んでいるはずの鳥栖にじわじわと陣地回復される。互いにロングボールが行き交う展開になる。
札幌は65分に菅⇒早坂、70分にチャナティップ⇒小野に交代。考え方としては、敵陣に侵入できるので後はフィニッシュの精度を高められれば、ということだったのと思う。ただ、攻守両面で本来菅よりも序列が上の早坂はともかく、放り込みに伴う肉弾戦が多く発生する状況で小野がボールに触る機会がなかなかない。
時間経過と共に、小野はバイタルエリアではなく中盤の低い位置に下りてくる。宮澤と兵藤は2人とも飛び出したい選手なので、ボールが持てる展開だとそうした攻撃もありだが、ネガトラ時は中盤に小野だけが残りフィルターが非常に薄くなる。
イバルボが右に来るとルーズになる |
鳥栖はイバルボが残り、小野が下がるなどして枚数を確保して対応する。そして奪った後は前残りのイバルボに放り込み、手数をかけずに攻撃に移行する。都倉やジェイのプレーを見てもわかるが、フィジカルコンタクトの強い選手がサイドに流れ、タッチラインを使い身体でボールを隠すようにしてドリブルで運ばれると、守る側としては厄介で、対峙する福森や石川もイバルボのこうした巧さに苦戦する。
前に残したままでカウンター時に活用する |
札幌としてはボールは運べる、アタッキングサードに侵入できるのだが、そこでシュートまで持ち込めないと押し込んでいるはずの鳥栖にじわじわと陣地回復される。互いにロングボールが行き交う展開になる。
2)依然として続く肉弾戦
札幌は65分に菅⇒早坂、70分にチャナティップ⇒小野に交代。考え方としては、敵陣に侵入できるので後はフィニッシュの精度を高められれば、ということだったのと思う。ただ、攻守両面で本来菅よりも序列が上の早坂はともかく、放り込みに伴う肉弾戦が多く発生する状況で小野がボールに触る機会がなかなかない。
時間経過と共に、小野はバイタルエリアではなく中盤の低い位置に下りてくる。宮澤と兵藤は2人とも飛び出したい選手なので、ボールが持てる展開だとそうした攻撃もありだが、ネガトラ時は中盤に小野だけが残りフィルターが非常に薄くなる。
2.3 強みが活きる前提
1)生命線の維持が困難に
鳥栖がイバルボへの放り込みを続けると、札幌は毎回下がっての対応を強いられ、また食い止めるのに人数が必要となるので5バックと2ボランチは低い位置への撤退を余儀なくされる。一方で、ジェイ・都倉は既に疲労がみられ、小野を低い位置での肉弾戦に投入することは得策ではない。結果、前3枚と後ろの7枚が分断し、DFラインの前方にスペースを与えることとなる。
また宮澤と兵藤との距離が離れた都倉とジェイは、ロングボールを当てられてもサポートが得られず孤立する。この2人はダブルターゲットとして並べて運用すると脅威だが、どちらかがターゲット、どちらかがサポート、という運用を確立できていないので、前線がこの構成だと非常に散発的な攻撃になってしまう。
ロングボールで分断される |
都倉を欠いた清水戦、ガンバ戦では、ジェイに当てると兵藤かチャナティップが必ずサポートできる近いポジションを取っていた。言い換えると、兵藤とチャナティップは高い位置を取っていたので、札幌ボランチの脇はしばしば空くことになっていたが、この点は河合や横山が高いラインを保つことでボランチ脇への前進守備を容易にすることでカバーしていた。
ジェイのポストプレーを活用した攻撃の生命線は、実は横山によるラインの押し上げであって、鳥栖のロングボール攻勢によりラインを下げられ、低い位置でジェイが孤立すると、アタッキングサードでスーパーな存在となるジェイもただの鈍重なFWに成り下がってしまう。
83分頃に札幌は内村を用意。最初、ジェイと交代を予定していたようだが取りやめ、都倉との交代に切り替える。内村が準備している2分ほどの間、何度か前線に蹴り続けたボールが都倉に当たり、都倉が右サイドでファウルを得てFK。ゴール前にクロスを送れる位置だったので、長身の選手を揃えることができる。福森のキックに横山が合わせ、ようやく高さが活きる前提条件を満たした札幌が勝ち越し点を挙げた。
一見すると、好調だったここ数試合と同じような傾向、ジェイが爆発して都倉も復調のゴール、この2人の高さがアドバンテージとなって打ち勝った試合と感じる人も多いと思う。確かにこうしたストロングポイントを確立できたことによって、従前なかったさまざまなプラスの効果が攻守両面で生じているが、一方で勝てなかった時期に課題となっていた要因も根本的には解決されていないことが露見された。
具体的には、前線のリーダーとして味方を動かしていた兵藤が中盤に戻ると、肝心なところでボールにアタックできないため、相手に好き放題やられてしまうカラーコーン守備に陥ってしまう。また攻撃面においても、ジェイを孤立させずにサポートしていた兵藤が中盤センターに入ると、大きい選手に当てるだけになりがちだった。序盤に失点したが、鳥栖はジェイをゴールから遠ざけることに最も成功したチームだったと思う。
2)ようやく前提条件を満たす
83分頃に札幌は内村を用意。最初、ジェイと交代を予定していたようだが取りやめ、都倉との交代に切り替える。内村が準備している2分ほどの間、何度か前線に蹴り続けたボールが都倉に当たり、都倉が右サイドでファウルを得てFK。ゴール前にクロスを送れる位置だったので、長身の選手を揃えることができる。福森のキックに横山が合わせ、ようやく高さが活きる前提条件を満たした札幌が勝ち越し点を挙げた。
3.雑感
一見すると、好調だったここ数試合と同じような傾向、ジェイが爆発して都倉も復調のゴール、この2人の高さがアドバンテージとなって打ち勝った試合と感じる人も多いと思う。確かにこうしたストロングポイントを確立できたことによって、従前なかったさまざまなプラスの効果が攻守両面で生じているが、一方で勝てなかった時期に課題となっていた要因も根本的には解決されていないことが露見された。
具体的には、前線のリーダーとして味方を動かしていた兵藤が中盤に戻ると、肝心なところでボールにアタックできないため、相手に好き放題やられてしまうカラーコーン守備に陥ってしまう。また攻撃面においても、ジェイを孤立させずにサポートしていた兵藤が中盤センターに入ると、大きい選手に当てるだけになりがちだった。序盤に失点したが、鳥栖はジェイをゴールから遠ざけることに最も成功したチームだったと思う。
|´・ω・)ノこんにちはー ちとおそくなったけど・・・
返信削除1年間ご苦労様でした。途中から書き込まなくなったけど、ちゃんと読んでたよん。
仕事で休み取れなくなって、土曜の昼試合はアウトだったから、後半戦は3試合しか生観戦できませんでした。ここ3年間くらいはホームゲームのほとんどを生で観ていたのでショックこの上なし。
来年度も試合の解説期待してます。試合が終わった後にここに来て試合を振り返ると、自分では思ってなかった事や、色んな見かたがあるものだなとか、ここは考え方違うなーとか様々な事が巡りんぐするので楽しかったです。
きっと書き込んでないけど、ここの解説を読んで俺と同じ楽しみ方してる人いるはず。そういう方々はブログ主に一年間のお礼を書いてください(願望)。
J1にも残留できたし、順位もそこそこ良かったしまあ結果オーライでまた来年も皆でサッカーを楽しみたいものです。
なんとなくまとめて終了www
んでわまたのー にゃんむる でしたー。
>にゃんむるさん
削除ご無沙汰しております。あっという間のシーズンでしたね。色々ありましたが、確実に言えるのは残留してくれて本当に感謝です。J2は今年スペイン監督ブームもありましたが、マクロに見るとやはりJ1とJ2だと戦術的な部分に相当差があるので、降格したら毎試合ブログは書けないな…と思っていたところで…。次のシーズンの話もいろいろ出ていますが、しばしの冬眠の後また色々語れればと思います。1年間ありがとうございました。
遅くなりました。
返信削除コンサのセットプレイは当然対戦相手も研究しているでしょうが、なるほど「目を切る」ために一度横に流す意図があったんですね。ジェイの強さを意識させておいて都倉の優位性を生かす。Jリーグ全体としてはまだ大型化しているとは言い難いですから来年のうちくらいは「わかっていても防げない」にできるでしょうかね。
前半のうちにカードを切るということは明らかに鳥栖側に計算外のことが起こっていた証。ただ、菅のサイドにちょくちょく探りを入れていたのでコンサも穴を放置していたという意味では同じかと。ジェイと都倉の2枚看板は確かに強力ですが、そのデメリットをまだ解決できていない感じでその解決が組織ではなく主に兵藤の個人能力頼みなのはちと心配。
清水戦でのジェイの2点目や鳥栖戦の前半10分頃などCBの福森がヌルヌルとPAまで攻撃参加していたのでミシャテイストが全くないわけではないでしょうが、ミシャ式がJ1では概ね対策済みな状況下でどんな進化を遂げるのか。高さでアタックを取り込めばいいじゃん!という簡単な話でもなさそうで不安と期待が半々ですね。
>フラッ太さん
削除菅が右で使われたのは、私にとっては謎のまま終わってしまいました。他は普通にベストメンバーでしたので、菅だけ特別扱いってことでもないと思うのですが、右でずっと窮屈そうでしたね。
ミシャは「まぁ浦和や広島で見てる感じだろうな~」と思う部分と、札幌の持ち駒なら必然とマイナーチェンジせざるを得ないのでは?と思う部分が半々ですね。ジェイの残留も決まったようですし、都倉と合わせて飛び道具として何らか活用しようとはすると思うんですよね。
というのは、2人とも干したら面倒そうな選手だから(笑)その辺はやばくなったら社長が関与しそうですし、ミシャが札幌で成功体験をそっくりそのまま持ち込んだり、凄く頑固な感じに振る舞うイメージはあまりわかないんですよね。