2017年3月7日火曜日

2017年3月4日(土)19:00 明治安田生命J1リーグ第2節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~逃げ場が作れないチャンピオン~

スターティングメンバー

 北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-5-2、GKク ソンユン、DF進藤亮佑、横山知伸、福森晃斗、MF石井謙伍、キム ミンテ、深井一希、兵藤慎剛、田中雄大、FW都倉賢、ジュリーニョ。サブメンバーはGK金山隼樹、DF永坂勇人、上原慎也、MF河合竜二、FWヘイス、内村圭宏、金園英学。前節仙台戦で菊地、宮澤が負傷、代役は進藤と兵藤。ヘイスが使える状態になったとのことで、パンチ力が足りない前線の切り札としてベンチ入り。ジュリーニョも開幕戦ではよく動けていた、宮澤が負傷した中盤でキム ミンテは欠かせない、となると、枠の関係でマセードを外さざるを得ない。今後も開幕戦のように、ウイングバックにあまり仕掛けを要求しないサッカーとなると、マセードには受難のシーズンになるかもしれない。
 横浜F・マリノスのスターティングメンバーは4-2-3-1、GK飯倉大樹、DF松原健、中澤佑二、ミロシュ デゲネク、新井一耀、MF喜田拓也、天野純、マルティノス、ダビド バブンスキー、齋藤学、FW富樫敬真。サブメンバーはGK杉本大地、MF遠藤渓太、扇原貴宏、中町公祐、前田直輝、FW伊藤翔、ウーゴ ヴィエイラ。開幕戦で負傷した金井に代わって左SBには本職CBの新井が入る。

0.共和制への移行


 オフに王様・中村俊輔放出でストーブリーグを賑わせたマリノスだが、開幕戦での戦いぶりや、モンバエルツ監督のインタビュー等を照らし合わせればその意図は明確だと思う。すなわち(サッカーの本質を考えると当たり前だが)攻守を一体として捉えたときに、自らは攻撃時も相手に隙を与えないことを重視した試合運びをし、逆に相手に隙ができたときにそこを素早く突く。そして大抵、隙ができやすいのは中央よりもサイド。ここにスピードがあり仕掛けられる選手を配し、手数をかけずにボールを送り込んでいく。
 となると典型的なボールプレイヤーで、ボールに触りたがり自由な動きを許容せざるを得ない中村俊輔はこうした志向に合っていない。「高額年俸や若返りといったフロントの思惑」という言葉だけでは説明できない、フットボール的な面でも妥当性のある判断だと思う。
 では札幌としてはどう戦えばいいかというと、開幕戦で攻撃のパンチ力が出せなかったからと言って、バランスを崩して前に出れば、それはモンバエルツの思うツボ。基本的には開幕戦と同様、我慢しつつセットプレー等に活路を見出す。ただマリノスが4-4-2で守備をするならば、2016シーズン同様にミスマッチを利用して、ある程度はマイボールの時間を作りたい。今のチームには前線にエメルソン、ダヴィのような単騎でボールを運べる選手がいない以上、得点するには重心を押し上げる何らかの仕掛けも必要になってくる。
(この項は試合前に書いています)


1.前半

1.1 マリノスがボールを持っている時

1)各駅停車 トリコロールライン


 札幌の守備は前節に引き続き5-3-2。5バック+3ボランチで中央をガッチリ固めているので、マリノスとしてはまずはピッチをワイドに使ってボールを動かし、札幌のブロックをスライドさせつつ中央に綻びを作りたいところ。
 ここで、マリノスのCBコンビはご存知中澤と、オーストラリア代表経験を持つ22歳のデゲネク。デゲネクは代表でサイドバックやボランチも務める…とマリノスのwebサイトにて紹介されているが、どの程度ボールを運べる選手なのかはわからない。
 このCBコンビの選手特性も考慮していると思うが、それ以上にマリノスは不用意、不注意なボールロストを避けることをチームとして徹底しており、下の図のようにボランチが札幌2トップの前に落ちることで、中澤とデゲネクが幅を取れるようにする。そしてCBの動きに連動してSBがポジションを上げ、CB→CB→SH(マルティノス、齋藤)という外外の経路でボールを循環させていく。
外→外で前進

2)カモメの翼を抑え込め


 ワイドに張る齋藤にボールが入ると、札幌は対面の石井が一気に距離を詰め、他の選手も連動してボールサイドにスライドしていく。ここで必ず足元にボールを収めて石井と正対し、縦にも内側にも仕掛けられる形でボールを受けられるのが流石日本代表といったところだが、この状況で密集する札幌DFのブロックに突っ込んで行けば、齋藤であっても一人でぶち抜くのは難しく、ボールロスト⇒札幌のカウンターチャンスとなってしまう。
 よって序盤は齋藤やマルティノスにボールが入っても、一発で勝負にいくのではなく、ボールを動かしてチャンスを伺う。マルティノスは何度か仕掛けていたが、基本的にはインサイドのタッチでボールを隠しながら縦に突破してクロスという形で、コーナーキックないしゴールキックでプレーを終わらせ、札幌にカウンターの機会を与えないようにしていたと思う。
ボールサイドにスライド

3)札幌の狙いとマリノスの逃がしどころ


 上記で「齋藤やマルティノスは序盤、一発で勝負に行かずボールを回していた」と書いたが、この時のボールの循環は下の図のように齋藤⇒新井⇒デゲネク、とボールが斎藤に渡った経路をまったくそのまま逆流していく。
 この、マリノスがボールを下げたところが札幌の狙いどころの一つで、ボールが下げられると中盤と前線の選手が一気に押し上げ、新井に対してはインサイドハーフのキム ミンテ、デゲネクに対しては都倉と当たりプレッシャーをかけていく。出しどころがないデゲネクは時にGKの飯倉までボールを戻すのだが、飯倉から逆サイドのCB・中澤に出そうとすると、ここはジュリーニョがチェックする。
 飯倉としては、中澤へのパスコースが切られた状況で、更に二度追いを厭わない都倉が迫ってくる。足元に自信のないGKならばここで大きく蹴りだしてクリアを選択するところだが、札幌は5-3-2なので下の図のように逆サイドのSB、松原のところはどうしても空く形になる。飯倉はしっかりここを見ており、ジュリーニョと中澤の頭を超えるキックでボールを逃がすことができ、札幌としてはCB2人には2トップでうまく追い込めているにも関わらず、ハイプレスがはまらないという状況になってしまう。
ボールを下げると押し上げていくが、マリノスは反対側のSBに逃がす

1.2 札幌がボールを持っている時

1)札幌にとって極めて重要な「セット」プレー ~蘇る近藤祐介の記憶~


 対する札幌は、前節の仙台戦同様、序盤から積極的にロングボールを使うことで前進を試みる。仙台戦と同様に、札幌の攻撃において準備がされているなと感じた数少ないパターンが、自陣ゴールキックを都倉に競らせて、セカンドボールを拾ってジュリーニョがサイドのスペースを突く形。
 都倉の高さは、札幌がマリノスに対して質的優位を確保できる数少ないポイント(中澤に対しても互角以上だった)ということもあって積極的に使っていく。
 これは単に都倉が強い、ということに加え、ゴールキックの場合、蹴るまでの時間にセカンドボールを拾える陣形を整備し、押し上げができる(文字通りの「セット」プレー)ということが、攻め込まれてバランスを崩しやすい札幌にとっては非常に重要な点である。押されている状況で、流れの中からロングボールを放り込む展開だと、都倉が競るまではいいのだが、セカンドボールを拾う兵藤やキム ミンテが押し上げる時間が作りにくい。
ゴールキックによる前進はよく考えられていた

 余談だが、前回J1を戦った2012シーズンも同様の光景が見られていた。この時のターゲットは近藤祐介で、近藤は元々DFを背負ったり高さを活かしたプレーが苦手、ということでサイドで起用されていたのだが、このシーズンの札幌のスカッドはワントップに前田俊介、トップ下に内村圭宏、サイドに近藤や高木純平、古田寛幸と軽量級の選手ばかりで、前線でターゲットにできそうなのが近藤くらいしかいない。
 ただ近藤はサイドハーフで起用される限り、システム上、相手のサイドバックの選手とマッチアップが多く、当時J1にはあまり強さのあるサイドバックの選手がいなかったことで、ならばフィジカルモンスターの近藤が競ればそこそこ勝てるということ、また今シーズン同様に当時の札幌もビルドアップが整備されていなかったチームだったため、とにかく近藤に当ててで攻撃機会を作ることが常套手段となっていた。

2)札幌の数少ないオアシス


 前節の仙台は3-4-2-1で守備時5-2-3、前に3人を出して守備をするシステムのため、札幌の3バックはボールを持ちづらい状況だったが、序盤のマリノスの守備は基本的に4-4-1-1に近い形、富樫とバブンスキーは縦関係で、バブンスキーは深井を見ている時間が多かった。
 マリノスはこの2トップに加え、両アウトサイドの齋藤、マルティノスの計4枚で札幌の3バック+アンカー深井に枚数を合わせてくる。バブンスキーが深井を見て、ボランチが札幌の兵藤とキム ミンテを見るので、このエリアでの枚数は揃っている。おそらくモンバエルツは札幌にビルドアップの仕掛けが乏しいこと、出所の福森を消されると苦しくなることをわかっていて、序盤は両サイドハーフを前に出してハイプレスを仕掛けてきた。これにより、福森は開幕戦同様にボールを持たせてもらえない展開となる。
 ただこの時、札幌はウイングバックの田中と石井、特に田中が低いポジションをとっていて、下の図のように丁度マリノスの4-4-1-1のブロックに対して曖昧なポジションで受ける(ボールの逃がしどころとして活用する)ことができる。加えて齋藤に比べ、マルティノスはプレスバックをあまり熱心に行わないので、田中は数秒の時間を得ることができる。
 ここで田中に対して松原が出ていけば、その背後をジュリーニョが突くことができ、その際のマッチアップはタッチライン際でジュリーニョvs中澤。この状況を避けるためにサイドに蓋をしたい松原はステイせざるを得ないので、田中にボールを逃がすことで札幌は幾分かはマリノスの勢いを削ぐことに成功していた。
両サイドハーフが福森と進藤に襲い掛かるが、低い位置のウイングバックに逃がす

1.3 いい守備がいい攻撃に繋がらない

1)ギアを上げていくマリノス


 札幌が予想通り強固なブロックを敷いてくることを再確認したマリノスは、徐々に攻撃のギアを入れ始める。立ち上がりは殆ど攻撃参加が少なかった両SBの新井や松原が、前方の齋藤やマルティノスにボールが入るとポジションを上げ追い越していくような動きを見せる。齋藤も新井の攻撃参加を引き出すべく、サイドで受けると新井が上がる時間を作ってから仕掛けを開始する。
齋藤やマルティノスに入ると追い越していく

2)ボール周辺の密度≒守備強度


 この時、マリノスの左サイドで齋藤にボールが入り、新井や天野が攻撃参加すると概ね下の図のような選手配置になる。札幌は、齋藤には依然として石井が密着マークし、石井が食い止める間にキム ミンテもダブルチーム気味に寄ってくる。これらの動きに連動して、中盤は深井と兵藤もボールサイドに寄せ、カバーリングポジションを取るとともに齋藤がカットインするコースを消す。齋藤がこのまま突っ込んできたとしても、もしくは近くの天野や富樫を使おうとしても、札幌はボール周辺に4~6人程度の人数をかけていることで、ボール周辺の局面における守備強度を確保することができる。流石の齋藤といえども、これだけ人数をかけられると突破は難しく、また周囲の選手に対しても狭いスペースでのプレーを強いることで札幌はボールの回収に成功する。
ボール周辺の密度を高める

3)回収した後は逃がさなくてはならない


 しかしここからが、この試合の札幌が抱えていた最大の問題点で、すなわち密集してボールを回収した後に逃がしどころを殆ど作ることができず、再びボールを奪われてしまうという場面が多発していた。
 ボールの逃がしどころ、とは端的に言えば相手選手がいないエリア。下の図(密度を高めて深井が奪った時の構図)を見てもわかるように、ボール周辺にはそれまで守備をしていた札幌の選手と、攻撃に関与していたマリノスの複数の選手が集まっている。ここで守備と攻撃が入れ替わる(トランジション)と、マリノスの選手は直ちに守備に切り替え、ボールを保持している深井に襲い掛かる。深井でなくとも進藤や石井でもいいのだが、複数の選手に寄せられてボールを運んだりキープできるだけの技量はないので簡単にボールを失ってしまう。

 スタジアムで観戦している際、上記の深井のようなシチュエーションでのパスミスやボールロストに罵声や溜息が飛ぶのを聞いていて良く感じることだが、そもそも自陣の密集地帯を細かいパスにせよ、ドリブルにせよ、狭いスペースでプレーしようとすること自体がセオリーに反している。かつてアーセナルのウィルシャーが黄金期のバルセロナ戦で一人でプレスをかいくぐった試合があったが、あくまでセオリーは、人が寄せてくるなら空いたスペースを使うこと。特に自陣のリスクをかけられない状況なら猶更である。

 では深井及び札幌の選手はどうすべきかというと、下の図のように、ボール周辺に選手が集まるほど、反対サイドにオープンなスペースができる。ここに走りこむ選手を用意し、素早くボールを出せば、いい守備からのいい攻撃…一気にカウンターチャンスとなるのだが、5-3-2で守っている札幌は、その構造的に反対サイドに走れる選手がいない。左サイドの田中は5バックのSBとして最終ラインにいる。兵藤は中盤を守っている。となると2トップの一角のジュリーニョだが、ボールの回収位置が低くなるとジュリーニョも下がってくるうえ、元々オフザボールでの走りには長けていない。
奪ったら直ちに逃がさなくてはいけないが
5-3-2で守備をしていると構造的に逆サイドを突ける選手がいない

 前半40分頃にマリノスの富樫がシュートを放った局面が典型的だったが、後ろの選手が奪ったところで前やサイドに出しどころがない、ボールをどうしていいかわからないうちに寄せられて再び奪われて、カウンターチャンスのはずが相手に決定的なシュートチャンスを与えてしまうということになっていた。

4)チャンピオンになれた理由 ~逃がせば攻めでも役に立つ~


 更に言うと、この点(カウンターに繋げられる選手を用意できているか否か)が2016シーズンのJ2を制した札幌の最大の特徴であり、武器となっていた要素。2016シーズンの札幌は前線に都倉、内村、ジュリーニョ(又はヘイス、荒野)といった選手を3人同時に起用し、攻撃時3-4-1-2、守備時5-2-3という陣形で戦っていたが、5-2-3の「3」に配された選手は、相手に攻め込まれた状況でも前線に残っていることが許容されていた。
 となると必然と後方は5バック+2MFという中盤スカスカの計7人で守っているのだが、端的に言えば、J2はそれでも「何とかなってしまう」。そしてこの状態で相手の攻撃を食い止めれば、前方には都倉、ジュリーニョ、内村の3人が待ち受け、3vs3や4vs3といった状況でサイドやDFライン裏にスペースができている。ここにシンプルに放り込むだけで、①ボールを逃がすことによる相手の二次攻撃の回避、②強力FWによるカウンター、を両立することができる。
7人で耐えて3人の個によるカウンター

2.後半

2.1 横山の2つのミスと進藤の判断


 耐えてマリノスが焦るのを待ちたかった札幌だが、後半開始2分、がら空きのニアゾーンに侵入したバブンスキーの鮮やかなボレーシュートで先制を許してしまう。
 この一連のプレーで気になった点がいくつかある。一つは前の項で書いたように、ボールを回収したときに逃がすという選択肢が頭に入っていないこと。
 下の写真、47:40にボールを回収したのは横山で、マリノスの浮き球で出されたミスパスを落ち着いて足元でトラップ。ここまではいいのだが、横山はすぐ目の前で相手に背中を向けている深井に出してしまう。一方、写真の上側を見れば、左サイドで田中の前方にはオープンなエリアがあり、また都倉が手を上げて裏に走ろうとしてる。前でもサイドでもいいのでとにかくボールを脱出させておけば、仮に相手に渡ってもスローイン等で仕切り直しができるので、ここで深井に出す必要性は全くなかったと思う。結果、前を向けなかった深井が石井にバックパス、石井が潰されて再びマリノスボールとなってしまう。
横山が回収するまではいいが、ボールを逃がせない

 それから下の写真、札幌がボールを失い、攻守が切り替わった直後の局面。ボールを回収したマリノスの新井からすぐさま左サイドへの齋藤へと渡ったところで、直後に齋藤からパスが出てバブンスキーのシュートが炸裂するのだが、齋藤にパスが出た瞬間、進藤は矢印の方向に5mほどポジションを移す。
 このとき、進藤の意図は①齋藤へのダブルチーム、②オーバーラップの構えを見せた天野をチェック、のいずれかだと思うが、①だとしたら、もっと齋藤に厳しく寄せなくてはならないが、実際はフラフラと移動するだけでダブルチームでマークできていない。②は、そもそも一番遠い位置にいる天野をこの時点で捕まえにいく必要はない。となると、この場合の進藤の最適解は、③ニアゾーンを守る判断に切り替えてステイする、ということだったと思う。このポジションを守っておけば、石井がかわされた場合や、オーバーラップした天野へのケアも両立できる。
横山のスライドが一番の原因だが、進藤はステイすべきではなかったか

 もっとも、齋藤⇒バブンスキーの流れが完璧であったため、仮に進藤がステイする判断に切り替えてもこのシュートは防げなかった可能性が高い。進藤の後方で、横山はスライドができておらず(恐らく富樫とボールしか見れていなかった)、ニアゾーンへの侵入を許した張本人なのだが、ただ進藤は出足の良さが持ち味ではあるものの、スペースを守る感覚をより磨いてほしいとも思う。

2.2 退路を断たれて必然の追加点


 トップスピードでペナルティエリア角に侵入してファーサイドにドライブ気味に突き刺すスーパーゴールだったが、スコアは残り40分で1-0にすぎない。まだ十分に挽回可能な状況だったが、ピッチ上でのプレーを見ていると、札幌の選手達は失点を「どうしようもないもの」として頭を切り替えてプレーできていたというより、これから反撃に出なくてはならないのに、猶更「どうしていいかわからない」という状況に陥ってしまったように見えた。
 この現象をメンタルの問題だと片づければ簡単だが、本質的には、ボールを持った時の準備や仕込みが不十分なため、マリノスのプレスを受けた際に札幌のボールホルダーには有効な選択肢が殆ど用意されていないということの裏返しだと思う。
 ビハインドを負った状況でもボールを効果的に前進させられない札幌に対し、マリノスはハイプレスの手を緩めない。前半同様に札幌のバックラインとアンカーの深井に人数を合わせて襲い掛かる。52分の富樫の2点目は、中盤で拾った兵藤から進藤へのバックパスが狙われたもので、アフターチャージ気味の微妙な判定はあったにせよ、

2.3 3トップという成功体験

1)金園投入でサイドで起点を作りやすくなる


 2点のビハインドを負ったところで58分に札幌は進藤→金園に交代。進藤は齋藤との接触時か、アクシデントがあったのかもしれないが、傍目に見ても心理的な落ち着きを失っているように見えたので予期しなくはない交代だったと思う。進藤の交代で開幕戦に続きキム ミンテが最終ラインに下がるが、馬力のあるミンテを中盤から排除して、中盤を1枚削った3-4-3ないし5-2-3の2ボランチにするというのは、増川や菊地が戻ってくるまでは今後も定番になりそうな采配だが、賛否が分かれるところだと思う。
 2016シーズンは前線にFW2人+ジュリーニョの組み合わせだと、ジュリーニョがトップ下+2トップという配置だったが、この日は右から金園-都倉-ジュリーニョと並ぶ3-4-3に見える陣形となる。
58分~

 これによりどのような変化が起こったかというと、まず札幌にとって良い点は、前線にFW3枚が並んだことで、マリノスはCB2人だけでは対応が難しくなる。特にジュリーニョのポジションが丁度ゾーンの間ということで、マリノスはSBも含めたDF4枚が中央に引っ張られる。するとサイドにはスペースができるようになり、札幌は前の3枚にボールが入ったところで、ウイングバックの田中と石井がポジションを上げていけば、サイドの高い位置に起点をつくりやすくなる。
4バックが中央を見なくてはならなくなるとサイドにはスペースが

2)守れないことの再確認


 ではFW3枚にしたデメリットはというと、昨シーズンから継続的に直面してきた守備の問題、3枚のFWの脇からボールを運ばれやすくなるという点。下の図のように、5-2-3の陣形だと基本的にまずFW3人は中央を固め、サイドに展開されるとサイドのFWが追いかけていく。
 しかし札幌が5-2-3に変更して前の人数が増えたのをみると、マリノスは中央でCBを3人のMFがサポートし、SBを押し上げる形で対抗する。途中投入された金園は前評判通り、守備意識の高いFWで、まだ体力が残っていることもありサイド経由で運ばれるボールについて行こうとするが、基本的に人間はボールよりも速く動けない。ボールの逃がしどころとなるSBが高いポジションになるとFWがケアすることは困難で、容易に前進を許してしまう。
中央で基準をずらされサイドから容易に運ばれる

2.4 突如気が抜けるマリノスと期待の左足


 65分に札幌はジュリーニョ→内村に交代。2点を失い3トップに移行してから、ジュリーニョは前半よりも多少仕掛けやすくなったが、ジュリーニョは味方を使うよりもどんどん仕掛けていくので、札幌は折角田中や石井が攻撃参加する形を作れたにもかかわらず、コレクティブとは程遠いオフェンスに終始してしまう。結果ジュリーニョは段々フラストレーションが溜まって気持ちが切れてしまったような様子で、無謀な仕掛けによるロストから更にピンチを招くことを考えると妥当な交代だったと思う。
 内村はそのままジュリーニョのポジション、3トップの左へ。相手の間でも、裏でもボールを引き出せる内村が入ったことで、田中が更に攻撃参加しやすい状況ができる。

 マリノスが64分、マルティノスを前田に変えたのは、疲労に加え、特にマリノスの右・札幌の左サイドで変化しつつあったパワーバランスを考慮したためだと思われる。しかし2-0となり徐々にマリノスはペースダウン。守備の開始位置がハーフウェーラインまで下がると、前田が投入されたマリノスの右、札幌の左サイドでは、ボランチに下がった兵藤が2トップ脇を起点にし、福森や田中の攻撃参加を促す。
 それまでとは打って変わって札幌のDFやボランチに時間とスペースをくれるようになると、札幌のストロングポイント(であったはずの)左の福森の攻撃参加が増え、田中や内村にボールが入るようになる。また前線には都倉と金園が待っているということで、田中と福森が積極的にクロスを放り込んでいくと、札幌は徐々に得点の匂いがしてくる。
一変して2トップ脇が甘くなる

 マリノスとしては、前田のプレスバックで田中の攻撃参加に対応しようとしたと思うが、チーム全体で運動量が落ちており、また上の図のように齋藤はプレスバックしてスペースを埋めないので、逆サイドからゴール前に斜めに入ってくる石井が空くことになる。齋藤が残っていたのは想定通りだったのかはわからないが、これだけルーズだと札幌にも徐々に攻め筋が出てくる。

 しかし73分、マリノスは左サイドを天野のオーバーラップで崩し、中央で(ファウルに見えたが)競り勝ったウーゴ ヴィエイラがクロスに合わせて決定的な3点目。その後も札幌は左サイドからの放り込みを続けるが、スコアは動かずに3-0で試合終了。

3.雑感


 2試合を見て、「耐えること」は一定水準でできている。ただ耐えたところから効果的に攻撃に移行ができていないことで、耐えることがただ負担となってしまっている。
 建設的な話をすれば、ボールを回収した直後に逃がすことを徹底すること、加えて何らかボールをキープすることで味方がポジションを整えるだけの時間を作ること、という考え方になると思う。後者については、勇気と準備次第でもう少しマイボールの時間を増やすことは可能だと思うのだが、個人で何とかできる選手…例えば「モノが違う男」がいればある程度、即効性が出てくるかもしれない。

6 件のコメント:

  1. 読みましたー( ^ω^)にゃんむるですー。
    試合観てませんー(´・ω・`)ショボーン 3月一杯は仕事で観れません。俺の開幕は4月8日予定です。
    前回と今回で今季のコンサのだいたいの感じがつかめました。すんなり試合観戦に入れそうです。
    やっぱり愛すべきポンコツのアイツが必要ですな・・・。
    あと、荒野は何処に行ったんじゃ?まだタマキン近辺痛いのか?頼むぞ。
    選手それぞれもJ1に徐々に慣れてくるし、巻き返し期待したいもんですな。
    次回も期待して待ちますー。
    んでわまたのー(・∀・)ノ

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    1. >にゃんむるさん
      コメントありがとうございます。
      さすがに4月にはヘイスは絞れてるでしょうね。三ッ沢では少なくともシュート練習では鋭いのを連発してましたし、マセードを留守番させてまで連れてきたので、もう出れるはずだと思うのですがね。

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  2. はじめまして、毎試合とても参考になります!
    5バックはそれなりに抑えることはできていたと見ていいんでしょうかね。
    なんか公式はバッチリ覚えたから出題必須の問題はある程度対処できたけど、
    応用問題となるととたんにあたふた、心理的にやられ始めたところで
    予想できないトリッキーな大問4(2)の出題で撃沈といったところでしょうか(笑)。
    この時期なので受験で例えると(笑)
    今シーズンも試合後はこのブログを拝見するのがほんとうに楽しみです。

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    1. >Unknownさん
      読んでいただきありがとうございます。
      いつぞやのコンサドーレと比較すると、意味わからん失点みたいなのはだいぶ減ったと思うと最低限のことはできている、と言えると思います。ただJ1も近年着実にボトムアップがされているので、今のままだと厳しいな、と言わざるを得ないかもしれません。
      これからもよろしくお願いします。

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  3. >「耐えること」は一定水準でできている。ただ耐えたところから効果的に攻撃に移行ができていないことで、
    >耐えることがただ負担となってしまっている。

    ここに凝縮されていますね。
    コンサの選手は人に出すというのが抜け切れていないのでしょうか。
    上手くスペースを見つける宮澤がいれば多少はましだったのかなとは思いますが、
    それでもボラではどうしても低めの位置になるので繋ぐことを考えるとトップ下に1人置いた方が…という気はしますね。
    変則3-4-2-1にして交代前提で3ボラのスライドを4人に増やすとか妄想してみましたが、
    少なくとも早坂レベルの走力がないと無理でしょうし…。
    5-3-2では攻撃が厳しいのでフラフラ動くヘイスを使って何とかしてもらうくらいしか今のところは思いつきませんね。

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    1. >フラッ太さん
      コメントありがとうございます。
      確かに近年はダイレクトなプレーが減りましたよね。社長はじめフロントの意向というか、前線にボールプレイヤーを中心に集めてきた編成の問題もあるのかもしれません。
      ヘイスが入って3-5-1-1みたいな形でしょうか。割とミンテや兵藤と相性は悪くないんじゃないかな…という気もしますし、何とか機能してほしいですね。

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