2019年11月29日金曜日

プレビュー:2019年11月30日(土)明治安田生命J1リーグ第33節 サガン鳥栖vs北海道コンサドーレ札幌 ~帰巣本能~

1.予想スターティングメンバー


予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)DF濱
MF駒井(右膝半月板損傷)
MF檀崎
*(負傷等で出場微妙)DF福森

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 いつの間にか通算成績は負け越し。それでも得失点差はかろうじてプラス4で、このまま維持できればクラブ史上最高成績だ。
 前線は、前節ベンチスタートのジェイのスタメン復帰を予想。後ろは荒野かキム ミンテの選択になる。「地元出身の若い選手を育てたい」とするミシャ。ジェイが「今年最も伸びた選手」に挙げた荒野は道民という訴求点があり、ミンテと同い年ながら若手扱いされている。それでもキム ミンテをスタメン予想としているのは、前節敗れていることと、鳥栖が仕掛けてくるであろうエアバトルへの対策をするだろう、との考えによる。福森は右足首に負傷を抱えているが強行出場の見込み。

1.2 鳥栖


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)GK大久保(清水エスパルスから完全移籍)
DF金井(名古屋グランパスから期限付き移籍)
DFパク ジョンス(柏レイソルから期限付き移籍)
FW金森(鹿島アントラーズから期限付き移籍)
FWチアゴ アウベス(全北現代モータースから期限付き移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DFニノ ガロヴィッチ(FCディナモ・ミンスクへ期限付き移籍)
DFカルロ ブルシッチ(契約解除により退団)
MF島屋(徳島ヴォルティスへ期限付き移籍)
FWビクトル イバルボ(V・ファーレン長崎へ期限付き移籍)
FWフェルナンド トーレス(現役引退)


 負傷者は(たぶん)いない。
 16位・湘南との勝ち点差は4。大失速のライバルを尻目にここ5試合で8ポイントを稼ぎ、安全地帯へと逃避成功した印象を受ける。
 そのサッカーの内容は、混迷のカレーラス期、再出発の金明輝監督就任直後を経て、”鳥栖らしい”キックランドラッシュ風味を採り入れたサッカーに原点回帰している印象を受ける。
 また、守備的に戦う場合は、SBに金井、中盤サイドに原、センターにパク ジョンス、トップに金森といった選手の起用により活路を見出している。勝ち点1を積めば、湘南の2連勝以外で残留が決まるゲーム。札幌の5トップ攻撃対策もあってこれらの選手を起用してくると予想する。

2.今期の対戦のおさらい

2019年6月22日(土)明治安田生命J1リーグ第16節 北海道コンサドーレ札幌vsサガン鳥栖 ~体は心と一体~

 鳥栖はクエンカと原、札幌は福森と菅。互いにサイドのキープレイヤーを欠く厚別での対戦。金明輝監督に交代後持ち直してきた鳥栖は1-4-4-2のゾーンディフェンス風味が強いやり方で札幌を迎え撃つ。札幌は鳥栖の圧力をジェイへのフィードでかわしながら鳥栖陣内に侵入し、福森に代わってキッカーを務めたルーカスのCK2本からの2得点で前半を折り返す。
 後半はペースダウンした札幌に鳥栖が反攻。鳥栖の左右非対称のアタックに人を巧く当てられない札幌は混乱するが、カウンターからチャナティップ・武蔵のコンビで追加点を奪って逃げ切り。

2019年11月24日日曜日

2019年11月23日(土)明治安田生命J1リーグ第32節 北海道コンサドーレ札幌vsジュビロ磐田 ~もっと、強くなろう~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー

 札幌(1-3-4-2-1):GKク ソンユン、DF進藤亮佑、宮澤裕樹、福森晃斗、MF白井康介、深井一希、荒野拓馬、菅大輝、アンデルソン ロペス、チャナティップ、FW鈴木武蔵。サブメンバーはGK菅野孝憲、DFキム ミンテ、MFルーカス フェルナンデス、中野嘉大、早坂良太、FW岩崎悠人、ジェイ。宮澤は9月のルヴァンカップ準々決勝(広島戦)以来のCB起用。細かい話では、荒野が左、深井が右でいつもと逆の配置になっている。
 磐田(1-4-4-2):GK八田直樹、DF小川大貴、大井健太郎、藤田義明、宮崎智彦、MF松本昌也、上原力也、山本康裕、藤川虎太郎、FWアダイウトン、ルキアン。サブメンバーはGK三浦龍輝、DF大南拓磨、MF田口泰士、荒木大吾、針谷岳晃、FW川又堅碁、中山仁斗。メンバーの傾向はここ数戦と同じ。田口は第26節以来のベンチ入り。4月の札幌戦以降、長期離脱中だった川又も復帰。
 その他プレビューはこちら。

2019年11月22日金曜日

プレビュー:2019年11月23日(土)明治安田生命J1リーグ第32節 北海道コンサドーレ札幌vsジュビロ磐田 ~哲学は根付くか~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌



×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)

 武蔵、進藤、菅、チャナティップ、ク ソンユンの5人が代表帰り。これまででは考えられない状況だ。菅は日曜日、武蔵は火曜日、チャナティップは金曜日と火曜日のゲームにスタメン出場している。10月のセレッソ大阪戦でソンユンを休ませた選択を考えると、チャナティップのベンチスタートもありうるだろう。

1.2 磐田


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DFファビオ(フリートランスファーでの加入)
DF秋山(名古屋グランパスから期限付き移籍)
MFエベリシオ(レッドスター・ベオグラードから完全移籍)
MF今野(ガンバ大阪から完全移籍)
FWルキアン(チョンブリFCから完全移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)DFエレン(双方合意の上契約解除後、アンタリアスポルへ移籍)
DF石田(レノファ山口FCへ期限付き移籍)
MF中村(横浜FCへ完全移籍)
FWロドリゲス(ディナモ・キエフへ完全移籍)
FW小川(水戸ホーリーホックへ育成型期限付き移籍)

 16位の湘南とは勝ち点差6。負傷中の川又と山田の復帰は好材料だが、前者は前線の軸になっているルキアンとどう使い分けるか。ミシャチーム相手に、サイドに計算のできる選手を置きたいとの考えがあるなら、山田はそちらでの起用があるかもしれない。

2.今期の対戦のおさらい

2019年4月28日(日)明治安田生命J1リーグ第9節 ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌 ~祭りの後始末~

 攻守ともに”色々と”遅く、ゆったりとした磐田に対し、開始6分でアンデルソン ロペスのスーパーゴールが炸裂して札幌が先制。前半はゴール前から人が減る(ボールを受けに下がってくる)磐田は殆ど脅威がなく札幌が終始優勢。ATにCKから進藤のヘッドで追加点。
 後半、磐田は負傷明けの川又を投入して福森サイドを狙う。札幌は絶好調のアンロペの負傷退場もあり1-5-3-2気味の布陣で引いてカウンターを狙うも、起点ができた磐田が後半は盛り返す。川又も負傷で退いてしまうが、ガス欠の福森狙いは継続される。アダイウトンの得点で1点差とするも時間が足りず札幌の勝利。

2019年6月19日(水)YBCルヴァンカップ プレーオフステージ第1戦 ジュビロ磐田vs北海道コンサドーレ札幌 ~嘘を嘘と見抜こう~

2019年11月10日日曜日

2019年11月9日(土)明治安田生命J1リーグ第31節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~偽りなきマイスター~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー

 札幌(1-4-4-2):GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、菅大輝、MFルーカス フェルナンデス、荒野拓馬、深井一希、チャナティップ、FW鈴木武蔵、ジェイ。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF宮澤裕樹、白井康介、中野嘉大、早坂良太、FWアンデルソン ロペス。ボール非保持を想定すると、予想通りの[1-4-4-2]。ボール保持時はこれまでのマリノス戦と同じく、左MF(チャナティップ)がシャドーに上がる[1-3-4-2-1]。この関係で、2トップは武蔵が右、ジェイが左の並び。宮澤に代わって荒野のスタメン起用は、ハイテンポな展開が予想される中で、その運動能力を買っているのだと予想する。
 横浜(1-4-2-1-3):GK朴一圭、DF松原健、チアゴ マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン、MF喜田拓也、扇原貴宏、マルコス ジュニオール、FW仲川輝人、マテウス、エリキ。サブメンバーはGK杉本大地、DF伊藤槙人、高野遼、広瀬陸斗、MF大津祐樹、遠藤渓太、FW李忠成。仲川が2試合ぶりにスタメン復帰し、現状のベストメンバーが揃った。
 プレビューはこちら

2019年11月8日金曜日

プレビュー:2019年11月9日(土)明治安田生命J1リーグ第31節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~勇気とバランス~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)


 マリノス相手に、2018シーズンから数えて6度目の4バック(ボール保持時はいつもの[1-4-1-5]に可変)採用が予想される。といっても、4バック(⇔5トップ変形)に対応できる選手が揃っているわけでもなく、メンバー選択の幅はいつもより狭まる。恐らくこの11人で決まりだろう。

1.2 マリノス


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF渡辺(左足関節骨軟骨骨折)
FWエジガル ジュニオ(左足関節骨折)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)GK中林(サンフレッチェ広島から期限付き移籍)
DF伊藤(水戸ホーリーホックから完全移籍)
MFマテウス(名古屋グランパスから期限付き移籍)
MF渡辺(東京ヴェルディ1969から完全移籍)
MF泉澤(MKS Pogoń Szczecinから完全移籍)
FWエリキ(SEパウメイラスから期限付き移籍)
OUT(夏マーケットでの放出)GK飯倉(ヴィッセル神戸へ完全移籍)
GK原田(SC相模原へ育成型期限付き移籍)
MF三好(期限付き移籍契約を解除して川崎フロンターレへ復帰)
MF山田(名古屋グランパスへ期限付き移籍)
MF天野(KSCロケレン・オースト=フランデレンへ期限付き移籍)
MFイッペイ シノヅカ(大宮アルディージャへ完全移籍)

 シーズン中に何度かマイナーチェンジを繰り返した末、今の形は扇原と喜田が中央に並び、ウイングが開く[1-4-2-1-3]に近い形。エジガルが負傷し、夏のマーケットで恐らく幾つか選択肢がある(お金もなくはないし、ネットワークも持っているはずなので)中でのエリキをチョイスには、そのチームスタイルが現れている。
 メンバーは恐らく湘南戦で負傷した仲川がスタメンに復帰するだろう。変えてくるとしたら、4月の札幌ドームでの対戦で手を焼いたルーカス フェルナンデスの対面となる左SBだが、普通に考えれば、高野の長期離脱中にスタメンを守ってきたティーラトンか。

2.今期の対戦のおさらい

2019年3月6日(水)YBCルヴァンカップ グループステージ第1節 横浜F・マリノスvs北海道コンサドーレ札幌 ~制約下での布石~

 シーズンで最初の「控えメンバーを試せる公式戦」。札幌はキム ミンテ、白井、ジェイ、マリノスは扇原、パク イルギュ、ティーラトンがこの時は控え扱いで、三好は日程の関係でスタメン起用。
 序盤、札幌は3バックでほぼ純粋なマンマークディフェンスで対抗する。マリノスは開いたウイングを起点に札幌のCB両端の選手の脇を強襲。こりゃあかんということで札幌は20分過ぎから4バックにし、後方にスペース管理の概念を採り入れる。49分にカウンター気味の展開からジェイの得点で先制するも、次第に運動量が落ちてからはマンマーク守備が通用せずマリノスペース。三好の同点ゴールは完全に置いていかれての得点だった。

2019年4月20日(土)明治安田生命J1リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~Homecoming Day~

 今度は札幌はスタートから4バック。マリノスはエジガル ジュニオが欠場で、三好のゼロトップという驚きの布陣。
 試合の主役は”本職”で起用してもらったルーカス フェルナンデスと、前にスペースがある展開なら滅法強いアンデルソン ロペス。開始3分でアンロペのロングドリブルから先制、福森のスーパーFKで札幌が早々と2点を奪うと、[1-4-4-2]の中央密集で守ってから常に高い位置で待っているルーカスを使ったカウンターを繰り出し、札幌はマリノスにカウンターの脅威を突きつけることに成功する。
 マリノスはこの時はウイングが中央に絞って裏抜けを狙うスタイル。幅をとらずに中央に入ってくる挙動は札幌にとっては捕まえやすかった。

2019年5月8日(水)YBCルヴァンカップ グループステージ第5節 北海道コンサドーレ札幌vs横浜F・マリノス ~忘れ去られし才能~

 再び控えメンバー中心の一戦。共にキープレイヤーを欠くが、そのダメージが大きかったのはチャナティップの代役に岩崎を起用した札幌。チャナティップに預けて5バック(この日は4バックだったが)→5トップの可変時間を稼ぐいつものパターンが成立せず、福森もいないので右で張るウイング(ルーカスではなく中野)を効果的に使えない。
 控え中心でも前線には遠藤、大津、李が並ぶマリノスは、中央偏重をやや是正し、ウイングが拡げてのハーフスペース狙いの攻撃から先制。札幌は後半チャナティップ、ルーカスを投入してポジティブトランジションの迫力は出るも、殴り合いからマリノスが連続得点し0-4の大差のゲームとなった。

3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌

※変更なし
コンセプト5トップで攻めて5バックで守る。相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持
(自陣)
1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持
(敵陣)
引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持
(敵陣)
「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持
(自陣)
1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブ
トランジション
前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブ
トランジション
自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

3.2 マリノス


コンセプト相手を敵陣に押し込み、即時奪回の”サイクル”を回して攻撃を続ける。
ボール保持
(自陣)
縦幅を目一杯使う。2CBと2MFが被らないポジションを取って中央でボール保持→ウイングに供給までがワンセット。マンマークで消されたら3トップへロングフィード。
ボール保持
(敵陣)
ウイングは幅を取り、対面の選手に縦を意識させ、SBやMFがインナーラップ。
ボール非保持
(敵陣)
(機会は多くないが)セット守備は[1-4-2-1-3]気味の布陣からハイプレスに移行。
ボール非保持
(自陣)
(機会は多くないが)ボールサイドにスライドするゾーン基調の守備。CBもスライドしてクロスを上げられる前にサイドで狩り切る。
ネガティブ
トランジション
相手ボールホルダーを速攻でケアしながら+2人でコースを切り、追い込む。
ポジティブ
トランジション
ウイングの前にスペースがあれば速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはマルコス ジュニオール、マテウス。クロスはインスイング。
セットプレー守備CK守備はゾーン主体。
その他memo相手がポゼッションらしいポゼッションをしている展開は稀。局面の大半はボール保持かトランジション。

4.想定される互いのゲームプラン

・本来はどちらも「相手を見るよりもいつもの姿であり続ける」チーム。そんなミシャが毎回4バックで臨む、アンジェマリノスへのリスペクトはかなりのものだ。2018シーズンの日産スタジアムでの対戦もそうだったが、ボールを保持するチームに対するミシャの考え方は「プレッシングで圧殺してボールを取り上げる」。それも難しいと判断しての今年4月の対戦は、札幌の(それまでよりも守備開始位置を下げた)ミドルゾーンからの守備がはまった格好だった。恐らく今回もこの点は踏襲されるだろう。

・マリノスは札幌のカウンター対策、4月の対戦で活躍したルーカスが位置する、札幌の右、マリノスの左サイドでの攻防は対策が必要だろう。但し、マテウス-ティーラトンのコンビで進藤に2on1を突きつける(そのままではいられないのでルーカスは下がるはず)ことが札幌相手に一番効果的なはず。ルーカスを押し込んでしまえば、札幌の4バック採用のメリットは1つ消える。マリノスはアグレッシブに先手を取りに行きたいところ。


5.想定される試合展開とポイント

5.1 同じ策が通用しなさそうな理由


 少なくとも最初はマリノスがボールを持つ展開になるはず。
 対する札幌の狙いは、4月の対戦時のチャナティップの先制ゴールと同じく、中央を固め、サイドの選手をマンマークで監視してからマリノスのDFが孤立した状態を狙うだろう。

札幌のイメージする中央切り~人を捕まえる守備

 が、問題は、①マリノスのウイング(マテウスと仲川)はサイドに開いてプレーするので、菅と進藤はかなりサイドに引っ張られ、この2人と札幌のCB2人の間には常時スペースを空けた状態でマリノスの攻撃を受け続けることが予想される点。
 もう一つは、②札幌は枚数をなるべく合わせたくて普段の形ではなく[1-4-4-2]で挑むとしても、マリノスはそれを見て形を変えてくることが極めて容易に予想される点。ここ2試合は湘南、鳥栖共に守備時は[1-4-4-2]だったが、マリノスは下のような、[1-3-3-1-3]とも言うべき形で返り討ちにしている。
想定されるマリノスの変形と札幌守備に予想されるスペース

 この変形により、[1-4-4-2]で守る相手が捕捉しづらい状況を作ってから、
マリノスの攻撃パターン(ウイングが横幅を作ってDFの間を狙う)

 突破力のあるウイングにボールを預けるまでが「ビルドアップ」。崩しのフェーズでは、ウイングのマテウスと仲川に主役が移る。マリノスはシーズン中に何度かマイナーチェンジをしている印象があるが、今の崩しのパターンは、札幌との今年の対戦でいうと3月のルヴァンカップでの対戦時に近い。バスケでいうところのローポスト制圧攻撃だ。(なおマイナーチェンジをすることは必要だと思う。Jリーグだと選手の組み合わせや入れ替えによって目先を変えることには限界があるので、シーズン後半には対策されてしまう)。

 特にマテウスは、サイドの狭いスペースでも強引に仕掛けることができる。”抜ける”ではなく”仕掛けられる”であり、負けることもあるがとにかく仕掛けることが重要だ。仕掛けによって、相手のDFはサイドを意識するし、また左利きのマテウスは左サイドで必ず縦に行くので、相手の最終ラインを押し下げる効果が期待できるからだ。
 どのようなシチュエーションであっても、マテウスにボールが入った時、足に不安を抱える進藤とのマッチアップは非常に重要になる。

5.2 どこまで展開を予測・準備できるか


 こうなった時に札幌はどうすべきか。
 ポイントは、原則(なるべく枚数を合わせる)を維持し、守備の安定を図りつつ、カウンターを狙う時のことを考えてその威力を削がないようにすること。となると考えられるのは、
(予想)マリノスが[1-3-3-1-3]になるなら札幌も2トップから2トップへ

 札幌も前3枚にし、その「+1」はチャナティップではなくルーカス。サイドで前を向いたときに1人で攻撃機会を作れるルーカスは高い位置に置いておきたい。
 この時、元々のマーク対象のティーラトンは完全に放棄することになる。こうなると、元々のマーク関係、ひいては守備時の役割が曖昧になり、オープンな展開になることも予想される。ただ札幌としては、5バックで撤退しないならこのような策しかないだろう。

 マリノスの変形に対して一応、他の策もある。
全員で下がる策もあるがミシャ自身の言葉を裏切ることになる

 ルーカスを最終ラインにまで下げるいつもの5バックだ。これなら、ルーカスにはマテウス、進藤はその内側を守れるので、マリノスが使いたいスペースを塞げる。
 しかしこの状態は、ミシャが嫌う「同数で守る事や背後を取られる事を怖がっている」状態。4バックの採用理由はまさにこれで、相手が3トップなら5人もDFはいらないからだ。

 この試合にタイトルがかかっているわけでもないし、どこかの社長が「何が何でも残留しろ」とも言っていない。ので、5バックの採用は考えずらい。となるとこの線は薄い。

5.3 両サイドの性質


 札幌がボールを奪ってからの展開について。これはシチュエーションを簡単に類型化できないので説明が難しいところがあるが、あくまで一例として「右から仲川が突っ込んできて札幌がストップした状態」から考える。
 図で表すとこうだ。
(仮定)マリノスの右サイド攻撃が失敗して札幌のポジトラ

 札幌が狙いたいのはこの展開。やはりティーラトンが高い位置を取る限り、こちらもルーカスをなるべく前に張らせておくとそれだけお釣りがくる。
 マリノスのネガトラは、かつての「パスの受け手制圧型」のゲーゲンプレスからこれもややマイナーチェンジをして、1人がボールホルダーを切り、2人目はパスコースを切る(つまり、そこまで強く人に当たらない)対応に変わっている。最終ラインは基本的にはリトリート優先。下図のシチュエーションなら、喜田と扇原で一次的な対応をするが、4バックは喜田に連動するのではなく戻って4枚で組み直す。チャナティップが喜田を剥がせれば札幌の期待は一気に膨らむことになる。
左で奪えるとトランジションから札幌得意のパターンに持ち込みやすそう

 こう考えると、マリノスは札幌のルーカスのカウンターを回避する意味合いでも、マテウスのサイドから攻めた方が良さそうだ。札幌の得意とする展開は、速攻遅攻共に福森・チャナティップの左→ルーカス・アンロペの右なので、札幌が左から攻撃を始めるシチュエーションは避けられるなら避けた方がいい

2019年11月4日月曜日

2019年11月2日(土)明治安田生命J1リーグ第30節 北海道コンサドーレ札幌vs名古屋グランパス ~赤ワインのように~

0.スターティングメンバー

スターティングメンバー

 札幌(1-3-4-2-1):GKク ソンユン、DF進藤亮佑、キム ミンテ、福森晃斗、MFルーカス フェルナンデス、荒野拓馬、深井一希、菅大輝、チャナティップ、アンデルソン ロペス、FW鈴木武蔵。サブメンバーはGK菅野孝憲、DF石川直樹、MF宮澤裕樹、白井康介、中野嘉大、早坂良太、FWジェイ。アンロペ、ルーカスをスタメンに、「開幕当初のメンバー」に戻してきた。名古屋がアンカーを置くシステムだったら他の選択肢もあっただろうか。
 名古屋(1-4-4-1-1):GKランゲラック、DF宮原和也、中谷進之介、丸山祐市、吉田豊、MF前田直輝、エドゥアルド ネット、米本拓司、和泉竜司、FW長谷川アーリアジャスール、ジョー。サブメンバーはGK武田洋平、DF千葉和彦、MF成瀬竣平、ジョアン シミッチ、伊藤洋輝、杉森考起、FWガブリエル シャビエル。フィッカデンティ監督得意の3センターの[1-4-3-2-1]ではなく、中盤底を2枚にした布陣。監督交代後スタメンだった選手のうち、シミッチ、太田、シャビエルを入れ替えてきたが、太田は体調不良?で欠場とのこと。

2019年11月1日金曜日

プレビュー:2019年11月2日(土)明治安田生命J1リーグ第30節 北海道コンサドーレ札幌vs名古屋グランパス ~次の電車はすぐそこに~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

1.1 札幌


×(非帯同、欠場確定)※特になし
×(負傷等で欠場濃厚)MF駒井(右膝半月板損傷)
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF田中(特別指定選手登録)
OUT(夏マーケットでの放出)DF中村(Honda FCへ育成型期限付き移籍)
MF中原(ベガルタ仙台へ完全移籍)
MF小野(FC琉球へ完全移籍)


 名古屋はアンカーシステムなので、予想は1-3-4-1-2。が、120分間を戦ったルヴァンカップからは中6日。試合後の2日間はオフで休ませたが、キーとなるトップ下のチャナティップらはまだ疲労が抜けていないようだ。その決勝戦を欠場した宮澤は29日の練習から完全合流したとの報道。深井の疲労を考慮すると、入れ替わる形でのスタメン復帰も予想される。他には、負傷を抱えている進藤の状態も気になるところだが。

1.2 名古屋


×(非帯同、欠場確定)FW赤﨑(累積警告4枚で出場停止)
×(負傷等で欠場濃厚)※特になし
*(負傷等で出場微妙)※特になし

IN(夏マーケットでの加入)DF太田(FC東京から完全移籍)
MF山田(横浜F・マリノスから育成型期限付き移籍)
FW深堀(ヴィトーリアSCへの期限付き移籍から復帰)
OUT(夏マーケットでの放出)DF金井(サガン鳥栖へ期限付き移籍)
DF櫛引(大宮アルディージャへ期限付き移籍)
DF菅原(AZアルクマールへ期限付き移籍)
MF小林(大分トリニータへ完全移籍)
MFマテウス(横浜F・マリノスへ期限付き移籍)
MF相馬(鹿島アントラーズへ期限付き移籍)
MF秋山(ジュビロ磐田へ期限付き移籍)
FW大垣(いわてグルージャ盛岡へ育成型期限付き移籍)

 負傷者は(たぶん)いない。期限付き移籍での放出が多いのは、マテウスと相馬は「来年戻すから」とのことだが、恐らく中堅~ベテランの選手は複数年契約中なのだろう。
 9/23のフィッカデンティ新監督の就任から1ヶ月が経ち、この間にリーグ戦3試合を消化し、戦績は2分け1敗。メンバーは和泉と長谷川アーリアジャスールのところが五分五分だが、基本的には「特徴がわかる(監督が把握している)選手」を起用している印象だ他、起用されていない選手でスタメン起用が考えられるのは宮原か。

2.今期の対戦のおさらい


2019年3月30日(土)明治安田生命J1リーグ第5節 名古屋グランパスvs北海道コンサドーレ札幌 ~責任の取らせ方~

 風間監督の名古屋は、序盤からその志向する「敵陣に相手を閉じ込めてプレーする」を実践すべく出足が鋭い。札幌のGKクソンユンから始まるビルドアップには、4~5人を投じたプレスで対抗し、マイボールはジョーボールを駆使してとりあえず札幌陣内に運ぶ。宮澤がCB起用の札幌はジョーボールへの脆弱性もあり序盤から名古屋の侵入を許す。
 札幌もロペス、チャナティップが前残り気味で序盤から撃ち合いの様相。全裸に靴下だけで殴り合うような展開から、17分にカウンターで、名古屋がシャビエルのゴールで先制。ポジショニング無視でボールに寄る風間スタイルに対し、受け渡し守備主体の札幌は再三マークが外れて決定機を招く。31分、39分に続けて失点し、前半だで0-3。勝負は決した。


良い子のみんな、そして次の勝利をもって、感傷に浸るのは終わりにしよう。

シャドーが開いて外々でビルドアップする。

左利きが多い。
クロスを上げるなら左にいると都合がいいが、それ以外は都合が悪い。

だから左の前田よりも右のシャビエルのサイドから前進したそうで、吉田経由での前進が多い。


色々探っているように見える。
大分戦ではアクション型の守備。

3.戦術面の一言メモ

3.1 札幌


コンセプト5トップで攻めて5バックで守る。相手の攻撃機会や攻撃リソースを奪う(守勢に回らせる)。
ボール保持
(自陣)
1-4-1-5や1-5-0-5の形からサイドのDFが持ち上がってシャドーやトップに縦パスを狙う。
ボール保持
(敵陣)
引いて受けるチャナティップに預けての打開。フィニッシュは右の白井の仕掛けから。
ボール非保持
(敵陣)
「ボールを取り上げたいチーム」との対戦を除いてはハーフウェーライン付近まで撤退。
ボール非保持
(自陣)
1-5-2-3でセットしてマンマーク基調で守る。最終ラインはなるべくスライドせず5枚を残しておく。
ネガティブ
トランジション
前線の3選手はなるべく下がらず即時奪回に切り替え。後ろはすぐに戻って人を捕まえる。
ポジティブ
トランジション
自陣で奪った時はトップ(ジェイ、アンデルソン ロペス)、シャドーのチャナティップを探して預けて速攻を狙う。
セットプレー攻撃キッカーはほぼ全て福森に全権委任。ファーサイドのターゲット狙いが多い。ゴールキックはなるべくCBにサーブしてからポジショナルなビルドアップを狙う。
セットプレー守備コーナーキックではマンマーク基調。
その他memo同数で守る3バック相手なら対人に強い1トップ2シャドーがターゲットで質的優位を活かす。ギャップのできやすい4バック相手ならWBへのサイドチェンジを狙う傾向が強い。

 3.2 名古屋


 分析対象は28節大分、29節仙台戦。
コンセプトリスク管理をしながらセーフティに前進し、ゴール前で個を活かして襲撃。
ボール保持
(自陣)
基本的にはボールを大事にする。ジョーボールの優先度は低い。SBと、サイドに流れてきたインサイドハーフで縦関係を作って外→外で前進。右の吉田-米本ラインが多い。ハーフスペースで待つシャビエルに預けるまでがセット。
ボール保持
(敵陣)
オープンな状態での太田の攻撃参加からのクロス。膠着した時は作り直すか、前田の突破。
フィニッシュは放り込みが多く、やや単調な印象。
ボール非保持
(敵陣)
相手GKが関与する展開にはハイプレス。ボールホルダーをマークする選手以外は中間ポジションに立つ。
セット守備はシミッチをアンカーにした1-4-3-2-1で敵陣センターサークル付近(要するにミディアムな高さ)にセット。1列目は中切り、サイドに誘導してインサイドハーフがスライドしてゾーン気味に守る。
意外にも前田よりシャビエルの方がプレスバックの優先度が高い。
ボール非保持
(自陣)
4-3ブロックが迅速にゴール前までリトリートして人を捕まえる。CBのスライドは許容されている。足りないところはアンカー(シミッチ)を下げて枚数確保。
時間を得るとシャビエルも右MFまで下がってくる。前田は前残り気味。
ネガティブ
トランジション
撤退優先で枚数が揃ったらボールにアタック。
ポジティブ
トランジション
ポジション整理を優先し、あまり速く攻めない。
セットプレー攻撃キッカーは太田。他はシャビエル、前田。全員左利き。
セットプレー守備※確認中。
その他memo新監督になり、トランジション等の判断基準を整理している印象。

4.想定されるゲームプラン

・名古屋はミシャチームがあまり得意としない、アンカーシステムに変わっている。今シーズンここまで、札幌はアンカーシステムの浦和(第2節)、ガンバ、神戸(第25節)戦では全てトップ下を置く1-3-4-1-2を採用している(但し、神戸戦では後半からの採用)。神戸戦と同じ1-3-4-2-1でのスタートもなくはないが、荒野トップ下の3連コンボだったガンバ3連戦の様相、そして名古屋のアンカー・シミッチのクオリティを考えると、恐らく(ミシャ的には)最大限の警戒をしてくるはず。リーグ戦でここ4試合勝ちがないことも、この判断に影響しそうだ。

ルヴァンカップ決勝戦を見ていたという名古屋。ジョーの言葉を真に受けるなら、恐らくまず札幌の、自陣でリスクを抱えながらボールを保持するプレーには注目すると予想される。これに対してはハイプレスでの迎撃が有力だ。
 
・そしてミシャの代名詞、5トップでのアタックに対する対処も入念に確認してくるだろう。ただ、札幌は[1-3-4-1-2]なら、いつもと比べて前線の枚数が1人減り、チャナティップはいつもよりも更に低いポジションからのスタートが多くなり、そして得意の5トップ布陣に変形するには武蔵やチャナティップがいつも以上に移動することになる。この違いは大きく、札幌は恐らく名古屋が思うほど遅攻主体にはならないと予想する。お互いに、後ろの枚数が多めの時間帯が多くなりそうだ。

5.想定される試合展開とポイント

5.1 名古屋のスカッドの特性とボール保持時の傾向

(1)右からの前進


 名古屋は主力に左利きの選手が多く、予想されるスタメンの6人を締める。かつて札幌も、福森、上里、ゴーメ君、ジュリーニョ、そしてセレッソの恋人・都倉が揃ったことがあったが、この5選手はそれぞれ適所に配されていた。前線は左利きが2人並んでいるが、都倉は右、ジュリーニョは左サイドが得意。残りの3選手はいずれも左サイドで起用されている。

 左利きの選手は、敵陣ゴール側を向いてボールを保持した時に下図の向きにボールを動かしやすい。
 丸山の正面に、ジェイ ボスロイド様が正対して威圧してきたとする。丸山は自分の身体の中心よりもやや左で、自然とボールを持つことになる。正対している時に、左足を巻き込むようにして丸山から見て右側にパスを出そうとすると、ジェイ ボスロイド様のお体にボールが当たってしまう。だから相手と正対した時は、自分の左方向にボールを流しやすい。
 前線のシャビエル。フィニッシュ(パス、ドリブル、シュート)の際に、最終的に左足でボールを扱うので、ボールを自分の進行方向左に転がして前進したい。だからシャビエルも前田も、下図のようなベクトルで進むことが多くなる。
左利きの選手は左向きに進みやすい

 前田はこのまま進んでいくと、ゴールから遠ざかってしまうことになる。これは是とするか否とするか、チームとしての考え方によるが、サイドからのクロスでフィニッシュなら、名古屋は太田という選択肢も持っている。

 この選手特性もあって、名古屋のビルドアップは、
右で作って左利きの選手が中央~左向きに展開

 右サイドで作って、左利きのブラジリアン2人が左足で、左方向を向きながらの展開が多い(左に流すのが自然だが、シミッチは裏をかいて右や中央に展開することもある)
 CB中谷⇒SB吉田⇒MF米本までのラインはミスが許されない。ここはサイドから運ぶことで中央でのロスト(⇒被カウンター)リスクを回避。しかし、米本から先にはサイドで進めないので、基本はシャビエルに預けての展開になる。

 右サイドで作ると、相手の人と意識は右に寄り、左サイドはオープン。名古屋の左、太田と前田は、共にクロッサー、ドリブラーとしてはクオリティがあるが、ビルドアップで力を発揮するタイプではない。この2人は主にフィニッシュへの関与が期待されており、特に太田のクロスはフィニッシュのメインパートだ。

(2)アンカーシステムの採用が有力な札幌のキーポイント


 札幌が[1-3-4-1-2]を採用するなら名古屋とは全てのポジションでマッチアップが揃う。これは非常に人を捕まえやすい反面、リスクもある。1on1の性質が強すぎて、誰かがやられたらカバーが難しく一気にバランスが崩れやすい。

 札幌の前線の[1-2]のところはそのメリットがわかりやすい。名古屋のCB2人と、中央の要注意人物・シミッチに人を当てやすい。問題はサイドで、米本とシャビエルがポジションを入れ変えてくる。菅が吉田に当たるとする。宮澤はシャビエルを優先すると、終着点の米本のマークはあいまいだ。
札幌は米本が曖昧になりそうだが米本はそこまで警戒しなくてもいいかも

 もっとも、米本がここで受けたとしてサイドを爆走できる選手でもない。名古屋はこの後の展開を用意しておきたいし、札幌は基本は、常にシャビエルとシミッチを空けないこと。準備期間が短い中で、このあたりの取捨選択が整理されているかもポイントだろう。

5.2 名古屋の最大の狙いどころ


 鳥栖時代のフィッカデンティは特段ミシャ式対策をしてきたという印象はない。なので、名古屋は5バックでミラーにしたりすることはなく、基本はいつもの形がベースになるだろう。
 ミシャ式の亜種ともいえる大分戦での名古屋の対応を考えると、恐らく札幌が自陣深くでボールを保持した時には高い位置からの守備で対抗してくる。対する札幌も、直近のルヴァンカップ決勝では川崎の圧力に屈しず、ボールを保持する(&相手の1stディフェンスを突破する)がキーワードになっていたので、この攻防が繰り広げられるシチュエーションは揃っている。

 名古屋は[1-4-3-3]の陣形で、ジョーがボールを追い、他の選手は中間ポジションを取る。例えばシャビエルは、宮澤と荒野の間。どちらにも行けるポジションを取って牽制する。前田も同様。
 問題はその後で、米本やシミッチ、和泉も同様の方針で対応するが、ミシャ式がそのオリジンな配置を取ると、中央の3選手は守る人もスペースも存在しなくなる
 対する札幌は、福森がいつものようにビルドアップにあまり関与しないポジションを取れば浮く。ここに浮き球のフィードなどでボールを供給できれば1発で名古屋の1列目を突破し、「福森がフリーかつ名古屋は(特に横幅の)枚数不足」という状況を作れる。タイミングを見て降りてくるであろう、チャナティップの存在も名古屋には悩ましい。
中間ポジションからのプレスを狙いたい名古屋

 だから名古屋が[1-4-3-3]のままでハイプレスをすることで、札幌のリスキーな局面を狙っているが、実は名古屋も(フィッカデンティが嫌いな)色々リスクを抱えることになる。それでも、恐らく勝ちがなく、また得点にも見放されているチームにとってここは重要な狙いどころのため、互いにリスクを背負った攻防が繰り広げられると予想する。

5.3 札幌の狙いどころ


 名古屋のセット守備の特徴は、シャビエルと前田の役割の違い。[1-4-3-3]でセットするが、最前列[3]の右のシャビエルは2列目までプレスバック。
シャビエルは積極的に「MF化」する

 逆に左の前田は、終始前残り気味で運用されている。大分戦では後半途中から、4バックに近い布陣にもなっていた。かつての「MSN」時代のバルサの、オフザボール時のネイマール役がシャビエル、メッシ役?が前田とも言える。
 日本人とブラジル人のステレオタイプなキャラクターを考えると逆のほうがいいように思えるが、これはポジティブトランジションの際の前田の突破力への期待が大きいのだろう。
左サイドは前田は戻らずMFがスライドする

 左SBの太田の起用も、どちらかというと攻撃重視の起用だ。サイドに蓋をすることを考えると、宮原・吉田コンビの方が安定するはず。太田が使われているのは、特徴がわかりやすいこと、そして直接ゴールを脅かせる必殺の左足への期待が大きいためだろう。そう考えると、風間監督=攻撃的、フィッカデンティ監督=守備的、という図式は必ずしも当てはまらないように思える。ザッケローニが再三強調していたように、全ては「バランス」なのだろう

 札幌はこの太田のサイドで勝負したい。かつて早坂良太が引き裂いた太田のサイドは、白井なら十分に勝負になるはず。名古屋の対応なら、チャナティップの得意とするバイタルエリアの中央~やや左はなかなか空きにくい。そして前田からのカウンターを狙っていることを考えると、サイドでの攻防…簡単に白井は勝負できるか、そして勝てるかがポイントになる。

用語集・この記事内での用語定義


1列目守備側のチームのうち一番前で守っている選手の列。4-4-2なら2トップの2人の選手。一般にどのフォーメーションも3列(ライン)で守備陣形を作る。MFは2列目、DFは3列目と言う。その中間に人を配する場合は1.5列目、とも言われることがある。
守備の基準守備における振る舞いの判断基準。よくあるものは「相手の誰々選手がボールを持った時に、味方の誰々選手が○○をさせないようにボールに寄せていく」、「○○のスペースで相手選手が持った時、味方の誰々選手が最初にボールホルダーの前に立つ」など。
ゾーン3ピッチを縦に3分割したとき、主語となるチームから見た、敵陣側の1/3のエリア。アタッキングサードも同じ意味。自陣側の1/3のエリアが「ゾーン1」、中間が「ゾーン2」。
トランジションボールを持っている状況⇔ボールを持っていない状況に切り替わることや切り替わっている最中の展開を指す。ポジティブトランジション…ボールを奪った時の(当該チームにとってポジティブな)トランジション。ネガティブトランジション…ボールを失った時の(当該チームにとってネガティブな)トランジション。
ハーフスペースピッチを縦に5分割した時に中央のレーンと大外のレーンの中間。平たく言うと、「中央のレーンよりも(相手からの監視が甘く)支配しやすく、かつ大外のレーンよりもゴールに近く、シュート、パス、ドリブル、クロスなど様々な展開に活用できるとされている空間」。
ビルドアップオランダ等では「GK+DFを起点とし、ハーフウェーラインを超えて敵陣にボールが運ばれるまでの組み立て」を指す。よってGKからFWにロングフィードを蹴る(ソダン大作戦のような)ことも「ダイレクトなビルドアップ」として一種のビルドアップに含まれる。
ビルドアップの出口ビルドアップを行っているチームが、ハイプレスを突破してボールを落ち着かせる状態を作れる場所や選手。
マッチアップ敵味方の選手同士の、対峙している組み合わせ。
マンマークボールを持っていないチームの、ボールを持っているチームに対する守備のやり方で、相手選手の位置取りに合わせて動いて守る(相手の前に立ったり、すぐ近くに立ってボールが渡ると奪いに行く、等)やり方。
対義語はゾーンディフェンス(相手選手ではなく、相手が保持するボールの位置に合わせて動いて守るやり方)だが、実際には大半のチームは「部分的にゾーンディフェンス、部分的にマンマーク」で守っている。