2025年6月16日月曜日

2025年6月15日(日) 明治安田J2リーグ第19節 北海道コンサドーレ札幌vsFC今治 〜スキャンの速度と精度〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

マジックナンバー・2025:

  • 現在Jリーグに在籍するクラブのうちJリーグ入会が最も新しいのが2025シーズンからの栃木シティと高知。次いで奈良・FC大阪(2023)、いわき(2022)、今治(2020)、八戸(2019)、沼津(2017)、鹿児島(2016)、山口(2015)…と、J3発足(2014)以降に入会しておりJリーグ的には若いクラブということになります。
  • これらのラインナップを見ても、地域リーグ時代から「人(経営者)」、「ビジョン」、「ハード」、「地元(行政・財界)」と一通りの資本が揃っており、その名を轟かせていたいわきと今治は後発ながらしっかり階段を登ってきていると言えるでしょう。栃木シティは0.5世代くらい遅れでそれらのクラブに近い道のりを辿りそうな雰囲気があります。
  • しかし今治は岡田武史オーナーが元々掲げていた目標は「2025年にJ1で優勝争いをするチームとなり、ACL優勝を目指す。その時にはFC今治から5人以上の日本代表選手を輩出する」というものだったらしく、当事者からするとJFLとJ3のところで思った以上に時間がかかった感覚なのでしょう。
  • もっとも町田も、2018年にクラブのオーナーとなった藤田氏が「2020年にJ1昇格を果たし、21年にJ1参戦。それ以降、24~25年にJ1優勝を争えるクラブに成長を遂げ、24年にJ1優勝、そして25年のACL制覇」と掲げており、単に2025というのが時期的に丁度良いから、という考えもあったかもしれません。なおいわきは出自が他のクラブと異なることもあってか「⚪︎年に〜〜」という言い方はしていないようです。

  • 2024シーズンの売上は13.5億円。J3では大宮(26.4億円)には及ばないものの松本(14.3億円)に肉薄し、J2でもいわき(14億円)、とほぼ同等、山口や水戸、熊本を上回る水準を確保しています。但しこれらのクラブと比較するとスポンサー収入の比率が高めなのはやや気になるところです。
  • 2025シーズンはJ2で18節消化時点で9位とまずまずの位置につけ、反面あまり目立つと夏のマーケットで選手を売る羽目になるのでは?と思っていましたが、2024シーズン時点でこれだけの予算があるなら、案外主力選手はとりあえずこの1年はキープできるくらいの契約になっているのかもしれません。


スターティングメンバー:



  • クラブワールドカップの開催及びJリーグから浦和が参加することで特例的に移籍ウインドウがオープンになりましたが(6/1-10)、和製ロマーノことカズ垣内記者のコメントの通り「予想以上に動く」移籍期間でした。
  • 今治は川崎からパトリッキヴェロンを期限付き移籍で獲得。川崎では出場機会に恵まれませんでしたが、天皇杯で勝ち上がったため6/7に延期された第17節で早速先発しており90分近くプレーしています。
  • スタメンはダニーロが累積警告4枚で出場停止でCB中央に福森。アンカーはここ数節は山田とヴィニシウスディニスの併用が続いています。GKは前節で37歳にしてJ2デビューを飾った植田。

  • コンサは待望の左利きCBの宮、シャペコエンセのエースFW(らしい)マリオ セルジオ、DFラインを一通りこなせる(らしい)浦上を獲得と、馬場(→柏)、キムゴンヒ(契約満了)の放出があったにせよJ2全体で見てもかなり積極的に動いたクラブだったと思います。
  • その宮は6/4から練習に合流しており期待通り左のCBでスタメンに。浦上とマリオは6/11に合流しましたが、浦上はいきなりスタメンで使ってきました。負傷者もかなり戻ってきたようで、パクミンギュは第10節(4/20vs藤枝)以来の出場。

2025年6月1日日曜日

2025年5月31日(土) 明治安田J2リーグ第18節 ベガルタ仙台vs北海道コンサドーレ札幌 〜足し算の末に何が残る?〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

競争環境は成長を誘発する?:


  • 一方で予算的には、ここ3シーズンJ2の仙台は年間25億円規模をキープと、いちおうJ1にいて紆余曲折あって50億円規模にまで膨らんだコンサの半分程度。直近では山形が26億円規模にまで成長しており、また新スタジアムによるブースト効果も控えているので今後5年くらいで特に注目の存在かもしれません。

スターティングメンバー:



  • 編成から混乱しまくっている(というか30年経っても人件費の使い方がわからない)コンサのことを考えると、システム1-4-4-2であればある程度どんな選手を集めるかコンセンサスがありそうな仙台の方がこの点では整理されているのかもしれません。このシーズンの出場状況を見ても、右ワイドとCBには割と各ポジション2人ずつというか競争関係が作られていそうに見えます。
  • この日はCBで全試合出場の井上が出場停止で代役に左利きDFのマテウス モラエス。DFは左の2人が右利き(菅田と石尾)であることも多かったですが、左SBには奥山でこちらも右利きの選手を起用しています。前線はエロンがベンチスタートで荒木と宮崎。

  • コンサは悪夢の鳥栖戦から出場停止のジョルディ→中島、田中克幸→木戸、スパチョーク(負傷で代表招集を辞退とリリース)→原と前線の3人を入れ替え。中盤は大﨑が12節(vs長崎)以来となる中盤センターでもスタメン復帰で、CBに西野、高嶺を左SBに回していますが、おそらく宮澤の復帰が大﨑のスタメン起用を後押ししたのだと思われます。

2025年5月25日日曜日

2025年5月25日(日) 明治安田J2リーグ第17節 サガン鳥栖vs北海道コンサドーレ札幌 〜競争と無謀のあいだ〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

田舎者の長い旅:

  • 2012シーズンから13シーズン守り抜いたJ1の椅子を手放した鳥栖。末期は川井健太前監督に対する風当たりが強すぎて正直なところ困惑していましたが、13シーズンも守り抜いてきたと考えるとどうしても成績でクローズアップされてしまうのは仕方ないのかもしれません。
  • ただコンサも鳥栖もパブリックイメージではお金がないチームということで括られていますけど、鳥栖は2015-18シーズンはCygamesの支援などもあり一時期はスポンサー収入だけで年間20億円以上を確保しており、豊田以外にもイバルボ、吉田、キムミヌ、権田といった選手をキープしていましたし、13シーズンの旅は景気の波があったことになります。監督が資金的にかなりのサポートを受けていたと言える時期と、監督の仕事としてはかなり厳しくなった時期とが混在していたのが現実でしょう。
  • コンサもミシャはコンサ史上群を抜いて手厚いサポートを受けた監督ではありましたが、鳥栖から数年遅れでコンサもある種、分不相応に選手をキープしていた時期を経てその後の縮小期を迎えるという似たサイクルを辿っています。コンサは縮小期に入ってすぐに降格してしまいましたが、鳥栖は大卒の若手選手の台頭などもあって数年粘ることができており、良くも悪くも監督も含め人材の流動性が高いのは鳥栖のカルチャーなのかなと思います。

  • あとはアカデミーへの投資も特筆すべき事項で、ちょうど2010年代というとポストユースの育成を大学にアウトソーシングする流れがかなり明確になってきて、2010年代の覇権クラブである川崎がその代表かつ成功例なのが大きいのか、またコスパ的にはアカデミーへの投資って本当に効率が良いのか?と疑問視する考えが広がったか、コンサもこの時期アカデミーにあまり投資していなかったと思いますが、気付けば鳥栖の環境(ピッチ、寮と食事、遠征機会、業務提携…)はコンサのような投資が滞っているクラブを余裕で追い越しています。
  • この手の施策は投資から成果が出るまで少なくとも5年〜10年くらいはかかるので、まだ評価は時期尚早でしょうけど、2種以下のライバルが多い激戦の北部九州に立地しているがゆえの必然の判断だったのかもしれません。

スターティングメンバー:



  • 鳥栖は当初システム1-4-4-2を採用しましたが開幕3連敗と出遅れ、3節では昇格組の今治相手にシステムのミスマッチを利用されたことも大きかったのか、小菊監督は4節からシステムを1-3-4-2-1へ変更。以降13試合は7勝4分2敗で勝ち点25の8位につけ、この期間だけなら自動昇格を争うチームに近いペースになっています。
  • 結果的には、開幕3試合が仙台、磐田、今治と現時点で上位にいるチームで新監督体制ではイージーではなかったかと思いますが、そこから修正して持ち直してきた手腕は流石といったところでしょうか。
  • メンバーは3バック中央にここ4試合で3度目となる今津を起用。あまり器用ではないかもしれませんが、パワーに期待といったところでしょうか。前線はスリヴカが軸で、西川、西澤、堀米、山田寛人、高校3年生の新川といった選手を組み合わせています。ワイドは左が新井、右はよりバランスを取る役割かもしれません。

  • コンサは前節試合中に負傷した中村桐耶が、左膝後十字靭帯部分断裂の重傷で左利きのDFが3人ともいなくなってしまいました。その中村に代わって入ったもののin-outとなった田中宏武の出来が、今後の鍵を握ることになるでしょうか。

2025年5月18日日曜日

2025年5月17日(土) 明治安田J2リーグ第16節 北海道コンサドーレ札幌vsカターレ富山 〜ボクシングムーブメントと持久性〜

 1.ゲームの戦略的論点とポイント

ユナイトから18年:

  • 2025年現在、Jリーグに「ユナイテッド」を名乗るチームは福島(2006年にFCペラーダ福島とユンカースがユナイト)、鹿児島(2014年にヴォルカとFC鹿児島)、高知(2016年にアイゴッソ高知と高知Uトラスター)、そして老舗のジェフの4クラブですが、ジェフは母体は古河電工なのでサッカーチーム的にはユナイトしているとは言えません。
  • ジェフ的な大企業の合弁によるクラブは、Jリーグ黎明期にはフリューゲルス(全日空と佐藤工業、6対4)、セレッソ(ヤンマーと日本ハムがほぼ同じ、他株主も)といった事例がみられ、イメージとしてはアメスポの共同オーナーみたいなものだったのかもしれませんが、オーナーシップの形態としてはやはり口を出す権利と機会の確保が面倒になってしまう印象です。鹿島や磐田が同様の運営体制だったとするなら黎明期にスタートダッシュを決めることができたでしょうか?アビスパのようにより分散的なクラブの運営が更に難しくなるのは言うまでもありません。

  • 冒頭のユナイテッドの話に戻ると、ユナイトしているけどユナイテッドを名乗らなかった(2007年)のが富山。このユナイテッド勢に関して言えるのは、合併するとリソースや資金力が単純に2クラブ分になるとはいかず、企業側が関与を縮小したいが故の手段とされることが日本では多いのでしょう。2015年からJ3で10シーズンを過ごし、今回2014シーズンぶりのJ2参戦となりましたが、合併発足時の期待感と比べるとかなり苦労してきた印象です。
  • なお合併時に公募していて「ユナイテッド」も候補だったと記憶している、クラブ名に関しては、この時期(07年)はまだシンプルなFCとかSCよりも、愛称があった方が良しとされる時代とその次の時代の境目だったように思えます。これより後発だとFC今治とか、東京ユナイテッドとか、FC大阪とか割とシンプルな名称が増えてきた印象があります。


スターティングメンバー:



  • 富山は前節右SBの濱が左SBに回って右に西矢。中盤センターに植田→竹中、左SHに吉平→伊藤、2トップは武と松田から2人替えてきました。全体的にコンディションを意識した選手起用の傾向を感じます。
  • コンサは左にスパチョークを入れて青木を中央に。

2025年5月11日日曜日

2025年5月11日(日) 明治安田J2リーグ第15節 いわきFCvs北海道コンサドーレ札幌 〜自由だが期待はするな〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

既にスタンダードを変えつつある:

  • 所謂コロナ後の5シーズン(2020-2024)でJ3からJ2への昇格を果たしたチームは順に、秋田・相模原(20)、熊本・盛岡(21)、いわき・藤枝(22)、愛媛・鹿児島(23)、大宮・今治・富山(24)、となっていて、このうち相模原、盛岡、鹿児島は1シーズンでJ3に逆戻り、J2経験がなく純粋にカテゴリを上がってきたクラブである秋田、藤枝といわきは今のところカテゴリを守り抜いています。
  • かつて熊本がロッソ熊本と名乗ってKyuリーグを戦っていた頃、年間予算が3億円くらいで元Jリーガーを複数擁し「九州のビッグクラブ」みたいに地域リーグファンから言われていましたが、いわきはその現代版というか(下のカテゴリ基準での)資金力だけでなく運営体制もしっかりしているので、簡単に下のカテゴリに戻ってしまう危険をはらんでいるクラブとはちょっと違うなというところを見せつけています。
  • 2023シーズンの予算規模は約10億円で水戸や栃木、山口と同等。2024シーズンの決算はそろそろ発表されるのでしょうけど、14億円程度の予算規模であるとのことで、また先日は小名浜へのスタジアム整備計画も公表され既にそうした経営面でのフィジカルスタンダードを変えてくれる存在となりつつあります。

  • 一方で迎えた25シーズンは開幕9試合で3分6敗、5節からは藤枝、今治、水戸、甲府、山形に5連敗で最下位に沈むなど苦しみます。4/20のvs富山で初勝利を挙げると、長崎、大宮に連勝、ここ2試合は秋田と愛媛に引き分けと好調を維持したまま連休後のこの試合を迎えています。
  • 編成においては例年出入りが多く期限付き移籍も積極的に活用しているのですが、24-25シーズンでの動きは10ゴールの有馬が大分へ、中盤センターでの起用が多かった西川潤がセレッソへ復帰(→鳥栖へ)、3バックの右、照山の夏移籍以降は中央を務めた大森がFC東京に復帰、GK立川が今治へ。照山も含めるとスタメンが5人入れ替わっており、GK早坂やエース谷村以外は色々な選手を試してきた序盤戦だったと思います。

スターティングメンバー:




  • いわきは前節と同じスタメン。GK早坂と3バック、右の五十嵐、前線の3人は12節から変わらず、これらの選手に加えて中盤センターの山下もほぼ不動の主力選手。コンサがボールを持っている時は谷村と熊田を2トップとする1-4-4-2でセットして、撤退時とボールを持った時は1-3-4-2-1に近い形でプレーします。ベンチ入りは1人少ない8人でした。
  • コンサはGKを4節のスタメンとなる菅野。西野が中盤センター、高嶺をCBとする形を10節以来に採用し、前線はこの週のトレーニングでも複数のセットを試していましたが、前節得点したジョルディと田中克幸のユニットを選択してきました。

2025年5月6日火曜日

2025年5月6日(火) 明治安田J2リーグ第14節 北海道コンサドーレ札幌vsジュビロ磐田 〜走る・戦う・規律を守る〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

エレベーターは悪なのか:

  • 磐田の2024シーズンの売上は48.5億円で過去最高を記録。規模的にコンサとほぼ同等ですが、コンサはシーズン途中に選手補強のためスポンサー企業から臨時的な支援があった上での金額で、それを差し引くと磐田の方がやや上かもしれませんが、磐田もJ2だった2023シーズンは42億円程度の経営規模なので、まぁほぼ同等くらいと見ていいでしょう。
  • 近年の磐田は19年-24年までの6シーズンでコロナ禍の20年(J2で6位)以外は毎年カテゴリを上下させており、よくエレベーターと揶揄されますがこれぐらいの動向なら経営規模としては一定は維持できるのが今のシステムなのかもしれません。これが例えば3年続けて下のカテゴリになると経営上の諸々の数値に響いてくるでしょう。
  • 23シーズンはオフの補強禁止処分の逆風を乗り越えてJ1復帰、24シーズンに臨むにあたりGK川島、FWペイショット、シーズン途中にクルークスと割とコストがかかりそうな選手を獲得して、そのスカッドをJ2に持ち込みつつ25シーズン前にはDF江崎、FW佐藤凌我とこのカテゴリを意識した働き盛りの選手を集めている印象です。
  • 一方で新監督がジョンハッチンソンということで、ここまでの戦いを見ると、やはりJ1から持ち込んだスカッドがそのまま適用できるかというとスカッド整理をしないと難しそうに見えます。この辺もコンサと似ていますが、江崎やGK阿部、期限付き移籍で倍井といった選手を確保する余地があったのはまだマシな方かもしれません。

スターティングメンバー:


  • 磐田は7節で好調ジェフに初黒星をつけるなど開幕7試合を5勝2敗の好スタート。しかし8節以降はここまで6試合を3分3敗とブレーキがかかっています。リカルドグラッサの離脱もありましたが10節以降、彼が戻っても勝ちに見放されている状況で、上位に踏ん張れるか重要な試合との位置付けになります。
  • それまでは割と固定メンバー気味でしたが、前節は前線を入れ替えており、トップに初先発となった渡邉りょう、DF登録の川崎が左ワイドで先発し1得点、ペイショットと倍井はベンチスタートでした。ターンオーバーの側面もあったかもしれませんが倍井がスタメン復帰、渡邉りょうは2試合連続の先発です。GKは開幕時は川島→5節から阿部→前節から三浦でこちらも2試合連続。

  • コンサはスタメン、サブ共に2試合連続で同じ。配置は前節の前半途中からの、高嶺が左SB、青木が中盤センターの配置を継続しています。

2025年5月4日日曜日

2025年5月3日(土) 明治安田J2リーグ第13節 モンテディオ山形vs北海道コンサドーレ札幌 〜日程が味方に?〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

2025年着工、2028年開業 まで待ちきれず:

  • 山形の2025年1月期単独決算は26億円、2023年のデータではトップチーム人件費が8.3億円。おそらく今も同程度と考えると、渡邉晋監督が2シーズン連続で掲げるJ2優勝という目標はなかなか高めです。直近3シーズンで6位→5位→4位と推移しており、長崎へ移籍したGK後藤以外はほぼ主力を残すことに成功したので”勝負の年”ではあるのでしょうけど、クラブ規模との釣り合いで言うとややアンバランスではあります(こうした目標は内在的に湧き上がってくるというよりは、内外の関係者から言わされている部分もありそうですが)
  • 2014年からアビーム社が経営に参画し会社設立、当時の事業規模が15億円前後だったようですが、コンサが2013→2019年で10億円→35億円に伸長したことと比較すると、ホームタウンの経済規模もあるのでしょうけどやはりスタジアム問題をなんとかできれば…という議論になるのでしょう。この点では利用料が高いみたいな指摘もあるでしょうけど、なんだかんだコンサはこの点でも恵まれています。
  • 水戸や秋田、甲府といったJ2の”持たざるクラブ”が公設を念頭に置いた動きをしている中で、150億円規模(おそらくもっと膨らむのでしょうけど)で民設を目指すとする山形の取り組みが成就すれば周辺のクラブにとって大いに参考となるでしょう。10年前にガンバのスタジアムができた際に「今後のモデルケース」と一部で言われましたが、その割には設計面で京都、資金調達スキームで広島が近いかなという程度で思ったほど広がらなかった印象です。あくまでガンバだからできるモデルであり、より規模の小さいクラブに適用するのはまた別の話かなと思います。

スターティングメンバー:


  • 前節から中3日、次節も中2日ということで山形は前線のディサロ、左ウイングの國分、中盤センターの高江といった選手がターンオーバーでベンチスタートと思われます。堀金は関東学院大学から新卒加入で初先発。
  • 一方で前節、富山相手にいつもの1-4-2-3-1から1-3-4-2-1に変えて戦っていたようで、トップ下の土居はこの影響か前節はベンチスタートで休ませる格好ともなっていました。GKトーマスは開幕戦以来のスタメン出場。

  • ここまで3バック(5バック)と4バックを使い分けているコンサですが、ここ数試合は4バックが定着しており、左SBの選手が2人離脱していながらも岩政監督が「主力に4バックの方が合っている選手が多い」と語っていたりで、山形の視点ではコンサが4バックの1-4-4-2でくることはそれなりに確度の高い予想だったのではないかと思います。
  • このコンサの1-4-4-2に対して、山形が3バック系ののシステムの典型的なメカニズムというか配置で人を並べると、やはり山形がボールを持っている時にポジショニングによって優位性というかフリーでボールを持ちやすい選手を複数作ることができます。
  • 加えて(ゾーンディフェンスということになぜかなっているけど)基本的にマンツーマンベースのコンサはミスマッチがある状況でうまく守れていないことは、直近ではvs甲府だったり(変則システムでしたが)vs大宮だったりでも示されているので、山形のスタッフがこの辺りの試合を見ていれば、渡邉晋監督が3バック系のシステムを採用する決断を後押しする要素は割と多めだったのではないでしょうか。

  • コンサは前線で初めてバカヨコとキムゴンヒがスタートから2トップ。いまいち信頼がなさそうな中村桐耶を左SBに置いて、高嶺が中央。青木は再び左に戻っています。

2025年4月29日火曜日

2025年4月29日(火) 明治安田J2リーグ第12節 北海道コンサドーレ札幌vsV・ファーレン長崎 〜悩みを共有する関係〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

社運とはすなわち金額:

  • スタジアムシティプロジェクトの全貌が明らかになり、24シーズン中のオープンを目指すと発表されたのがコロナ禍の2020年12月。
  • 20年以降の長崎はJ2で3位(人件費13.8億円)→4位(13.8億円)→11位(13.5億円)→7位(18億円)と推移し、この間20シーズン夏にエジガルジュニオ、22シーズンにクリスティアーノ、23シーズン夏にマテウスジェズスとマルコスギジェルメ…と継続的に選手への投資が続けられてきました。
  • そうして迎えた24シーズンは、カリーレ監督の裏切りという想定外の事態があったとはいえ、文字通り勝負の年だったのでしょうけど、リーグ戦を3位で終えホームアドバンテージを得た中でのプレーオフでは、ベガルタ仙台のボールを捨てるスタイルに見事にハマってピーススタジアムで涙を飲むこととなります。

  • そして25シーズンはキャプテンに山口蛍、最終ラインにエドゥアルドと関口、GK後藤といった選手を加えこれでもかという陣容でシーズンイン。どんだけ金あんねん、と思わされますが、当初700億円とされていたスタジアムシティに最終的には1,000億円を費やしているわけで、こうした選手人件費は誤差みたいなものなのでしょうか。
  • ただ25シーズンこそMFから後ろの選手を厚くしたものの、全体的に編成が前線過多というか、1トップベースなのにマテウス以外にもFWにファンマとエジガルジュニオが控えているというのは、率直に素人臭いお金の使い方をしている印象です。おそらく下平監督もそうしたやりづらさを抱えながら補強リクエストを出して、25シーズンは少しお金の使い方を変えてきたのでしょうけど、現代サッカーにおいて9番タイプを多く抱えても、むしろ監督が緻密なスタイルを志向するほど足枷になります。
  • 24シーズンもマテウスをFWにしてラスト5試合で5連勝でフィニッシュしましたが、仙台とのプレーオフではトップにエジガルを置いてマテウスと組ませるとボール非保持の際の連動性や可動域がイマイチで、一発勝負において機能しているとは言えませんでした。

  • 25シーズンは開幕6戦を4勝2分と好スタートを切ったものの、山口蛍を欠いた7節で藤枝相手に初黒星を喫してから1分4敗の5戦勝ちなし、前節はホームでいわきにシーズン初勝利を献上…という状態で大和ハウスプレミストドームに乗り込みます。
  • この間に対戦した5チームはいずれも3バック(5バック)でボールを持たせてくるスタイル。6節までは4バックのチームが多く、徳島や熊本は異なりますが割と前に出てきてくれるチームなので、案の定というか「J2らしいサッカー」に苦戦している状況でしょうか。

  • とまぁ、色々書きましたが、素人くさい編成なのは我らがコンサの方が先んじているのですが…そうしたある種の被害者である監督同士のマッチアップでもあるかもしれません。

スターティングメンバー:


  • 長崎は負傷者が多く、特に中盤の山口、山田、DFのエドゥアルド、前線の笠柳、松澤、エジガルジュニオといったスタメン級の選手を欠く状況。
  • 前線は前節ハットトリック以外にも獅子奮迅の働きだったファンマと、ミリにマルコスギリェルメ、左に増山。DFは右SBの関口をベンチスタートとして左右の2番手的な位置付けである米田。CBにはここ2試合は新井と照山でしたが、櫛引が9節以来3試合ぶりに右に入ります。この照山と櫛引のユニットの先発は昨年26節に1度のみのようです。

  • コンサは前線にバカヨコ→白井。中盤は宮澤・木戸を大﨑と、前節まずまずだった荒野に入れ替え、左はスパチョークがメンバー外で長谷川。前節体調不良で復帰の青木はベンチスタート。

2025年4月26日土曜日

2025年4月25日(金) 明治安田J2リーグ第11節 RB大宮アルディージャvs北海道コンサドーレ札幌 〜好き嫌い以前の要因〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

J3では無敵からの好循環に:

  • 8年前の7月以来となるNACK5スタジアムでの対戦。この時はマンツーマンなのになぜかアンカーにマンマークをつけない四方田監督のコンサを伊藤彰監督の大宮が90分間振り回していましたが、語り草となる福森のフリーキック2発で勝ち点1を分け合いました。ここからコンサは後半戦の巻き返しに繋げ、大宮は降格の憂き目に遭うこととなります。個人的にはマテウスがここからこんなに大成するというか、F・マリノスでの優勝に貢献するとは思いませんでした。
  • 18、19年はJ1昇格プレーオフに進出したもののその後低迷し、23年にJ3降格、24年にはレッドブルへの経営権譲渡と1年でのJ2復帰、と激動の日々を送る大宮。ピッチ外のビジネス面が整理されてくるとピッチ内にも徐々に波及するのでこのシーズンのダークホースと予想していましたが、ここまで10試合で6勝2分2敗で2位の滑り出しは上々と言ってよいでしょう。
  • ただ磐田、長崎、仙台、そして絶好調のジェフとの対戦がまだ未消化であり、昇格争いにエントリーできるかはここから、といったところでしょうか。

スターティングメンバー:



  • 大宮は4バックの1-4-4-2とした方が実態に近いのでそう表記します。前々節で退場処分を受けた杉本が復帰。CBは市原がいまいち(デカすぎる)期待に応えきれていない感がありましたが中央で先発復帰しています。右ワイドとFWが複数候補が考えられましたが、それぞれ初スタメンの安光と、4試合ぶりスタメンの藤井を選択しました。
  • コンサは試合前にパクミンギュの負傷離脱が発表され更にバックラインの台所事情は厳しくなります。左SBに高嶺をずらしてCBに西野。中村桐耶の本格化が(さすがにそろそろ)待たれるところですが、彼抜きで4バックだと後ろはこれしかない、といったところ。ただベンチに大﨑が復帰しており、4バックのCBとしてはアリなのかは注目ではあります。
  • そして青木も特にアナウンスがなくメンバーを外れており、中盤センターは宮澤と木戸。

2025年4月21日月曜日

2025年4月20日(日) 明治安田J2リーグ第10節 北海道コンサドーレ札幌vs藤枝MYFC 〜一旦は、躓くまでは〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

地理的な優位性?:

  • 2014シーズンにJ3オリジナルメンバーとして参入し、2023シーズンよりJ2を戦う藤枝。ここまで降格を経験せず、昨シーズンでいうとJ2の13位にまでクラブステータスを高めてきたのはなかなか健闘している印象です。
  • 2023シーズンの売上は約8億円と、秋田、金沢、群馬と共に10億円に満たなかったクラブの一つでしたが予算以上の成績をここ2シーズンは維持し、2025シーズンもここまで3勝3分け3敗で13位とまずまずのスタートでしょうか。
  • クラブの内部事情はあまりよく知りませんが、地理的には藤枝もとい静岡県中部には多少の土地勘があります。住む分にはそんなに便利な地域ではないかもしれませんが、サッカー的には近隣に数クラブあるというのは、例えば移籍加入する選手が家族の住環境を変えずにプレーできるとか、練習試合を組みやすいとかでプラスに働き、予算以上にクラブの強化になる面が大きいのかもしれません。いろいろな地方自治体が企業誘致等で必ず「地理的な優位性」みたいな文言を入れるのはちょっと笑っちゃいますが、サッカーにおける藤枝は割とガチで優位なのか?と思うことがあります。

スターティングメンバー:



  • 藤枝は須藤大輔監督体制ではほぼ一貫して3バック(5バック)の1-3-4-2-1。コンサからは23シーズン後半に田中宏武、24シーズン前半に中島が期限付き移籍で加入しましたがそれぞれ右ワイドとセンターFWで定位置を掴むには至っていません。尖った選手というかストロングポイントもウィークポイントも目立つ選手よりは、割とマルチな能力を持っている選手の方がより評価される印象はあります。
  • 20年前にヴァンフォーレ甲府でプレーし、札幌ドームでクラブの命運を左右するゴールを決めたことで有名ですが監督としては予想以上にバランスの良いチームづくりをする、今後2〜3年くらいのキャリアが楽しみな監督でもあります。
  • メンバーは、千葉がベンチスタートでシャドーに金子。他はいつものメンバー。

  • コンサは前節退場処分を受けた馬場が出場停止(2試合)。加えて試合前にその馬場と岡田の負傷離脱がリリースされた状況で、青木を中盤センター、左にスパチョーク、前線に田中克幸。特にシャドーまたはルーズFW的なスパチョークと田中克幸の併用はかなり意外でしたが、そこをカバーするために青木の隣に西野を置いたのかもしれません。
  • そして最終ラインは中村桐耶が期待を裏切る格好となった左CBに高嶺、左SBには復活が切望されるパクミンギュ。

2025年4月13日日曜日

2025年4月12日(土) 明治安田J2リーグ第9節 水戸ホーリーホックvs北海道コンサドーレ札幌 〜届かぬ足先が指す黄信号〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

結局GMって何すんの?:

  • コンサで現役を引退した西村卓朗氏が2016年から強化部長、2019年からGMを務める水戸。コンサの三上元GM(現サポーター)を見ていると、そもそもGMって何をする役割なのか?がよく見えなかったので、個人的には今回のGM退任劇には一定の理解があるのですが、水戸では西村氏がフットボールに関する戦略全般をグリップしているようで、これだけ明快に語ってくれるとGMってこういう役割なのね、と理解できます。

  • ↑上記の動画でも激戦の関東に立地する小規模クラブにとって、選手の発掘と育成がキーということで、戦略的でもあるしある意味では逆張り的な動きで差別化するとも考えられるかもしれません。例えば近年は他クラブが大学生に即戦力を求めるようになりましたが、以前はどちらかというと有望な選手を高卒時点で囲っていた際に、水戸は大学生に目をつけ塩谷や(在学中でしたが)パク・チュホのようなインターナショナルに活躍する選手の輩出に成功しています。
  • その後今のように国内の上位クラブがポストユースでの育成に消極的になると水戸のポジションはそちらに必然と移り、高卒選手を直接リクルートするのもあれば、コンサで言えば中島だったり、現在岡山で活躍する鈴木喜丈のような高卒3〜4年目くらいの選手に対してもかなり戦略的に動いているな、との印象を受けます。
  • 恒例の23シーズンの営業収入は約12億円。コンサの1/3〜1/4といったところですが過去最高額を更新しているとのこと。10億円を割るとリーグ最低水準で、そこよりは少し上のラインといったところでしょうか。
https://www.mito-hollyhock.net/news/p=35441/
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2023.pdf
  • となるとやはり行政の費用負担を念頭においた専用スタジアム建設に期待したいところですが経過は思わしくないようでかなりの長期戦となりそうな雰囲気です。ある意味では、ホームスタジアムの確保についてあまり計画的ではないまま参入したということで、Jリーグの発足から拡張期における象徴的なクラブなのかもしれません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%88%B8%E5%B8%82%E7%AB%8B%E7%AB%B6%E6%8A%80%E5%A0%B4

スターティングメンバー:


  • 水戸のシステムは1-4-4-2またはワイドの役割やプレースタイルを考えると1-4-2-2-2。GKは松原に代わり3試合連続で西川。CBは東京国際大学から新卒加入の板倉がここまでは最多出場で、鷹啄トラビスはJリーグ初先発という水戸らしい若いユニット。中央は大崎がキャンプ中の負傷から復帰し初スタメン。両ワイドは津久井が左でスタート。
  • コンサは高嶺が前節に続いて左SBの1-4-4-2。スタメン発表では1-3-4-2-1のような並びになっていて偽装っぽくはありました。前節は木戸がスタートで後半から田中克幸でしたが、この日は克幸をスタメン起用。また最終ラインは家泉がベンチスタートで、中村桐耶と西野が初めてユニットを組みます(追記:家泉が体調不良で直前に中村のスタメン起用になったとのこと)。

2025年4月6日日曜日

2025年4月5日(土) 明治安田J2リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vs徳島ヴォルティス 〜常勝のお面を被り直すとき〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

クライシスを経て過渡期へ:

  • 2024シーズンのJリーグで危機?混乱?に見舞われたチームといえば、J1では前半戦にコンサ、後半戦は鳥栖が盛り上げていましたが、J2では開幕10試合で1勝2分7敗、7節で吉田達磨監督が辞任した徳島が似たようなポジションでした。徳島は選手の突然の引退や移籍もあり、コンサと鳥栖のミックスのような状態だったかもしれません。
  • 徳島は監督と共に強化本部長の岡田明彦氏が退任し、後任は黒部光昭クラブアドバイザーが務め、監督人事は増田功作ヘッドコーチの昇格という展開になりましたが、増田監督は就任後31試合で15勝6分10敗で勝ち点51を稼ぎ、1試合平均だと勝ち点1.65を稼いでいます。
  • このシーズン5位、6位の岡山や仙台がだいたい1試合あたり1.7ですので、監督交代後の混乱期に清水、ジェフ、長崎とこのシーズン上位でフィニッシュしたチーム相手に1分2敗だったことも考慮すると、徳島のこの意思決定がどのように行われたのかは気になりますが、かなり”当たり”を引いた印象です。
  • コンサも徳島から1年遅れで三上GMが退任しサポーターに就任。こちらの後任は空席となるようですが、コンサはミシャ監督を引っ張ってオフに岩政新監督を招聘。なんとなくですがこの辺にクラブのカルチャーや価値観が現れる感じがします。岡田本部長が去っても徳島はフットボール的に立ち返るところがあるのなら大成功でしょうし、コンサはまだそれがなく、監督人事もピッチ上のこと以上にネームバリュー(三上サポーターの表現では「コミュニケーション能力」)の方がまだ大事なのでしょう。
  • 片方は監督が元日本代表選手選手で強化担当が選手としては無名、もう片方は逆に監督が選手としてはそこまで目立たない人で強化担当が地元出身の元日本代表選手。このあたりも対照的ですが、黒部強化本部長の手腕が見えてくるのはまだこれからでしょうか。

  • 2023シーズンの徳島の売上は約20億円。J2降格1年目の2022シーズンから2億円程度減少していますが、主力選手のOUTが複数あったのでその違約金による変動の影響はあるのかもしれません(ただし「その他収入」は両年とも2億円台でものすごく変動しているわけではないですが)。
  • 予算規模的には今のJ2で2.5番手〜3番手グループになるかと思いますが、2025シーズンはここまで7試合で3勝3分1敗で6位のスタート。長崎には敗れたものの、仙台、山形、そしてRBの名を冠して好調の大宮相手に計2勝1分で乗り切っており、十分にプレーオフ圏内を狙えそうな状況にあります。
  • オフの動きはoutが7ゴールのブラウンノア賢信とCBの森がJ1のクラブへ移籍したのと、柿谷の引退が目立ったところで、inが左WB/SBの高木友也、CBの山田奈央と山越、前線にはジョアンヴィクトルとルーカスバルセロスといった外国籍選手で補っています。ただスタメンを見ると、杉森、杉本、渡、児玉といった馴染みのメンバーが引き続き主力を張っているようです。

スターティングメンバー:


  • 徳島はどちらかのサイドの選手の高さを変えることで、試合中に3バックの1-3-4-2-1と4バックの1-4-4-2を使い分けます。通常はボール保持時に1-3-4-2-1または1-3-2-5で、4バックで守るチーム相手にギャップのできる形からスタート。ボール非保持の際は1-4-4-2ベースでスタートすることが多い傾向にあります。この日のメンバーは前節から右シャドー/右サイドハーフの役割に重廣→杉森。
  • コンサは木戸を中央に入れて、高嶺を左SBに起用する前節の後半を意識した配置ですが、あまり機能していたようにも見えない形を継続してきました。左CBは中村桐耶→西野。

2025年3月29日土曜日

2025年3月29日(土) 明治安田J2リーグ第7節 北海道コンサドーレ札幌vsヴァンフォーレ甲府 〜プロだから(笑) わかるから(笑)〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

大塚真司監督のヴァンフォーレ甲府:

  • 甲府は2024シーズンの7月2日に篠田監督→大塚真司監督へと交代し、大塚監督就任後は6勝2分8敗の戦績。篠田監督は三平をトップ下、アダイウトンを左に置く4バックの1-4-2-3-1を使っていたようですが、最終的には甲府お馴染みの1-3-4-2-1に落ち着いて(リベロに山本英臣の登場もあったりして)、大塚監督体制下でも基本的にはそこが踏襲されているようです。
  • オフの動きとしては関口が長崎に引き抜かれたことと、なんだかんだ14ゴールとまだまだ動けそうなアダイウトン、そしてウタカ、ファビアンゴンサレスといった前線の外国籍選手と契約非更新、inは復帰の小出や平塚といったJ2では計算できそうな選手を加え、また柏から期限付き移籍の土屋がここまで出場機会を獲得している状況のようです。

  • 何試合か見たところ、基本的な戦い方としては我らが岩政監督の言葉を借りれば「J2らしいサッカー」…ゴール前に5バックを並べてスペースを埋め、更にその5人のDFがあまり動かなくても良いようにその前にも4人を並べて5-4のブロックを作り、まず簡単に失点しないことを優先するスタイルで、以前の印象とあまり変わってなさそうです。
  • チームによってはホームではもう少しアグレッシブなやり方に変えてくるチームもありますが、甲府は小瀬での試合であっても相手にボールを持たせて守備から入る傾向が見られます。
  • ただ、このスタイルであればそれこそアダイウトンのような馬力があり前方のスペースに1人で突進できる選手を起用するとか、もしくは1トップと2シャドーが頑張って走って高い位置からpressingを仕掛けて相手のミスを誘うとか、何らか「前に出る手段」というか、飛び道具的なものを持っていたいところですが、現状そうした武器は見当たらず、となると毎試合徹底してロースコアに持ち込むことが勝ち点を拾っていくための戦略になりそうだな、との印象です。

  • また5節のvs磐田では4バックの1-4-4-2っぽい布陣を採用しています。ただしメンバーは普段の1-3-4-2-1の時とほぼ変わらず、本来左WBの荒木が1列下がって左SB、3バックをそのまま右にスライドさせて、本来右WBの宮崎が1列上がって右SHのような役割になるものでした。
  • これについては大塚監督は「磐田の前線が1トップ+両ウイングの3人構成なので常に後方に5人、5バックを残す形にする必要がないと考えた」みたいな説明をしており、この考え方からはマンツーマン基調というかマーク関係や数的関係をはっきりさせることを割と重視しているのかな、と感じました。
  • もっとも磐田は3トップと言いつつ、SBや中盤センターの選手がハーフスペースに何度も突っ込んでくるので、その度に甲府のマークを担う選手(中盤センターやサイドハーフ)はプレスバックを強いられ大変そうというか、あまり効率的な守り方には感じませんでしたが(最初から5バックでスペース封鎖した方が効率いいのでは?)。

  • また恒例の23年度の売り上げは約20億円。この時は山形を下回り、岡山、長崎、徳島あたりとほぼ同額といったところ。ただしこの年はACLへの参加が収入増に貢献しているとのことで、本来のクラブ規模としてはもう少し小規模だと認識すべきでしょう。
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2023.pdf

スターティングメンバー:



  • 互いにミッドウィークにルヴァンカップを消化しましたが、甲府はホーム小瀬に藤枝を迎え、完全ターンオーバーながら2-1で勝利しています。コンサについては割愛します。
  • 甲府はキャプテン小出が欠場で、孫を左から中央に回して左には初先発のエドゥアルド マンシャ。中盤センターは中山が前節早々に交代した影響で、遠藤光と平塚のユニット。
  • コンサは「勝っているチームは変えない」を徹底して、代表帰りのスパチョークを早速先発起用、中村桐耶は7日間で3試合目ですが、カップ戦では途中から休ませたので大丈夫との判断というか、4バックをするにも左利きのCBができそうな選手が他にいないのでどうしようもないのですが。GKは福島相手に6失点の影響か?菅野ではなく児玉がベンチ入りしています。

2025年3月27日木曜日

2025年3月26日(水)JリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 第1回戦 福島ユナイテッドFCvs北海道コンサドーレ札幌 〜悪意も嘘もないが〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:



  • 公式戦では初対戦となるカード。福島については殆ど予備知識がない状態でこの試合を見ています(調べるまでかつての福島FCとの関連もわかっていませんでいた)。
  • 一応、寺田周平氏が監督を務め、川崎フロンターレから若手選手を受け入れている程度は知っていましたが、どんなプレーをするのかはほぼ初見ということでご容赦ください。リーグ戦のメンバーからはFW樋口、前線(ウイングというかシャドーか?)の清水、中盤の城定、針谷、狩野、DFの藤谷、山田、鈴、GK吉丸…といった選手が軒並みベンチスタートまたはメンバー外で、コンサと同じくらいメンバーは落としているようです。
  • コンサは3日前のリーグ戦から中村桐耶以外のスタメンは入れ替え。右SBができる選手が現状髙尾しかいないので、必然と3バックっぽいメンバー、配置になります(岩政監督はこれについて明確に3とか4とかではないから無意味な話、としている感がありますが)。負傷等で離脱していたパクミンギュ、中島、菅野はこの試合から公式戦復帰で、来シーズンからの正式加入が発表された佐藤が公式戦初スタメン(天皇杯では途中出場経験あり)。

2025年3月24日月曜日

2025年3月23日(日) 明治安田J2リーグ第6節 愛媛FCvs北海道コンサドーレ札幌 〜「ポケットをとる」に至るまで〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

時は来た のか?:

  • 愛媛FCの2024シーズンは、38試合で勝ち点40を確保し17位でフィニッシュ。自動降格の憂き目にあった18位の栃木SCが勝ち点34でしたので、数字上は差があったように思えますが、愛媛は8/18の第27節で大分に勝ってからは11試合勝ちなしと、特に主力選手が抜けたわけでもないのに大きく失速してシーズンを終えます。
  • 6月末に22節を消化した時点では勝ち点31で、当時6位のジェフと勝ち点5差につけていたことを踏まえて石丸監督との契約更新に至ったかと思いますが、25シーズンも開幕5節で唯一の勝ちなしと苦しい状況が続きます。
  • オフの選手のin/outではスタメンCBの森下と小川が揃って鳥栖へ。FWで一番出場していた松田力がフリートランスファーで富山へ移籍したのは、クラブ側に更新の意思があったかはわからないですが、年間売り上げが8.6億円、トップチーム人件費2.2億円(23年J3での数値)のクラブとしては、数字が下がったベテランにはシビアにならざるを得ないかもしれません。
  • 一方で期限付き移籍を利用してJ1のクラブから計7人の選手を迎え入れており、特にここまでスタメンで多く起用されている左SBの森山(←福岡)、右SBの福島(←湘南)、右ウイングの甲田(←名古屋)といった面々を見ると、戦術的にキーになるサイドバックやウイングは期限付き移籍で補ってでも指向するスタイルで勝負するという意図は見受けられます。その意味では割と監督へのサポート体制みたいなのは資金面以外では整っているのかもしれません。
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2023.pdf


スターティングメンバー:


  • 5節を消化して未勝利ということで愛媛はシステムもメンバーは変えてきてました。一応、4節のvs今治では相手と同じ1-3-1-4-2のシステムを採用しましたが、直近2シーズンも含めほぼ4バックベースのシステムでした。この日は3バックというよりも両ワイドが黒石と森山なので5バックの1-5-2-3と表すのが実態に近いでしょうか。
  • その5バックの中央に名古屋から期限付き移籍の吉田温紀。CB左には同志社大学から加入した金沢。中盤センターは中京大学3年生の武藤を残して、ここまで5試合連続スタメンの深澤に変えて谷本。前線の3選手はそのままスタメンに名を連ねています。窪田と甲田はウイングのプレーが得意かというと微妙なので、シャドーの役割としたのは適切かと感じました。

  • 対照的に、コンサは「勝っているチームは変えない」を実践して、スタメンは代表招集中のスパチョークを除けば前節と同じ。長谷川をスパチョークのところに入れ、サブに初のメンバー入りとなる白井が入っています。

2025年3月16日日曜日

2025年3月15日(土) 明治安田J2リーグ第5節 ブラウブリッツ秋田vs北海道コンサドーレ札幌 〜基準の再設定〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

まぁまぁ…:

  • 「まぁまぁ、まだ38節のうちの4節だから…」とSNS上などで熱烈サポーターたちをなだめる作業がこんなにも多発するとは予想外でした。私はこれは偽りなく「まだ4節」だと思っているのですが、すでに勝ち点を10以上積んでいるチームもあるとなると心配になるのもわからなくもありません。
  • 対するブラウブリッツ秋田は4節を消化しても未だホームゲームで戦っておらず、5節がホーム開幕という日程を強いられています。まぁ秋田で2月にサッカーできるわけねーべ…って感じなので当然ですが、最終節(11/29)もアウェイ開催と、アウェイで始まりアウェイで終わる日程を組まれているんですね。
  • 普通は開幕戦か最終節どちらかが、競技としての公平性だったり集客条件を考慮してホーム開催で組まれるはずなのですが、このあたりもシーズンが長くなると春(冬)開幕、冬閉幕の日程では現実問題難しいところはあるな、と思わされます。もっとも秋田の最終節は富山なのですが…

スターティングメンバー:



  • 前年J2で10位となった秋田のスカッドは割と主力選手が残った印象ですが、CBの河野がジェフに、喜岡が山口に移籍し、DF中央では神戸から育成方期限付き移籍の尾崎と、金沢から加入の井上がここまでは起用されているようです。
  • 前節は右SHに新潟から加入の長谷川、中盤センターに諸岡を起用と2人変えてきましたが、この日は長谷川を右SBに入れて村松を左に回し、右には畑を戻してきました。村松は北九州と長崎でCBはやっていましたが、左SBというのはあまり経験がないようです。本来左の才藤がおそらく負傷で欠場なのでしょうけど、ベンチに8人しか入っていないこともあって他にも負傷者がいる状況だと思われます。
  • コンサは前節から田中宏武→岡田、出間→青木でメンバー発表の並びではスパチョークが右シャドーかと思われましたが、青木が左に入る1-4-4-2のような形でした。前節脳震盪で交代した菅野を欠くGKは小次郎で、児玉も何らか負傷かと思われましたが単純に序列として小次郎を評価しているようです。

2025年3月9日日曜日

2025年3月9日(日) 明治安田J2リーグ第4節 北海道コンサドーレ札幌vsジェフユナイテッド千葉 〜差し込む光の正体は〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

近年のご様子は…:

  • リーグ戦では内村圭宏が伝説を作った2016年11月12日以来の対戦。ただカップ戦では昨年8月に天皇杯で、お互いターンオーバー気味でしたが対戦しておりジェフが品田のフリーキックを守り切って勝利しています。印象としては、ミシャみたいにやることがわかりきっていると小林慶行監督体制の強みが出る、といったところでしょうか。

  • ジェフは23年の売り上げは25億円前後。wikipediaには更に遡った時期での収支が表に乗ってますが、2007-2008に「その他収入」…要するに阿部勇樹など主力選手を売った時期に一時的に売り上げが増えた以外は一貫して25億円前後〜30億円を超えないくらいの収支で推移しています。このあたりの財務コントロール?はめちゃくちゃ効いてるなという印象です。
  • 一方でジェフが最初にJ2に足を踏み入れた頃はJ3もなく、予算5億円程度のチームもまだあったと思うのですが、今の時代に予算25億円というとJ2でもパワープレーができる規模ではなくなっている。また仮にJ1に戻れたとして、かつてのジェフのポジションに返り咲くには予算規模として50億円くらい必要になっているので、一貫して25億円前後というのは見事にインフレに飲み込まれているとも言えるかもしれません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%95%E3%83%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89%E5%B8%82%E5%8E%9F%E3%83%BB%E5%8D%83%E8%91%89

  • あとは詳しい事情はわからないですが、かつて阿部や佐藤兄弟、村井…を輩出した下部組織が近年元気がない気がしますが、これは関東の人工重心というか、多摩地域周辺〜横浜くらいのクラブが10-15年で台頭して、関東の子どもからすると蘇我まで通うのはちょっと遠いとか京葉線で寝過ごしてしまうとかそういう問題はあるかもしれません。


スターティングメンバー:



  • そんなジェフですが25シーズンはいわき、富山、山形相手に開幕3連勝と絶好のスタートを切っています。山形相手だと相手がボールを持ってくれる展開になるのでジェフの得意な展開というか、スペースを消して椿のスピードでカウンター、という強みは活きる印象でした。
  • メンバーは前節からGKをスアレス→鈴木涼大に戻したのみ。昨年のメンバーからはエース小森とCB佐々木が退団して迎えたシーズンですが、後者は鳥海の復帰で(左に回る鈴木大輔の負荷は大きくなりそうですが)計算が立つとして、前線の奮起が上位進出にはキーとなりそうです。
  • その点では、開幕後に加入し今節からベンチ入りしたカルリーニョスの存在を考慮しても、やはりボール非保持のフェーズをベースに試合をコントロールしていくスタイルでいくのかなと予想します。

  • 3連敗でホームに帰ってきたコンサは、引き続きメンバー入れ替えというか試行錯誤をすることが示唆されていましたが、CBに大﨑→家泉、前線は長谷川、木戸、中島→スパチョーク、出間、バカヨコに総取っ替えしてきました。サブはメンバー外となった大﨑のところに宮澤。白井はこの週から全体練習に合流したとのことです。

2025年3月2日日曜日

2025年3月2日(日) 明治安田J2リーグ第3節 レノファ山口vs北海道コンサドーレ札幌 〜直面する「文化」の正体〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

J2 10年目の山口:

  • 前回の山口との顔合わせはコンサがJ2で優勝した2016年にまで遡ります。当時J3から昇格直後で、上野展裕監督の下、庄司、島屋、話題の三幸、小池龍太、福満といったまだ無名の選手たちが、ハマると相手をカラーコーン化してしまうような綺麗な崩しを時に見せるサッカーで旋風を巻き起こしましたが、その後は年間20位が2回、22位が1回(2020シーズンのため降格は逃れる)。2016シーズンの対戦時はいずれもジュリーニョ(スペースがあるオープンな展開が得意)の活躍でコンサが2勝しましたが、その時の印象もあってジュリーニョは後に山口でプレーすることになったのでしょうか。
  • 2018シーズンには久々に現場復帰した霜田監督の下オナイウ、小野瀬、前貴之といった選手を操り山口史上最高の8位でシーズンを終えましたが、志垣良監督1年目の24シーズンの11位はこれに次ぐ成績。こうした数字を追うと、印象としては小規模クラブでも3〜4年に1回くらいチャンスとなるシーズンが来るので、何とかその時に勝負できるよう経営的には踏ん張っているという点では後発クラブの中では優秀なのかもしれません。


レノファ山口 雑感:

  • 開幕戦はアウェイで甲府と対戦。1-3-4-2-1(1-5-2-3)のよくあるスタイルの甲府に対し、1-4-4-2であまりポジションチェンジを行わない山口はあまり中央を経由せずサイドのSBとSHにボールを当てて動かしながらも、最終的には前線へのロングボールが多かったのですがそのセカンドボールを何度も拾うことに成功し、甲府が自陣に下がって対応する局面も多かったと感じます。
  • これは、山口は人というよりスペースを意識していて、特定のターゲットに蹴って収めるというよりは甲府の人の間に蹴って大きくクリアすることを難しくさせる狙いというか前提があるので、その間に最終ラインを押し上げてコンパクトにすることができているのでしょう。

  • 雪の維新みらいふスタジアムでの対戦となった第2節は、長崎は左ウイングに松澤というスピードと突破力のある選手がいるので、山口は対面の右サイドで松澤を2人で守ることから設計されていたと思います。
  • また相手のシステムが1-4-1-2-3ということで、1-4-4-2をベースにしつつも2トップが前に出て長崎のCBにpressingを仕掛ける時は、山口は中盤2人のうち1人が前に出て1-4-◇-2に近い形を作って、優先順位としてはあくまで中央から簡単に展開させないという姿勢を見せていました。
  • しかしこうしてサイドも中央も丁寧に守るとなると守備に割くエネルギーが多くなりがちで、また前線にすごく強烈なカウンターアタックができる選手を有しているとも言えない。そのため山口が仕掛けるタイミングはセットプレーやそこから続く展開以外だと、相手がかなりバランスを崩している局面などになってきますが、我慢強くそのチャンスを待ち続けて優勝候補の長崎を後一歩のところまで追い詰めた印象です。

  • ここまでJ2全チーム見たわけではないですが、私が見た長崎、熊本、ジェフ、山形、仙台、徳島、大分、甲府、磐田、の中では1-4-4-2でボール非保持の陣形を組むチームはジェフ、仙台、山口で徳島は1-5-2-3と1-4-4-2の中間のような感じ、磐田は2トップのタスクとかキャラクターを見ると1-4-4-1-1のような感じでした。
  • よく「pressing」と言いますが、文字通り相手に対して組織的に圧をかけてボールを持つとか、ボールを動かすことを阻害することを言います。単にたくさん走ればいいわけでもなく、また高い位置から走らなくても良いのですが、その意味では「pressing」はこれらのチームの中でも山口が一番上手い印象で、ジェフや仙台はどちらかというとブロックを作って相手のミスを待つ、一種の我慢強さが生命線なのですが、山口はより能動的にプレーして相手のミスを誘う構造を作れている印象です。

スターティングメンバー:



  • 山口はスタメンは前節と同じ。サブは峰田→キムボムヨン、田邉→小澤で2人入れ替わっています。
  • コンサはスタメンが西野→髙尾、パクミンギュ→中村桐耶、田中克幸→木戸。サブに岡田、青木、ジョルディ→原、バカヨコ。
  • なお試合前に田中克幸が左膝外側側副靭帯損傷、フランシス カンが左ハムストリング肉離れで離脱が発表されています。

2025年2月24日月曜日

2025年2月23日(日) 明治安田J2リーグ第2節 ロアッソ熊本vs北海道コンサドーレ札幌 〜和製ビエルサ・大木武監督(または和製ゼーマン)〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 恒例の?2023年の決算を参照すると、熊本は売上12億円。いわき、栃木、水戸、山口といったクラブが同程度、売上10億円を超える程度で、その上のグループが20億円前後の岡山、長崎(今はもっと上でしょう)、甲府という状況。
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2023.pdf
  • 2022年にJ2に復帰してからの順位は4→14→12位と、大躍進(not毛沢東)の22年から河原、髙橋、杉山、坂本、菅田…とごっそり主力を失った割にはまずまずのポジションにつけており、流石は和製ビエルサ?和製ゼーマン?の大木監督といったところでしょうか。
  • 開幕戦では1-4-2-3-1ないしは1-4-1-2-3の長崎に対し、相手のシステムにマッチアップを合わせてのハイプレス+ショートカウンターで長崎から先手をとります。後半に長崎が前線の外国籍選手にロングフィードを当てて起点を作ることに成功してから立て続けに3失点を喫し敗れたものの、(おそらくコンサもそうなのでしょうけど)そこまでボール保持に長けているわけではないのにボールを持ちたがるチームは格好のカモになりそうだな、という印象でした。それは22-23年くらいのコンサがJ1でそこそこ勝ち点を積んでいたのと同じような話ではありますが。
  • メンバーは、開幕戦から大崎→藤井。アウェイでの開幕戦もベンチ入り7人でしたがこの日も7人のままで、またその面々も入れ替わっている(GK佐藤史騎→武者、DF李泰河→黒木、大本、小林→竹本、ペジョンミン)ので、選手が怪我しているのでこれで全てという状況ではなさそうに思えますが…。オフシーズンは中盤から前は比較的、選手を残すことに成功しているようです。

  • コンサはこの週、引き続き熊本・大津町で調整し、月曜日には福岡大学とのトレーニングマッチが組まれ、中島が得点したり田中宏武がアピールしたりといった程度の情報は入ってきましたが、その中島や田中宏武だけではなく、DF右に西野、中盤に馬場、前線に長谷川と田中克幸と6人を入れ替えてきました。
  • ベンチはゴニと家泉が外れ、岡田と出間が入り、競争を掲げる岩政監督がなかなか明快なメッセージを内外に向けて掲出してきた印象ですが、ゴニは切り札として残していてもいいように思えます。

2025年2月17日月曜日

2025年2月16日(日) 明治安田J2リーグ第1節 大分トリニータvs北海道コンサドーレ札幌 〜同数での戦い方〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:


  • 4シーズン連続のJ2を戦うことになる大分。直近3シーズンで5→9→16位と順位が変遷しており昇格候補というよりは第二集団以降ではあると思います。予算的にも23シーズンで18億円程度で、岡山と同程度ですが山形、仙台(いずれも25億円程度)あたりの存在を頭に入れて置く必要はあるでしょう。
  • オフにはJ3降格した群馬から天笠、いわきから有馬を獲得しましたが他は他クラブでスタメンではない選手だったり、新卒や下部カテゴリの選手が主体。どっちかというと弓場、保田といったキープレイヤーを持っていかれる側の立場であり、DFラインはなんとか戦力維持に成功、前線はベテランを放出して若返りを図ったとみます。システムは片野坂監督の好む1-3-4-2-1だけでなく4バックのオプションも使っていたようです。

  • 岩政監督の初陣となるコンサ。キャンプ序盤はポジティブな報道が多く、また伝えられるスタメン候補も概ね私が予想した通りでしたが、終盤にバカヨコや白井の離脱があったようで、前線は2トップではなく1トップでジョルディがスタメン。木戸や長谷川が前線で試されていたようですが木戸は中盤センターで、荒野がシャドー、また左サイドもパクミンギュが昨シーズンのリーグ戦同様DFに入りむかわ町応援PR大使中村桐耶を前で使う、前監督体制を踏襲する形も採用した格好となりました。
  • コンサは7年間の長期政権が終わり、岩政新監督を迎えたということで、これからこのブログでも色々と言及することになるでしょうけど、一度に全部書くというよりはほどほどに出し分けていくつもりです。