2025年11月9日日曜日

2025年11月8日(土) 明治安田J2リーグ第36節 北海道コンサドーレ札幌vs大分トリニータ 〜過保護下で本領発揮〜

1.スターティングメンバー



  • 大分は残り3試合時点で勝ち点38。3チーム自動降格のレギュレーションにおいて、18位の山口が勝ち点32でありまだJ2残留が確定していない状況にあります。
  • 8/18付で片野坂前監督と契約解除し、27節から竹中穂新監督がコーチから昇格しましたが、以降の9試合で2勝4分3敗。1試合勝ち点1ペースをなんとかキープしてきました。
  • チームトップの5ゴールを挙げていた有馬が8月末に右膝半月板損傷で離脱。夏のマーケットで岡山からFWのグレイソンと、いずれもパースグローリーからDFの岡本と三竿を獲得。終盤戦でそれぞれCB中央と左WBのスタメンで起用されています。

  • コンサは前節5失点の影響からか?CB中央に浦上→家泉。トップはバカヨコで荒野を中盤センター、出場停止の木戸の位置に戻してきました。

2.試合展開

チューニングと初手の有利不利:

  • 序盤は互いにGKが前に蹴って拾う展開。10分前後から試合が落ち着き出しますが、初期配置ではお互い1-3-4-2-1でマンツーマン対応が成立しやすい中で、コンサはボールを持った時に(懐かしの)高嶺がCB中央の選手の左に下がってくる形からボール保持をスタート。
  • 柴田監督になってシステム1-3-4-2-1でワイドに近藤を有するコンサに対し、守る側としては、
  1. その近藤のところにマークを明確にしつつスピードに乗らせないという、後方から起算する考え方と、
  2. 高い位置からコンサに対しプレッシングを仕掛けていく考え方が
  • 大別するとあるかと思いますが、前者を採用しあまり前に出てこない甲府や徳島に対してはコンサは浦上がボールを運んで相手を押し込んでゲームをコントロールすることに成功し勝ち点3を得ています。
  • 一方で仙台のように高い位置からプレッシングを仕掛けて、コンサの前線の選手にボールが渡ることを阻害してくるチームに対しては、柴田監督はここまで結果を残せていない状況にあります。
  • 簡単に評せば、(ボールを持ちたがる割に)build-upに難があるコンサとしては、高い位置からプレッシングを仕掛けられてボールを運ぶ役割のDFがナーバスな状態になるとそれだけで不安定な試合運びを強いられますが、まずこの日の大分も甲府や徳島のようにあまり前に出てこないし、甲府のようにボールを捨ててくれるチームだったことは非常にラッキーでした。

  • 大分のFWグレイソンをコンサがどう評価していたかはわかりませんが、家泉の起用は浦上よりも前で跳ね返したり下がらずに対応できる守備の能力を買っていると思われます。
  • 一方でこれまでボールを持った時に、上手い下手以前にプレーの基準が全く安定しない浦上を最も重要なCB中央で使うならば、浦上にそのまま「頑張れ!」と声かけをして送り出すのではなく戦術的にボールを持った時の課題を解決できる策が必要になる。それが高嶺を家泉の隣に落とすことと、トップにポストプレイヤーのバカヨコの起用だったと思われます。
  • これまで柴田監督は1-3-4-2-1のチーム相手には、岩政前監督を踏襲する3バックをアシンメトリーにする配置で対応してきましたが、高嶺というこのチームのベストプレイヤーを1つ後ろで使うことで、その得点力や前で得点に絡む力を発揮させる以前に、まず家泉のフォローを優先したということかと思います。

過保護に思えるほど:

  • ただ、実際はそこまで家泉に過保護にならなくとも、この日の大分相手にコンサがゴールに向かっていくには十分だったと思います。
  • 大分はコンサの(最近あまり見せていなかった)この形をどこまで想定していたかは謎ですが、見た感じほぼ想定外だったのか?と思わせるほど有効な策を取れませんでした。
  • 大分はトップのグレイソンと、シャドーの天笠と野村がそれぞれコンサの3バックにマンツーマン気味で見ていましたが、シャドーがコンサの左右のDF(髙尾と西野)を意識して中央から離れてしまい、シャドーと中盤センター(池田と野嶽)の間に家泉が縦パスを躊躇しない程度にはスペースがある状態が、立ち上がりから恒常化していました。
  • 大分の竹中監督も試合後のコメントで↓のようにかなり厳しい自己分析を述べていますが、こう述べるしかないような構図だったかと思います。

  • 加えて大分はコンサの前線5人を5バックでマンツーマン気味に対応しますが、全体的にミスマッチを感じ、1v1を5箇所で作るだけでは簡単に止められない様子でした。
  • 特に
  1. バカヨコと岡本のところでバカヨコが岡本を背負った時のリーチの差などから生じるミスマッチ
  2. 近藤と三竿のスピードや仕掛けへの対応のところでのミスマッチ
  • が顕著で、中央で簡単にバカヨコにボールが入って潰されず他のコンサの選手に繋がるし、ワイドの近藤が前を向いてからコーナーフラッグ側にスピード勝負でぶっちぎろうと仕掛ければ、三竿は並走するしかできず大分のDFは更に押し下げられます。

  • そんな感じで立ち上がりからイージーな構図に見えた中、スローイン(直前のプレーはバカヨコに縦パス成功)からスパチョークがDF-MF間のスペースで簡単に前を向いて荒野にスルーパス。コンサがおそらくこのシーズンで最も簡単に得点を奪います。
  • (↓崩し切ったというか最初から崩れていたというか…)

ボール保持に活路を見出したいが:

  • スコア1-0となっても特に大分が前に出てくるわけでもなく。大分はボールを奪う部分に関してはおそらくマンツーマンベースで捕まえるしか用意がなく、高嶺に対して池田か野嶽が前に出れば中央が空いてしまうので様子を見るしかなかったのでしょう。
  • 前半に1度、高嶺と家泉に対しグレイソンがシャドーの天笠と野村に前に出て捕まえるように指示する場面がありましたが、この2人が前に出てもコンサのSBがフリーになってしまうので↓、そこで大分は迷いが生じ前から捕まえる形は機能しませんでした。


  • どちらかというとボール保持から活路を見出したかったのかもしれません。大分のボール保持もコンサと同じく、DFの選手が中央から移動してそのスペースに中盤の選手が下がってくる形からだったと思います。
  • ただコンサがその形を取ると大分は誰がついていくか明確ではなかったのに対し、39分に大分の天笠が下がって受けようとしたところを高嶺が潰してそのままシュート。
  • 身体を当てたアングル的にファウルかどうか微妙なところですが、ボールが天笠から完全に離れておりコントロールを失っていますし、大分としてはそもそもここにGKムンがボールをサーブしてはいけないところでした。

一矢だけ報いられるが:

  • DAZNのスタッツでは前半シュートゼロ、ボール回収位置は平均28m(≒ほぼペナルティエリア付近)だった大分。後半頭からグレイソン・野村・茂→伊佐・有働・吉田で3人を投入します。
  • その上で陣形は1-3-4-2-1と1-3-1-4-2の中間のような形に。有働と伊佐の2トップ、池田と天笠がインサイドハーフにも見えるような形とします。



  • 大分はトップに入った伊佐が家泉と高嶺2人を見る、場合によっては荒野にもアプローチするようになる。
  • そこから荒野が浮いた時はインサイドハーフに移った天笠が担当し、前線でズレた際は左右のウイングバックの選手がコンサのワイドのマークを捨てて前に出るようになる。これでようやく前線でどうやってプレッシングを仕掛けたら良いかわからない、みたいな状態は解消されます

  • 大分が出方を変えてきてコンサは戸惑いを見せ、とりあえずボールを簡単に手放してリスク回避するような前半はあまりなかったアクションが生じたりもします。
  • そして54分に大分がコンサのスローインからボールを奪って池田がボレーシュート。この試合1本目のシュートだったと思いますがこれが決まってスコア2-1となります。

  • コンサが後半停滞したのは大分の前線守備が一定機能するようになったことと、大分の5バックが元々想定していた1v1のマーク関係を崩して前に出るようになったことで、コンサのシャドーの選手が浮きにくくなったことなどが考えられます。
  • また前半大分はゴールキックを左の三竿の周辺に蹴ることが多かったですが、後半は右DFの戸根→変わって入った右WB吉田のラインから前に蹴っていくことが多く、これが大分の前線の選手にクリーンに繋がらずコンサボールのスローイン等でリスタートすることになっても、コンサの選手の中で大分に脅威を与えていた近藤とは反対サイドでの展開になるので、このプレー選択が近藤にボールが渡ることを防いでいたことにもなっていたと思います。

  • コンサは62分に長谷川→宮澤、大分は67分に池田→宇津元。宇津元はそのまま池田の役割に入ります。

  • 74分にコンサはスパチョーク・荒野→白井・青木。そのシャドーに入った白井がワイドの狭いスペースで強引な縦突破からCKを獲得し、76分に高嶺がリバウンドをボレーで押し込んでスコア3-1。



雑感

  • 前節のvsジェフとは同じカテゴリの試合なのかと思わされるほどスローな展開に。これは互いに3バックの同じシステムを採用しつつボール保持の手段が後ろの選手の可変で時間がかかること、互いに前線守備がそこまで強烈ではないことが要因ですが、この辺のゲームスピードや強度も順位相応なのかもしれません。
  • 順位相応に大分は(かなり、特に前半)元気がなかったですが、vsコンサとして見るとCBとFWマッチアップ(家泉vs伊佐、岡本vsバカヨコ)でいずれもコンサが優位で、これによってピッチの縦を使った攻防がかなり制約されることとなります。ボールを持つ展開だと家泉起用はどうか?と予想しましたが、高嶺のサポートと大分の対応によって彼の強みが発揮されたゲームでした。それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

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