2022年4月16日(土)明治安田生命J1リーグ第9節 北海道コンサドーレ札幌vsFC東京 〜持たない日々の始まり〜
1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
|
スターティングメンバー&試合結果 |
- FC東京は、リーグ戦7試合で4勝とまずまずのスタート。選手起用を見ると、センターラインは18歳の松木を含め、割と固まりつつある印象で、どちらかというとアウトサイドはまだいくつかのオプションを試しているように見えます。渡邊は開幕から全て右SBでの起用でしたが、この日は1列上がって左ウイング。アダイウトンがベンチスタートで永井が右に回ります。
- 興梠、小柏、金子を欠く札幌は、ミッドウイークのカップ戦で先発したルーカス、荒野、トゥチッチ、青木を起用。福森はコンディション不良で、まずはこの試合スポット的な離脱みたいです。
2.試合展開
標準装備:
- 端的にいうと、90分を通じてお互いにbuildi upに難がある印象で、中盤から前の選手がボールに触ってからはあまりスムーズにボールが動かない展開でした。
- ただ、これは両監督とも予想していて、ゲームを制するためには、(これは両監督のpublicなイメージにある程度、反して)相手がボールを持っているシチュエーションに、攻撃のトリガーを用意することの重要性を理解していたと感じます。
- FC東京は、ワイドの選手が外を切って中央に誘導、中央3枚で受け手にアタックしてボールを奪いにいく、最近1-4-3-3のシステムを採用しているチームの流行りというか、標準装備になっているやり方を考えていたと思います。
- 速攻で活きるアダイウトンをベンチスタートとした理由を、ピッチ内に求めるとするなら恐らくここで、スタートの段階では中に誘導できる選手をワイドに置きたい。永井と渡邊はそれぞれ60分、75分でお役御免で、よりゴールに向かってプレーできる選手(アダイウトン、紺野)が投入されていますが、そうしたゲームプランだったのでしょう。
|
中に誘導 |
- 中央3人の役割は、ボールを受けにくる札幌の選手にアタックすることになる。青木は中央で荒野、松木と安部はあまり決まっていなくて、安部は降りてくる駒井だったり、運んでくる高嶺や深井。松木は宮澤か、中央を離れてサイドにいる田中駿汰にスライド。
- この、前3+中央の3の6人で回収できればいいけど、序盤は札幌が得意の斜めのパス(サイドチェンジ)を使って何度か回避に成功していて、ルーカスフェルナンデスを右で使っているメリットが発揮されます。
- 札幌はルーカスの個人能力が抜けているのもあって、右ウイングにボールを配給するのが一つの目標ではある。ただ東京もここからの対応には自信を持っているようで、札幌のWBは小川と長友がストップして、その間に時間を作って枚数をゴール前に確保すれば、ターゲットがいない札幌のオフェンスはいつも通り沈黙します。
- ただ札幌はラスト1/3だと、ルーカスの個人技しか打開策がなくて、だいたいは行き場のないボールを半ば投げ捨てるかのように東京のDFに放り込むか、それすらもできなくてボールを失って終わり。
- これを東京が回収すると、高い位置に残っている場合は永井やディエゴが動き出して、宮澤や高嶺の背後を突く狙いはあったと思います。
- しかしながら、東京が決定的なチャンスを得ることはできず。その要因を挙げるなら、一つは駒井がこの時にプレスバックで何度か効いていて、東京のボールを拾った選手がオープンになることはあまりなかったこと。もう一つは、金子、福森が不在で、駒井が前線で起用されている札幌は、あまり危険なボールの失い方をする(もしくは、それに繋がるような積極的すぎる仕掛けを繰り返す)選手がピッチ中央にいなかったことでしょうか。
長いパスに長いラン:
- FC東京がボールを持っている時の話をします。
- 札幌は駒井が左のFWで青木がトップ下。いつものことながら、この役割があるので駒井も青木も、シャドーというよりそれぞれの役割及びポジショニングでプレーすることが多くなります。
- この点で、青木はトップ下で問題ないというか本人は喜んでいるんでしょうけど、駒井が2トップの一角に入ると、ボールを持っていないときのフリーランニング(走る頻度は高いけど、そのスピードがもっと欲しい)だったり、ゴール前でターゲットととして最後に押し込むことだったりで、本職の選手と見劣りするので、ゴール前のクオリティの面では、駒井のFW起用はスクランブル的な意味合いが強いと私は思っています。
- 一方で駒井はディフェンスでは非常に頼りになり、先のネガティブトランジションでの対応もそうですが、セットした状態から相手を二度追いすることを怠らないので、札幌のマンマーク主体のやり方もそうですが、駒井の存在にもよって、東京は本来狙いとするプレーを発揮しづらかったと思います。
- もっともそれも想定内だと思われて、東京が用意していたのは、自陣に必要以上に人を増やすのではなくて、前線のスペースに走らせてボールロストを回避するやり方だったと思います。
|
背後に走る松木 |
- 東京のボールの出し手は主に森重で、利き足を考えると、右に配置される木本がもう少し目立ってもよかった感はありますが、前半特に駒井が木本を消しながら消しながらスウォビィクにアプローチするので、森重からの展開が目立っていました。
- 右から配給できていれば、永井が高嶺の背後に走ったりもできたと思いますが、左からではパスレンジ的にもアングル的にも難しい。左からの展開では、渡邊が開いて田中駿汰を引っ張って、そのスペースないし荒野の背後に松木がたびたび走っていました。
- そこでボールが収まったり二時攻撃に繋がりそうであれば、東京は渡邊や小川がサポートしますが、長いパスに長いランを組み合わせた攻撃はそんなに精度があるとはいえず、前半お互いに枠内シュートゼロの”冷えた”展開となったのは、互いにこうした選択を取っていたからだともいえます。
珍しくオープンにならず:
- 後半頭から、東京は永井と渡邊を入れ替えます。恐らく永井が中央に入ってフィニッシュに関与させやすくするためで、それをスタートから行わなかったのは、札幌の足が止まってスペースができてくる(オープンになる)タイミングまで待っていたから。
- ただ札幌の後方に、宮澤、田中駿汰、深井と割とゲームをコントロールできる選手が揃っていることもあって、あまりオープンな展開にはならない。
- そこで、60分すぎに永井を下げて、枚数が揃っててもぶち抜けるアダイウトン。期待どり、30分間で2度ほど仕事をしましたが、終了間際の左クロスは松木に僅かに合わずでした。
- 札幌は63分に駒井→中島。中島は”ライオンハート”ジェイボスロイドらと違って、ボールがなくても勝手にチェイスして何かを起こそうとしてくれるのは非常に使い勝手がよい(ジェイはクロスマシンがいないと活きない)。トゥチッチを残すのは意外でしたが、シンプルに得点力を懸念しているのでストライカータイプを残したいとか、セットプレーを重視したとかその辺りが理由でしょうか。
- 札幌の交代策が実って?か、前半互いにゼロだった枠内シュートは最終的に札幌6、東京1。しかしCKから中島のヘッドをスウォビィクのビッグセーブもあって、スコアレスで終了しました。
3.雑感
- いつも通り金子がいて、福森や駒井が仕掛けまくる展開だったら、後半スペースが空きまくったところで中島にホーム初ゴールが生まれていたかもしれません。ただそれ以上に、ディエゴオリヴェイラやアダイウトンにぶちかまされいた可能性の方が高いでしょう。その意味では札幌にとって悪くはないというか、限られた戦力でよく頑張ったといえるゲームだったでしょうか。「攻撃的なサッカー」と言いつつ、オープンにしないと決定機が作れないのは、それはもう検証しなくてもわかっている、ということで。
- それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。
0 件のコメント:
コメントを投稿