2022年5月25日(水)明治安田生命J1リーグ第15節 北海道コンサドーレ札幌vs柏レイソル 〜封印されしフクゾディア〜
1.ゲームの戦略的論点とポイント
スターティングメンバー:
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スターティングメンバー&試合結果 |
- 柏はやや失速気味ですが、序盤の貯金が効いていて、試合開始時点で勝ち点21の6位。といっても、札幌が勝ち点20で8位だったりでまだまだ混戦のリーグではありますが。
- メンバーは、GKキムスンギュが離脱中?で、他はここ最近はだいたいこの日のメンバーのようです。後は、トップにアンジェロッティ、中盤に中村やドッジといった選手が入ったりもあるようです。試合はあんまり見てないけど、マテウスサヴィオのカウンターが生命線な印象です。
- 札幌は、GK菅野がDAZN中継で明確に負傷と紹介されて、別メニューで調整中の選手も入れると他に離脱者が小柏、興梠、高嶺。明言されていないのが本日欠場の田中駿汰と岡村、大谷。深井は休養でしょうか。
- GKには3rdの扱いである中野小次郎、そして高嶺の役割を福森で、福森の役割を中村桐耶。田中駿汰のところに西。このあたりの”強度”は気になるところです。そして前節チームを牽引した駒井をFWで継続してきました。
封印されしフクゾディア:
- 札幌は、オフィシャルのスタメン発表では中村がDFで、福森がMFの表記。菅もいるので、福森が高嶺の役割(中盤センターと最終ラインを行ったり来たりで、相手のFWまたは攻撃的MFをマンマーク)になるのは予想できました。
- しかし過去に1回だけ福森がこの役割を任されたことが4シーズン前にあって、この時は前半に先制ゴールを挙げてはいるのですが、福森だと攻守の切り替えが遅すぎて、ピッチ中央で要求される多様なタスクに迅速に対応できなかった、とこの時は記しています。
2.試合展開
選手にとっての「いい監督」:
- 人数が不均衡になると誰も想定していなかった状態でのマッチアップだけ確認しておきましょう。主に福森の扱いなのですけども。
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各シチュエーションでのマッチアップ |
- ↑の図で示すとわかりやすいでしょうか。福森と中村の前後関係はシチュエーションによって変わります。
- 自陣で守るときは中村は宮澤、西と3バックのようになる。福森はその前を守ります。札幌が自陣からボールを持っているときは、お馴染みのMFが1人DFに加わる形で、この移動をするのが福森、普段は高嶺です。
- ただ、敵陣に入ってからのミシャチームは割と自由で、荒野や青木は後ろまで下がってくる(これは敵陣自陣問わずですね)し、駒井がサイドに行くとか、金子が横に移動するとか、DFが前に出ていくとか。明確に決まっているかというと、おそらく決まってない。決まっているとしたら覚えて実践するのが無理なくらいのパターンというか動きをしています。
- こういう約束事、松田浩さんのいうdisciplineが弱めのチームは、選手個人のキャラクターやプレースタイルに、パフォーマンスの高低もそうですが、チームの方向性や安定度合いが大きく左右されます。
- パスをするとか味方と連動して守るとか、グループでアクションをする場合は、誰がどこにいてどのタイミングでどうアクションするとか決めておいた方が、相互に連携しやすいのは想像がつくと思います。
- 昔のコンサドーレは、パスの受け手が全力で前に走って、でもパスはその背後に流れてそのままパスミス、みたいなのが多かったのは、チーム全体を規定するdiciplineとその下の相互理解がないからです(単に下手なのかもしれませんけど)。
- ミシャが選手にとって「いい監督」なのは制限が極端に少ないからだと予想していて、制限というのは要求であり仕事です。端的にいうと走れ、ドリブルしろ、戻ってこい、動くな、ここにいろetc…人間は指図されるのが嫌いだし、得意ではないことをやらされるのが嫌いです。ミシャは自由にやっていいよ、としつつ、それでまぁまぁ勝たせてくれるから支持されるのだと予想しています。
芝上の空論:
- 確か2017年のオフに道新の記事でもあったのですが、福森はもともと中盤をやりたいみたいで、後ろに残っているよりも前に出てプレーするのが好きみたいですね。
- 金子は突っ込むのが好きだし、菅は常に左足でボールを持つし、荒野はおもむろにワンタッチプレーを繰り出す。こういうのが選手特性とかキャラクターです。
- だから福森に自由を与えると、前に行きたい時に前に行くので、与えていた役割が不明瞭になりがちです。中村がサイドに出ているときは福森が真ん中を守らないといけないのに、そこにいない、役割を遂行できないという状況が、自由な振る舞いの許容からくる不安定なポジショニングによって引き起こされ、それがチーム全体の機能不全に繋がります。
- だから福森はサイズがあって、左足のキックがあって、攻撃が得意だから最終ラインの左以外で使えるか?というと、こういう選手特性とチーム作りによって、机上の空論でしかない。それがこの4年ほどの結論だったと思いますが、あえて封印を解いた理由を聞きたいです。怪我人が多い、以外で。
- まぁ、退場はあんまりこうした話(自由に動き回るのでポジショニングや切り替えで難あり)はあまり関係ないんですけどね。後ろからのファウルは厳罰、はサッカー界が90年代にファンバステンのような偉大な選手を失ったくらいからの常識で、98年のワールドカップでもこのファウル及び基準は既にできていましたし。そこから基準が緩まる要素も特にない。
縛られたくないはずが縛られる:
- 先に言いますと、退場は選手が悪いです。ただ退場した後に全く試合にならなかったのは監督の手腕やチーム作りが論点になります。
- 今日のサッカーだと所謂「数的優位・不利」とか「位置的優位」とか、選手の能力や個人戦術と呼ばれるもの以外にプレーの指針となる考え方があって、それによって人数が多いチームが「やらかす」ことは稀になり、人数が少ないチームは絶対的なディスアドバンテージを背負うことになるのですが、それは前提としても、この日の札幌はチームとして何もできていなかったと言えます。
- サッカーはスペースを使ってプレーする競技です。中島大嘉が騒がれているのは、スペースがガバッと空いている時にタイカが爆走するとかクロスボールに突っ込んでくると、歴戦のDFでもストップするのが難しいからです。逆にスペースがないと現状タイカはただの丸刈りになります。
- ですので普通は守備の基本は、相手が使いたいスペース(ゴール前から逆算して考える)を与えないことになる。ただ、札幌というかミシャはスペースを割と無視した守り方をしていて、スペースを与えても人を止めてればピンチにならないじゃん、とする考え方でプレーします。これがいつもの「ピッチ全域で常にマンマーク」です。
- 逆説的には、コンサのようなスペースを捨てる極端なマンマークは、人を捕まえてアクションを封じている状態を継続することで成り立つもので、人を捕まえることをサボると単にスペースを相手に献上している幼稚園のサッカーになります。
- 福森が退場すると↓のような陣形になって、菅と西が大外をアップダウンする、金子とルーカスはその前で、ウイングというより攻撃的MFみたいな感じになる(だからサイドを入れ替えて、タッチライン付近よりも中でプレーするイメージにしたのでしょう)。
- 青木が一番前にいることが多いですが、青木1人で柏のDF2人とか3人とかを捕まえるのは絶対に不可能。
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1人少なくなっても中途半端に「人を見る対応」 |
- なので、ここでpressingが成立しないなら、人を捕まえてアクションを封じる守備は成り立たないので、とにかくスペースを埋める守り方に切り替えるしかないんですよね。それをしなかった、できなかった時点でこの試合は終わりです。
- できないのはそうした「ルール」とか最近流行りの言葉だとプレーモデルとか、考え方をチームに浸透させていなくて、とにかく人を捕まえろ、という極めてイージーなアプローチでやっているからでしょう(守備練習に時間やリソース使うよりも好きに攻撃させた方がみんな楽しいから、って感じでしょう)。
- 縛られるのが嫌なはずなのに、練習してないから一つのやり方に縛られて、それじゃ結局ゲームにならない、ということですね。悪い大人に利用されたくないなら勉強するしかないのです。
3.雑感
- 早い時間に退場者が出ると、監督も試合について質問されても困っちゃいますよね。ですので、スタメンのチョイスとか、11人対10人になっても同数前提の守備を採用していたのはなんでですか、とかをメディアの方が質問してくれるといいですね。
- それではみなさん、また逢う日までごきげんよう。遊戯王は全く遊んだことないです。
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