2022年3月6日(日)明治安田生命J1リーグ第3節 アビスパ福岡vs北海道コンサドーレ札幌 〜質実剛健〜
1.スターティングメンバー
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スターティングメンバー&試合結果
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- 福岡は普段は1-4-4-2ですが、金森を外して最終ラインにCB(熊本)を1枚増やしています。2021シーズンも札幌に対してはこの形でしたので、本来望むスタイルではないにせよ、DFを増やすことでそれ以上のアドバンテージがあると見ているのでしょう。前嶋の負傷で、湯澤がスタメン起用されています。
- 札幌はガブリエルシャビエルが左足痛で欠場。金子がシャドーに回るのは”規定事実”ですが、小柏、興梠と並ぶとやはりアタッカー3人で、中盤とリンクできる選手(青木?)が求められるところです。
2.試合展開(前半)
アップグレードに成功:
- 長谷部監督率いる福岡の、対・ミシャ札幌での戦略的、戦術的な狙いはあまり変わっておらず、戦略面では「長いボールで陣地回復しつつ、札幌陣内でなるべく勝負する」、戦術的には「5バック&サイズのあるDFでロングフィードによるビルドアップを迎撃する」といった戦い方は2021シーズンと同様だったといえるでしょう。
- 一方、違いを挙げるとすると、トップのルキアンの存在。前任者のブルーノメンデスと比べても、そのパワーやゴールに向かう能力は一段上。宮澤とのマッチアップは、ほぼルキアンの圧勝で、終始そのパワーで起点創出を許していた札幌のバンディエラはこの試合、60分でピッチを後にすることになります。
福岡の狙い(概要):
- 福岡は、ピッチ上のシチュエーションを大まかに以下のように整理していたと思います。
- 札幌の自陣ゴールキック等、札幌陣内での展開:1-5-2-3陣形によるプレッシングでボールを狩りに行き、そのままシュートまで持ち込む(このシチュエーションが主要な得点のチャンス)
- 札幌が福岡陣内に侵入:一旦引いて1-5-4-1ブロックでスペースを消す。札幌の遅らせてから、最終ラインの高さを活かしてボール回収。
- 福岡が自陣でボールを保持:無理せず札幌陣内に放り込む(ルキアンor山岸)。この時間をなるべく減らしたいのでとにかくシンプルにするが、ターゲットとなる選手に能力があることが大前提。GK村上のゴールキックは全て、ターゲットへの放り込みを選択していました。
- 福岡が札幌陣内に侵入:スペースがあれば速攻でシュートまで持ち込むが、スペースがなければサイドに迂回してクロスボールでフィニッシュ(この場合はシュートよりも陣形の整理を優先)
- このほかクルークスがキッカーとなるセットプレーも得点機会として重要で、例年に比べてそんなに高さがない札幌に対し、デザインされたプレーを数パターン披露していました。もっともスタメンのうち180センチの選手が、札幌は3バックの3人で、福岡は背が高い順にグローリ、宮、熊本、山岸、ルキアン。札幌は金子がルキアン(ほかの選手から離れてニア~中央で動く役割)をマークしていたりで、かなり怪しいところがありました。
福岡の狙い(詳細)と数的優位・不利:
- 繰り返しになりますが、福岡は札幌陣内で果敢にプレッシングを仕掛けて試合を動かそうとしてくる。
- 札幌のGK菅野→CBの宮澤or高嶺に渡った時の展開を図示すると、
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福岡のpressing |
- ルキアンはアンカー駒井を背中で消しながらCBの間のチェーンを切る
- シャドーはCB→SBの中間に立つ
- 札幌のCBが、自分でドリブルで運ぶか、長いフィードを蹴るかの二択を取らざるをえない状況を作り、ここで長いフィード5人のDFでマンマーク気味に対応。高さはいずれも福岡有利で、地上戦だとマッチアップ次第ですが、福岡は自陣ゴールから遠い位置でアタックするので、仮に裏を取られたりしてもカバーできるし、札幌は長い距離を走った時に脅威になれる選手が小柏だけ。小柏の裏抜けを特にケアしていれば大丈夫、といったところでしょうか。
- ドリブルで運ぶのも逆手に取るというか、高嶺や宮澤が持ち出すと、被カウンター時にルキアンやクルークスへのネガティブトランジションでエラーが起こりやすく、あまり札幌は彼らが攻撃で自由に振る舞えない状況でした。
- ただ福岡のやり方だと常に数的不利での対応になって、数的優位の札幌は空いている選手がいることは把握できていて、この局面での決定的なミスから、福岡のシュートシーンはあまりなかったかなと思います。
- ここは福岡としては、想定以上に札幌の出来が良かったといえるかもしれません。
- また20分以降、駒井が宮澤と高嶺の間に落ちるようになる。こうなるとルキアン1人で3人を見ることは難しく、じゃあシャドーが上がって対応するか、というと、シャドーは札幌SBをケアできる位置にいたい。駒井が下がっても、結局そこからの展開は長めのフィード主体で、これを福岡がケアしている限りは何かが起こりはしづらいのですが、福岡もショートカウンター発動に持ち込めず、ここだけを抽出すると拮抗状態に近かったでしょうか。
漢菅野:
- となると違いを作っていたのはon the ball、ルキアンが起点となるプレーで、29分のPKもルキアンのポストプレー&ターンという、CBがこれを許すとかなり厳しい局面になるプレー。ルキアンのマークに出た宮澤の背後に、山岸が斜めに走って、追走する田中駿汰が後ろから倒してしまう。
- しかしルキアンのシュートを、菅野が完全に読み切ってストップ。興梠曰く「絶対こっちなんで」とのことですが、数値化されるデータだけでなくて蹴り方も含めてわかりやすいタイプなのでしょう。
- 35分にも福岡の決定機。速攻から遅攻に移行してクルークスの左クロス。ボックス内でのこぼれ球を湯澤が狙いますが、菅が素晴らしい切り替えでゴールライン付近に立ってクリア。40分にはまたもクルークスの左CKから、ルキアンがボレーでネットを揺らしますがハンドの判定で取り消し。
- しかし福岡のほうがこうした速攻以外のシチュエーションでも”得点の雰囲気”があって、それはクロスボールを配給する際の準備だったりデザインだったり、DF側の備えの不十分さだったり、全体的に練度は福岡のほうが感じました。
3.試合展開(後半)
限られた手札:
- 後半も変わらずの展開で、福岡ペースというか、札幌が殆ど福岡のペナルティエリアに侵入できない展開が続きます。
- 60分、ミシャにしては早めの動きで、興梠→青木、宮澤→柳、駒井→深井。先に、後ろを2枚(それも、キープレイヤーの宮澤と駒井)替えるのはかなり珍しいでしょう。
- 思惑としては、宮澤とルキアンのマッチアップをどうにかしたい(けれどもキムミンテはもういないので、1枚警告を受けている駿汰しか選択肢はないのですが)ので柳、ルキアンが競った後、中央でボールをゲインできる深井、という考えでしょうか。
- ルキアンとのマッチアップが田中に代わって、劇的に改善されたというほどではないですが、どっちかというと右に入った柳が攻守で存在感を発揮していたでしょうか。基本的には左シャドーの山岸とのマッチアップになりますが、ルキアンとタスクを分担していた山岸に対して当たり負けせず、ミシャの期待に十分応えていたと感じました。また終了間際には速攻から中央に侵入して強烈な左足シュートで、この試合唯一、福岡ゴールを脅かした場面でした。
- ただ福岡も、前半から前線守備を頑張っていたルキアンは70分くらいで少し運動量が落ちたかな?というところでしたが、それでもまだ動けていて、同じく負荷が高そうだったシャドー2人は71分に2枚替えで交代(金森とファンマがin)。最後まで集中を保った守備に対して突破口は見えないし、そもそもボールを敵陣にほとんどビルドアップできない。
- 「あとは決めるだけ」と言ってますが、決めるチャンスもほとんどなくない?って感じの展開で、終始福岡のパワーとディシプリンに後手に回って、なんとかスコアレスで終了しました。
雑感
- 枠内シュートが札幌2(うち1本は柳の終了間際のシュート、もう1本は…前半の小柏か)、福岡9(うち1はルキアンのPK失敗)と、スコア的に同じく拮抗していた2021シーズンの2試合よりも、パワーバランスは福岡に寄ってるなと感じました。順足ウイングで配置されたルーカスフェルナンデスを活かした攻撃をしたかったですが、そもそも福岡はほとんどWBを空けてくれないので、高い位置でルーカスにボールが渡らないことが多かったです。
- 開幕3試合を通じて札幌にいえるのは、これまでであればこうした「微妙な試合」でも、パワーのある外国籍選手を前線に投入してシンプルな放り込みでゴールなり勝ち点をもぎ取っていたので、そうしたタイプの選手がいない(もしくは、いるけど迫力不足)だと、勝ち点を獲得する力は落ちているのは当然で、菅野の孤軍奮闘だけが頼りだったでしょうか。それでは皆さん、また会う日までごきげんよう。
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