2020年7月7日火曜日

プレビュー:2020年7月8日(水)明治安田生命J1リーグ第3節 鹿島アントラーズvs北海道コンサドーレ札幌 ~報われる前に~

1.予想スターティングメンバー

予想スターティングメンバー

  • 互いに3日後にリーグ戦を控えており、過密日程下での連戦が本格的にスタートします。普通に考えれば、複数の選手を入れ替えてのターンオーバーを敷くことが望ましいはずですが、特に鹿島のザーゴ監督の考え方がまだ見えません。札幌は、ミシャはあまりターンオーバーに積極的な監督ではなく、前節の起用の仕方から見ても大幅な変更はまだなさそうだと予想します。
  • 鹿島はここまで公式戦4戦全敗、得点は前節川崎戦の、セットプレーからのオウンゴールのみ。札幌ならこんなこともあるさで棲むかもしれませんが、鹿島の場合は、状態がよくないと言い切っていいでしょう。そのため、メンバーを完全に入れ替えるよりは、半分程度の入れ替えとなると予想します。
  • 前節の起用法等からみると、早めに下げた土居や、GKのクォンスンテ、キャプテンの三竿等は引き続きスタメン起用。消耗が激しそうなSBの永戸は入れ替え。膝に不安のある内田も休ませると予想します。また、筆者が鹿島のスタッフだったら、チャナティップに何度か巧く対処している永木は、右の中盤センターで起用するように進言します。
  • 札幌は前線3人はほぼフル出場でしたので、特にジェイは休ませることが望ましいと思いますが、彼ら3人を下げると戦力ダウンが大きくなります。休ませたのは深井と荒野の中央2人で、この2人もミシャが信頼しているコンビであると考えると、確実にターンオーバーがありそうなのは、スタメン1番手とサブの評価がそこまで乖離していなさそうな右WB、白井→ルーカスのところかと予想します。個人的には色々な選手を見てみたいのですが。


2.鹿島についての印象

2.1 ザーゴは何がしたいのか?


  • ザーゴ監督はどのようなサッカーがしたいのか?について簡単に考えてみます。
  • 鹿島はセンターサークルの敵陣頂点付近から、1-4-4-2の陣形でスタートするプレッシングを行います。プレッシングの意図は色々ありますが、鹿島のプレーの選択を見ていると、ザーゴ監督は奪ってから相手が手薄なうちに速く攻める、バスケでいうところのファストブレイクのオプションを重視したいのだと思います。
  • かつてゼリコ・ペトロビッチ氏がメディアとやりあっていた際、ブロックを崩されたチームに対して無策なのでは?と聞かれ、「ブロックを作られる前に速く攻めるのが一番だと思う」と返しており、これは一部で失笑を買っていましたが別に間違ったことは言っていないと思います。札幌も、武蔵とチャナティップのコンビが、まさにザーゴが欲しているようなクオリティをもたらしていることを考えれば、オプションとして速く攻めることができるチームはどれだけ強力か、理解がしやすいでしょう。

2.2 何がうまくいかないのか?


  • よく、「いい攻撃はいい守備から」と言います。曖昧な日本語表現ではありますが、鹿島の場合も、速攻に転じる前のボール奪取の仕方が課題だと感じます。
  • 速攻が成立するための要因を考えてみます。相手の守備が手薄になっている状況でボール奪取に成功し、成功した瞬間にこちらは速攻を仕掛けられる選手を複数確保しておく必要があります。
  • 前線川崎戦を例に説明すると、この試合の構図は以下のように、川崎(水色)がボール保持時は1-4-1-2-3のような陣形、鹿島は1-4-4-2で対峙します。川崎は、家長のいる右サイドから前進を試みることが多かったと思います。ここで、鹿島のうち黄色いサークルでマーキングした4人の選手が、速攻の際に中心になる選手です。これは1-4-4-2というシステムで基本的なことですが、この4人は相手ゴールに近く、後ろを守ってもらえる存在がいるので、攻撃参加がしやすいです。

川崎-鹿島の初期配置
  • ここから川崎がボールを動かすと、鹿島の問題が露見されます。
  • 川崎のCBは、前方のスペース…鹿島のFWの脇をドリブルで持ち上がってから、タッチライン付近に開く右SBにボールを預けます。鹿島はSBに渡ると、SHの和泉が寄せていき、これがプレスのスイッチになります。
  • ただ、この対応で和泉はオリジナルポジションから数メートル下がっての対応を余儀なくされ、かつタッチライン際で向かうべきゴールに背を向けてプレーすることになります。言い換えれば、数秒後の目的地から遠ざかっています。鹿島のプレスは人-人の関係が決まっている傾向が強く、その守備対象に背後を取られると、この和泉以外にも選手がプレスバックして頑張らないといけない場面が散見されました。
基準が人なので、守備対象に背後を取られると後退してしまう

  • 仮にここでボールを奪えたとして、アラーノとエヴェラルドはともかく、和泉は守備でエネルギーをかなり使った状態での攻撃参加になります。これは確実に、ゴール前でのクオリティに影響を及ぼします。
  • 「足が速い」は重要な要素ですが、足の速さに加えてポジショニングも重要です。都倉、ジュリーニョ、内村というメンバーで速攻が成立していたのは、(都倉は足が速いと思いますが)このチームは前線の選手が前に残っていてもいいよ、という約束事になっていて、その分の後方の枚数不足は最近ニュースになっていた増川隆洋選手らが跳ね返してくれる、という勘定が成り立っていたためです。(↓の動画の55秒くらいからですね)

  • そしてもう1つの問題点は、少なくとも川崎相手には、こうした構図で勃発する1on1で完全に勝てていないかった、要は速攻に繋がるようなボール回収ができておらず、川崎にゴール付近への侵入を許していたことです。奪えなければ当然攻撃に転じられませんし、陣形はズルズルと後退して更に相手ゴールから遠ざかります。
  • これについては、滅茶苦茶強いCBがいるとか、ユニットとして最終ラインがより安定し、それらの選手にある程度任せられるバランスにならないと難しいと感じます。川崎戦で土居とアラーノを入れ替えたのは、サイドの選手はこのような難しい状況になると考えた時に、アラーノのスピードは失いたくなかったからではないかと予想します。

2.3 現状の生命線


  • もう一つ顕著な現象があります。
  • 速攻ができそうなくらい「それなりに高い位置」でボールを回収すると、鹿島は速攻を仕掛けます。アラーノやエヴェラルド、SHの選手が比較的前目にいる状態でボールを回収できた状態です。
  • 鹿島は1stオプションとしてまずゴールに迫っていくので、4人のアタッカーはペナルティエリアの幅でプレーします。ゴールに向かって最短距離で走り、ワイドに開くことがありません。
  • が、鹿島はこの形からシュートまで持ち込めません。一つは前線のアタッカーのクオリティの問題で、アラーノは多分速い選手なのですが、他はこのスタイルだとやや迫力不足で、スピードでは優位性があまり得られません。そうなると、相手のDFがまずまず揃った状態で中央のスペースがないところを突破しなくてはなりませんが、これができるクオリティも不足しているように感じます。土居は狭いスペースでもプレーできる選手ですが、このシチュエーションは土居が得意な形とは異なります。
  • なので、鹿島は中央で攻めきれず二次攻撃に転換する機会が多くなっています。この時は何をするかと言うと、SBの攻撃参加を待ってからサイドに展開し、そのままサイドからクロスでフィニッシュを狙うことが大半です。要するに中央で攻め切りたいが、できないので、最後はサイドを使っている。サイドにはSBしかいないので、高精度のクロスボールを持つSB永戸の攻撃参加が鹿島の生命線のような状態になっています。最後方から常に攻撃参加を続ける、永戸の負担は非常に大きそうです。サブだと予想しますが永戸が出場するなら、突破力のあるウインガーを右に2枚抱える札幌としては、常に仕掛けて消耗させたいところです。
中央で崩しきれないので毎回永戸の攻撃参加に頼っている

  • 序盤あまりぱっとしない新加入選手が”化ける”のはよくある話ですが、エヴェラルドはあまりDFを背負ってプレーするのが得意ではないように思えます。というのは、彼はボールを収めたい時にサイドによく流れてきます。これも相手ゴールに近い位置からスタートして相手守備が整う前に攻める、という観点では微妙な選択に見えます(もっともこういうフラグを立てると福森選手相手に無双しそうな予感もあるのですが…)。

3.試合の展望(札幌の採るべき策)


  • 札幌は鹿島のプレッシングを空転させたいです。セオリーとしては、コンパクトに守る鹿島に対し、まずワイドなポジションを取り簡単に捕まらないようにする。川崎のSBの役割は札幌では進藤と福森になります。福森は基本的には受け手ではなく出し手ですが、いつもの福森のサイドでの展開は、まず対面の土居の出方を見てから展開したいです。
まずはワイドなポジションで簡単に捕まらないようにしたい

  • 川崎のように福森が土居の背後を取るなら面白そうですが、基本的にボールプレイヤーで組み立てを全権委任されている福森だと違った展開になる気がします。最悪なのは、土居や広瀬が前に出てきた状態で札幌はサイドで捕まってしまい、ボールをロストする展開です。こうなると速攻が発動し、あまりスピードのない札幌の最終ラインが晒されます。保険としてキムミンテのCB起用は効果的だと思うのですが、恐らく現実味が薄いでしょう。
  • 福森の必殺のフィードが決まるならいいですが、長いフィードにはリスクも伴います。この最悪の事態を想定すると、大抵の日本人DF相手ならフィードを収めてくれるジェイえもんには絶大な期待がかかります。ジェイは植田や昌子相手には苦戦していましたが、中3日で奈良や町田相手だとどうでしょうか

土居らが前にいる状態でプレスに引っかかるとまずい

  • 鹿島としてはいかにプレスをはめられるかに尽きます。この点で、現実的かはわからないですが、仮に5バックでマッチアップを合わせてきたらものすごくやりにくくなると思います。

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