スターティングメンバー |
北海道コンサドーレ札幌のスターティングメンバーは3-5-2、GKク ソンユン、DFキム ミンテ、横山知伸、福森晃斗、MF石井謙伍、宮澤裕樹、深井一希、兵藤慎剛、田中雄大、FW都倉賢、ジュリーニョ。サブメンバーはGK金山隼樹、永坂勇人、MF河合竜二、マセード、荒野拓馬、FW内村圭宏、金園英学。開幕戦後に離脱していた宮澤と、荒野、前寛之が今週の練習から復帰。3センターの3-5-2において、中盤のあらゆる役割をこなせる荒野や前寛之が帰ってきたことは大きい。外国人枠の関係で割を食ったのはヘイス。マセードとの択一だったと思うが、コンディションがまだ不十分なのかもしれない。一方でこの試合から復帰の見込みだった菊地は、2時間前に発表された先発メンバーに名を連ねていたが、直前でキム ミンテに変更、サブに永坂が入った。
セレッソ大阪のスターティングメンバーは4-2-3-1、GK丹野研太、DF松田陸、マテイ ヨニッチ、山下達也、丸橋祐介、MFソウザ、山口蛍、清武弘嗣、山村和也、柿谷曜一朗、FW杉本健勇。サブメンバーはGK圍謙太朗、DF茂庭照幸、田中裕介、MF関口訓充、清原翔平、秋山大地、FWリカルド サントス。キム ジンヒョンは腰痛の治療のため帰国。前の週の練習から試されていたという、前線に山村を置き、左に柿谷。開幕戦で水沼が負傷した右サイドは、前節は丸岡が起用されていたが、この試合がJリーグ復帰戦となる清武が先発起用された。調べたところ、清武は11/26のバレンシア戦で後半開始から出場した以来の公式戦。スペインではリーグ戦4試合1得点という結果に終わった。
1.前半
1.1 ゲームの入り
1)フェライニ・ロール
立ち上がりの数分間は、両チームともロングボールが多かった。札幌のロングボールの使い方は、基本的にここ2試合と同様なので詳しくは割愛するが、都倉が競り、拾ってジュリーニョがサイドから仕掛ける形。都倉はセレッソのCB、山下とヨニッチを避け、SBの松田や丸橋相手に空中戦を挑んでいく。
山下達也はすっかり恒例となった札幌ホームでのブーイングを一身に浴びていたが、2015、16シーズンと札幌戦では都倉との空中戦でも毎回苦にしていない。おそらくJ2で見てきたCBの中でも、都倉が最も苦戦した相手の1人である。2016シーズンにJ2で対戦した際は、山下の相方はベテランの茂庭や本職SBの田中裕介で、山下を避ければある程度の空中戦勝率を期待できたが、187cmのヨニッチはいかにも強そうな見た目。この試合でもセットプレーから先制ゴールを決めている。札幌としては、前線で都倉の空中戦に活路を見出すなら、このCB2人を越えるクロスの精度が求められる。
セレッソは柿谷と清武を両脇に従えてトップ下で先発した山村がターゲット。トップ下なのか、下がり目のFWなのか、どちらも大差ないかもしれないが、試合を通じて札幌のアンカー、深井とのマッチアップが多かったので、トップ下と考える。ベンチに清原や関口を座らせ、メンバー外だが丸岡も福満もいる中で山村を前線で起用するというのは、やはり尹晶煥的には前線にターゲットを確保し、後ろでボールが行き詰った時のソリューションとして山村の頭を確保したかったのかと思われる。
2)セレッソがボールを持っている時
セレッソはボランチを落とさない、4バックを維持した形でビルドアップを行う。札幌の5-3-2ブロックと対峙したとき、オープンなスペース(札幌の2トップ脇)にポジショニングするのは両SB。よってまずはここが起点になるのだが、松田と丸橋に渡ると、札幌はインサイドハーフの宮澤と兵藤が守備のスイッチを入れる。
丸橋に渡った時、宮澤が中を切るように丸橋の前に立てば、丸橋にはパスコースがサイド(タッチライン沿い)しかない。ただセレッソは柿谷や清武をサイドに張らせて、この外→外という経路でのパスコースの確保はあまり考えていないようで、この形で両SBが持つ分には、杉本や山村への縦パスしかないと札幌は考えてよい。この2人も特段、DFを背負ってボールを収めることができるわけでもないので、この形からのセレッソの攻撃は特段札幌に問題を与えることはなかった。
札幌守備のマッチアップの考え方 |
そして出しどころがない丸橋が山下にボールを下げると、札幌はジュリーニョと都倉がセレッソの両CBを追い込み全体が重心を押し上げる。この形は前節のマリノス戦でも見られたもの。前節は足元に定評のあるマリノスのGK飯倉の存在もあり、逆サイドにボールを逃がされることもあったが、セレッソの丹野相手ならば、丹野に戻させて長いボールを蹴らせる、ということがある程度成功していたと思う。ただ先述のように、最前線に山村がいたことで、蹴らせたボールをうまく跳ね返せないという問題はあった。
序盤のセレッソの守備の形は、山村と杉本が横関係の4-4-2というより、縦関係の4-4-1-1に近い形だった。ポイントは札幌の3バックの両サイド、特に福森への対応で、2トップは中央を見ることに専念させたので、サイドの選手…清武が前に出て福森に対応することになっていた。
これは札幌としては、前節のマリノス戦と似た形。マリノスは3バック+深井に対してマッチアップを明確にしてきたが、両ワイドの田中と石井は浮いた状態になっていて、札幌は田中をボールの逃がしどころにして前に運んでいこうとしたが、セレッソは両SBを田中と石井に積極的に当ててくる、マンマークに近い考え方をしていたと思う。よって前節ほど田中のところが空かず、序盤は札幌は都倉に放り込むしかない、という状況になっていった。
序盤は両チームとも様子見、札幌としてはセレッソがどこまで前に出てくるのかを見極めつつの入りだったが、セレッソも清武と柿谷にあまり過酷な仕事は要求していないため、序盤数分を凌げば、比較的、福森はボールを持てる状況になっていったと思う。
ゲームの入りは悪くなかった札幌だが、13分に自陣右サイドで与えたフリーキックから、ヨニッチに先制点を許してしまう。この時、札幌DFがファウルを犯したプレーでも見られていたのがセレッソの得意な攻撃パターンで、サイドバックの位置にボランチの選手を落とすことでサイドバックの攻撃参加を促す。下の図のようにソウザが丸橋の位置に入ると、札幌は宮澤がソウザを見ればいいのか、丸橋を見ればいいのか一瞬迷い、ソウザへのマークが甘くなってしまう。ここでソウザから縦パスが入り、セレッソは札幌の2列目を突破、DFを背負って受けた杉本が倒されてFK、という流れだった。
かつてはマルチネスや扇原といった、左利きでパスに特徴のある選手をこのポジションに落とし、サイドに糸口を作るとともにバイタルエリアに侵入する2列目の選手への縦パスからの中央突破を図るというのが黄金パターンだった。ソウザは右利きで、これらのボランチの選手とはタイプが異なり、縦への突破力や得点力がある。よって中央を使う形だけでなく、左サイドで柿谷、丸橋、ソウザと3人を集め、札幌の対応が曖昧になったところでの縦突破でサイドを攻略する形も何度か見せていた。
またこの時柿谷は中央に絞る、サイドに張ってパスコースを作るでもなく、丸橋と縦関係を入れ替えるような動きを繰り返していた。5バック+3ボランチで中央を固める札幌に対し、石井を動かすことで裏にスペースを作るという考えがあったのかもしれない。
3)札幌がボールを持っている時
序盤のセレッソの守備の形は、山村と杉本が横関係の4-4-2というより、縦関係の4-4-1-1に近い形だった。ポイントは札幌の3バックの両サイド、特に福森への対応で、2トップは中央を見ることに専念させたので、サイドの選手…清武が前に出て福森に対応することになっていた。
これは札幌としては、前節のマリノス戦と似た形。マリノスは3バック+深井に対してマッチアップを明確にしてきたが、両ワイドの田中と石井は浮いた状態になっていて、札幌は田中をボールの逃がしどころにして前に運んでいこうとしたが、セレッソは両SBを田中と石井に積極的に当ててくる、マンマークに近い考え方をしていたと思う。よって前節ほど田中のところが空かず、序盤は札幌は都倉に放り込むしかない、という状況になっていった。
マリノス戦:両ワイドが浮きやすい |
セレッソ守備のマッチアップの考え方:両ワイドにSBをぶつける |
序盤は両チームとも様子見、札幌としてはセレッソがどこまで前に出てくるのかを見極めつつの入りだったが、セレッソも清武と柿谷にあまり過酷な仕事は要求していないため、序盤数分を凌げば、比較的、福森はボールを持てる状況になっていったと思う。
1.2 先制点とともに徐々に動く
1)セレッソの左
ゲームの入りは悪くなかった札幌だが、13分に自陣右サイドで与えたフリーキックから、ヨニッチに先制点を許してしまう。この時、札幌DFがファウルを犯したプレーでも見られていたのがセレッソの得意な攻撃パターンで、サイドバックの位置にボランチの選手を落とすことでサイドバックの攻撃参加を促す。下の図のようにソウザが丸橋の位置に入ると、札幌は宮澤がソウザを見ればいいのか、丸橋を見ればいいのか一瞬迷い、ソウザへのマークが甘くなってしまう。ここでソウザから縦パスが入り、セレッソは札幌の2列目を突破、DFを背負って受けた杉本が倒されてFK、という流れだった。
セレッソ左サイドからの攻撃 |
かつてはマルチネスや扇原といった、左利きでパスに特徴のある選手をこのポジションに落とし、サイドに糸口を作るとともにバイタルエリアに侵入する2列目の選手への縦パスからの中央突破を図るというのが黄金パターンだった。ソウザは右利きで、これらのボランチの選手とはタイプが異なり、縦への突破力や得点力がある。よって中央を使う形だけでなく、左サイドで柿谷、丸橋、ソウザと3人を集め、札幌の対応が曖昧になったところでの縦突破でサイドを攻略する形も何度か見せていた。
またこの時柿谷は中央に絞る、サイドに張ってパスコースを作るでもなく、丸橋と縦関係を入れ替えるような動きを繰り返していた。5バック+3ボランチで中央を固める札幌に対し、石井を動かすことで裏にスペースを作るという考えがあったのかもしれない。
2)札幌の左
セレッソとしては、勝ち点3を計算している相手でもある札幌に対し、後方でブロックを作って待ち構えるリアクション型の試合運びをしていくというよりは、高い位置に守備陣形を維持し、札幌に対して積極的にプレッシャーをかけていきたいとの狙いがあったように見える。ただ開幕3試合目という時期的な問題(戦術の浸透、コンディション…等)もあるのか、試合を通じて、札幌に対するセレッソの守備は圧力が一定せず、急にテンポを上げてきたかと思えば、途端に緩い対応になってしまうような時間帯があった。
後半途中からの運動量低下をみると、コンディションの問題は大きかったのかもしれないが、後半、札幌が追いつき右サイドに清原が投入されてからの展開で、2トップ脇で持つ福森がノープレッシャー、ソウザが手を広げて「どうすんだこれ」というようなジェスチャーをしていた場面があった。このことから、単に福森に対する対応をチームとしてはっきり決めていなかったとも思われる。
ともかく、セレッソの前線からの守備が緩やかになると、札幌の最終ラインに対してプレッシャーがほとんどかからなくなる。ここで福森にボールが入ると、札幌の攻撃が一気に加速する。
スイッチとなるのが、福森から兵藤への縦のパス。前節は守備に追われて殆ど攻撃参加ができなかった兵藤だが、本来は攻撃時にスペースを察知してボールを受けることができる選手。下の図のようにセレッソの最終ラインと中盤の2ライン間でボールを受ける。この兵藤が一度受けることで、①大外で田中がポジションを上げる時間を作ることができる、②セレッソのDFの意識が中央に集まる、という2つの効果がある。更には宮澤も下の図のように左サイド、兵藤の近くまでポジションを上げていく。こうして中央に厚みを作ったうえで、サイドに起点を確保することができている。この試合、右サイドからの展開の際は逆の動き、兵藤が右サイドまで進出する動きが非常によく見られたので、恐らくこの2枚のインサイドハーフの動きは準備されていたものだと思う。
左の三角形で作って右で仕留める |
札幌の攻撃のフィニッシュは、左を駆け上がった田中のクロスに都倉と、逆サイドから石井が飛び込む形が繰り返される。ジュリーニョがサイドに流れる動きが多いため、中央のターゲットが都倉1枚になってしまいがちなところを、石井の中央への侵入により2枚目をターゲットを確保する。この時都倉はニアサイドに殆ど走らなかったので、ファーサイドの丸橋のところを狙いどころとしていたのだと思われる。
1.3 間延びしたいくつかの要因
試合は前半途中から後半へと経過していくにつれ、徐々に中盤が間延びし、大味な展開になっていく。この要因となったものを幾つか考える。
1)両SHの前張りから裏を突くセレッソ
セレッソは30分頃から、自陣でボールを保持した際にCBが深いポジションを取り、最終ラインとボランチの2枚でボールを回そうとするようになっていく。これはリードしているため無理に攻撃に出る必要性が薄く、ボールを保持する時間を増やすとともに、札幌の選手を走らせる意図があったと思う。
ここでセレッソのSBからCBにボールが戻されると、札幌はリードされていることもあって、セレッソのCB2枚に対してFWが追いかけていくことを徹底する。すると札幌はポジションを上げるFWに連動してMFとDFも押し上げていくが、下の図のようにDFラインの裏、特に3バックなのでサイドにスペースができやすくなる。
セレッソはこの時、前の4人が前線に張っていて、特に柿谷と清武は札幌の3バックのサイドにできたスペースを狙っていた。DAZN中継で後半の65分頃、尹晶煥が「清武のところのスペースを使っていけ」と指示していたが、恐らくこのスペースとは、清武の前か横か後ろかで言うと、前方にできるスペースを指していたのだと思われる。
CBが深いポジションで札幌を前に釣り出して1本のパスで背後を突く |
後半のプレーだが、48分頃に清武が山口からの縦1本のパスで札幌の裏を取りかけたのもこの形(結果はオフサイド)。柿谷がサイドで使われているのも、こうした狙いだったのかもしれない。
ただ両サイドを高く張らせて(前に残らせて)このプレーを狙っていくとなると、後ろは4バック+2ボランチ、前に4枚が残る、数字で示すと4-2-3-1か4-2-4のような形が基本形となり、前の4枚が戻ってこないと前後分断に近い状態が恒常化する。このことをセレッソが狙っていたか、そうでないかというと、恐らく後半札幌が押し込む展開になっても柿谷や清武のうち、少なくとも片方を残す状態を頻繁に残していたことを考えると、恐らく狙っていた形だったのだと思う。
2)2トップを下げたくない札幌と屈強なCBで対処できるセレッソ
上記のように札幌が3バック状態になっている時にサイドを突かれると、CBがサイドをカバーすることで対処するが、この時セレッソはボールをサイドに送り込むとともに前に残していた選手もボールサイドに送り込み、ボール周辺の密度を高める。すると札幌はボールを回収した後、近くの選手にパスを繋ぐことが難しくなるので、クリア(前に大きく蹴りだす)による対応が主となる。
前節の記事で、「札幌はボールを回収した後に安全にボールを逃がせていない」と書いたが、この試合は前にシンプルにクリアすることでこの問題を解決していた。ここで、ただ蹴るだけでは全て相手ボールになってしまうので、札幌としては都倉やジュリーニョは前に残して、大きく蹴りだされたボールを競らせて二次攻撃に繋げたい。前節は守備ブロックが下げられると、連動してポジションを下げていた2トップが前残りになる時間が多くなっていたが、この試合では守備加担は限定的にし、攻撃に転じたときの対応を優先する。
2トップを下げない札幌、2CBで対処できるセレッソ |
これに対し、セレッソは屈強な2人のCBが、都倉とジュリーニョへの対人プレー(主に空中戦の競り合い)における質的優位を確保しているので、都倉とジュリーニョへの対応に人数を割かなくてよい。山下とヨニッチに加え、山口かソウザの片方を残しておけば難なく対応できるということが、セレッソは前に人数を残した状況を作りやすくしていたと思う。
2.後半
2.1 勝負どころとみた理由
1)勝負の3トップ
後半立ち上がりも、前半立ち上がり同様にロングボール中心の攻撃を展開していく札幌。一方のセレッソは、ボールを回収すると攻め急ぐことなくDF~MF間でボールを動かし、スローダウンを図っていたように見える。しかし、55分にセレッソの安易なプレーによるターンオーバーから、拾った深井が裏の都倉へロングパス。これがセレッソのハンドを誘って札幌がペナルティエリアすぐ外でフリーキックを得る。福森のシュートは丹野に防がれるが、このプレーを境に試合展開が徐々に加速していく。
59分頃に札幌はマセードと金園が用意。投入されたのは63分で、石井と深井との交代である。これにより、前節でもみられた3-4-3に近い陣形にシフト。ただ前節と異なるのは、右にマセードを入れてきた点。前節は外国人枠の関係もありマセードが帯同しておらず、右は90分通じて石井が務めていたが、左に田中、右に石井という両翼で、左からクロスを上げて右から石井が突っ込む、という形を繰り返していた。マセードを入れたということは、左一辺倒だったサイドアタックを右からも繰り出す形を作りたいということ。
63分~ |
2)横幅を作る
早速札幌はマセードにボールを集める。マセードへのボールの供給元は、主に最終ライン(ミンテ)であり、ボールを受けるには低いポジションからスタートしなくてはならないが、60分を回って相手に疲れが見えたところでの投入ということで、マセードのドリブルがセレッソを翻弄する。下の図のように、4バックのセレッソは3トップで中央を厚くした札幌を4枚のDFで見なくてはならないので、マセードへの対応に柿谷が頻繁に駆り出される。
投入直後のマセードは、簡単に仕掛けて失うことを避け、縦に行くと見せかけてボールを戻すようなプレーで揺さぶっていく。右で仕掛ける形ができたことで、逆サイドで田中が空くようになっていく。
マセードで揺さぶってからオープンな逆サイドへ |
3)決断を促した脇の甘さ
0-1のスコアで、アディショナルタイムを含めて30分間を残した段階で3トップに移行するという、四方田監督にしてはかなり大胆な采配だったが、監督の中では、戦況を見ていて、この状況ならば3トップにすることで守備面のデメリットに対し、攻撃面でのメリットを足し引きするとメリットが上回ると判断したうえでの大胆な決断だったはず。
「この状況」というのは、セレッソが前半途中から続けていた、両サイドハーフが前に残りボランチと「4」のラインを形成しない守備時のポジショニング。柿谷と清武はソウザや山口の位置まで戻ってブロックを作らないので、ボランチ脇が空く状況が非常に多くなっていた。ここに兵藤や、前線から金園や内村(67分に途中投入される)が降りれば確実にボールをキープでき、両ワイドで待つマセードや田中にボールを供給できるので、中盤でボールを失うことなくサイドからのクロス→枚数を揃えてゴール前での肉弾戦、という展開に持ち込むことができる。
脇が空いたまま |
4)素早いリスクヘッジ
一方3トップにして中盤を削ったことで、守備強度は低下する。これについても前節の記事でその構造的な要因を書いているので割愛するが、これとは別に、個人の問題…具体的には3トップにしたことで、守備の持ち場が中央からサイドに変わったジュリーニョの穴が目立つようになる。
ジュリーニョの守備について、2016シーズンの記事でも少し触れたように、対人プレーなどは特段厳しいという印象はないが、致命的なのは攻撃→守備の切り替えの部分。本人のモチベーションやコンディションによって波もあるようだが、相手ボールになった時に素早く守備に切り替えることができない。この試合でも、3トップにして攻勢に出るぞという状況で、相手ボールになるとすぐにボールを奪い返すことに切り替えないといけないのだが、金園、都倉との3トップの中でジュリーニョだけ切り替えられていないと、それだけで守備のスイッチを入れることができない。
攻撃をシュートで終われない(GKのクロスキャッチ等)と背後を突かれやすい すぐに切り替えてスペースを埋めなくてはならない |
67分に内村が投入されたのは、恐らくこうした守備面の問題を解決する意味も大きかったと思われる。残り30分で3枚の交代カードを使い切り、ジュリーニョのいた3トップの左にそのまま内村が入った。
2.2 終盤の展開
四方田監督の采配が結実したのは73分。右のマセードのクロスに対するセレッソのクリアが中途半端になったところを福森が拾い、左に開いた内村へ。内村が田中の上りを待って、中央方向にドリブルからファーサイドへ浮かせたクロス。この日、徹底して狙っていた都倉×丸橋の何度目かのマッチアップで、都倉が丸橋を抑え込んだような競り合いだったが、頭で合わせたシュートがクロスバーを叩いて決まる。
その後も札幌が押し込む展開が続く。セレッソは5トップ気味で押し込む札幌に対し、柿谷は依然として前に残し、清武が田中への対応のため下がらざるを得ない状況が多くなる。
清武をサイドで押し込むことに成功 |
79分にセレッソは1枚目の交代カード、山村を下げて清原。清原が右サイドに入り、清武がトップ下に移動するが、清原も見たところ、福森に対する対応が定まっていないようで、札幌が攻め込む状況は変わらない。セレッソは前がかりになった札幌の攻撃を耐え、カウンターを繰り出すが得点は奪えず、1-1で試合終了。
3.雑感
先制されて追いかける展開だったため、狙い通りとはいかないが、前の2試合でやりたかった試合運び…前半は守備の枚数を確保して耐え、勝負できるタイミングでリスクをかけて点を取りに行く、はある程度実践できていた。早い時間で3トップに変えた判断は結果として正解だったが、相手の緩い守備対応にも助けられたことが成功の大きな要因だったことは忘れずに付け加えたい。
読み申した( ・ω・)つ≡つつ にゃんむるです。
返信削除だいたい解説どおりな印象です。相手チームの能力によって勝負どころが変わって試合中ずっと(最後までとか)引き気味は観たくないなー。去年の最終戦とか観て生きる気力無くなっちゃうタイプだから俺www
相手の方が強いと分かっても勝負どころ見極めてイって欲しいですわ。
兵藤、ヘイスあたりが質の高いプレーしてくれれば充分戦えるでしょう。
次回も期待(試合も解説も)してますー。またの(・∀・)ノ