2025年4月29日火曜日

2025年4月29日(火) 明治安田J2リーグ第12節 北海道コンサドーレ札幌vsV・ファーレン長崎 〜悩みを共有する関係〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

社運とはすなわち金額:

  • スタジアムシティプロジェクトの全貌が明らかになり、24シーズン中のオープンを目指すと発表されたのがコロナ禍の2020年12月。
  • 20年以降の長崎はJ2で3位(人件費13.8億円)→4位(13.8億円)→11位(13.5億円)→7位(18億円)と推移し、この間20シーズン夏にエジガルジュニオ、22シーズンにクリスティアーノ、23シーズン夏にマテウスジェズスとマルコスギジェルメ…と継続的に選手への投資が続けられてきました。
  • そうして迎えた24シーズンは、カリーレ監督の裏切りという想定外の事態があったとはいえ、文字通り勝負の年だったのでしょうけど、リーグ戦を3位で終えホームアドバンテージを得た中でのプレーオフでは、ベガルタ仙台のボールを捨てるスタイルに見事にハマってピーススタジアムで涙を飲むこととなります。

  • そして25シーズンはキャプテンに山口蛍、最終ラインにエドゥアルドと関口、GK後藤といった選手を加えこれでもかという陣容でシーズンイン。どんだけ金あんねん、と思わされますが、当初700億円とされていたスタジアムシティに最終的には1,000億円を費やしているわけで、こうした選手人件費は誤差みたいなものなのでしょうか。
  • ただ25シーズンこそMFから後ろの選手を厚くしたものの、全体的に編成が前線過多というか、1トップベースなのにマテウス以外にもFWにファンマとエジガルジュニオが控えているというのは、率直に素人臭いお金の使い方をしている印象です。おそらく下平監督もそうしたやりづらさを抱えながら補強リクエストを出して、25シーズンは少しお金の使い方を変えてきたのでしょうけど、現代サッカーにおいて9番タイプを多く抱えても、むしろ監督が緻密なスタイルを志向するほど足枷になります。
  • 24シーズンもマテウスをFWにしてラスト5試合で5連勝でフィニッシュしましたが、仙台とのプレーオフではトップにエジガルを置いてマテウスと組ませるとボール非保持の際の連動性や可動域がイマイチで、一発勝負において機能しているとは言えませんでした。

  • 25シーズンは開幕6戦を4勝2分と好スタートを切ったものの、山口蛍を欠いた7節で藤枝相手に初黒星を喫してから1分4敗の5戦勝ちなし、前節はホームでいわきにシーズン初勝利を献上…という状態で大和ハウスプレミストドームに乗り込みます。
  • この間に対戦した5チームはいずれも3バック(5バック)でボールを持たせてくるスタイル。6節までは4バックのチームが多く、徳島や熊本は異なりますが割と前に出てきてくれるチームなので、案の定というか「J2らしいサッカー」に苦戦している状況でしょうか。

  • とまぁ、色々書きましたが、素人くさい編成なのは我らがコンサの方が先んじているのですが…そうしたある種の被害者である監督同士のマッチアップでもあるかもしれません。

スターティングメンバー:


  • 長崎は負傷者が多く、特に中盤の山口、山田、DFのエドゥアルド、前線の笠柳、松澤、エジガルジュニオといったスタメン級の選手を欠く状況。
  • 前線は前節ハットトリック以外にも獅子奮迅の働きだったファンマと、ミリにマルコスギリェルメ、左に増山。DFは右SBの関口をベンチスタートとして左右の2番手的な位置付けである米田。CBにはここ2試合は新井と照山でしたが、櫛引が9節以来3試合ぶりに右に入ります。この照山と櫛引のユニットの先発は昨年26節に1度のみのようです。

  • コンサは前線にバカヨコ→白井。中盤は宮澤・木戸を大﨑と、前節まずまずだった荒野に入れ替え、左はスパチョークがメンバー外で長谷川。前節体調不良で復帰の青木はベンチスタート。

2025年4月26日土曜日

2025年4月25日(金) 明治安田J2リーグ第11節 RB大宮アルディージャvs北海道コンサドーレ札幌 〜好き嫌い以前の要因〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

J3では無敵からの好循環に:

  • 8年前の7月以来となるNACK5スタジアムでの対戦。この時はマンツーマンなのになぜかアンカーにマンマークをつけない四方田監督のコンサを伊藤彰監督の大宮が90分間振り回していましたが、語り草となる福森のフリーキック2発で勝ち点1を分け合いました。ここからコンサは後半戦の巻き返しに繋げ、大宮は降格の憂き目に遭うこととなります。個人的にはマテウスがここからこんなに大成するというか、F・マリノスでの優勝に貢献するとは思いませんでした。
  • 18、19年はJ1昇格プレーオフに進出したもののその後低迷し、23年にJ3降格、24年にはレッドブルへの経営権譲渡と1年でのJ2復帰、と激動の日々を送る大宮。ピッチ外のビジネス面が整理されてくるとピッチ内にも徐々に波及するのでこのシーズンのダークホースと予想していましたが、ここまで10試合で6勝2分2敗で2位の滑り出しは上々と言ってよいでしょう。
  • ただ磐田、長崎、仙台、そして絶好調のジェフとの対戦がまだ未消化であり、昇格争いにエントリーできるかはここから、といったところでしょうか。

スターティングメンバー:



  • 大宮は4バックの1-4-4-2とした方が実態に近いのでそう表記します。前々節で退場処分を受けた杉本が復帰。CBは市原がいまいち(デカすぎる)期待に応えきれていない感がありましたが中央で先発復帰しています。右ワイドとFWが複数候補が考えられましたが、それぞれ初スタメンの安光と、4試合ぶりスタメンの藤井を選択しました。
  • コンサは試合前にパクミンギュの負傷離脱が発表され更にバックラインの台所事情は厳しくなります。左SBに高嶺をずらしてCBに西野。中村桐耶の本格化が(さすがにそろそろ)待たれるところですが、彼抜きで4バックだと後ろはこれしかない、といったところ。ただベンチに大﨑が復帰しており、4バックのCBとしてはアリなのかは注目ではあります。
  • そして青木も特にアナウンスがなくメンバーを外れており、中盤センターは宮澤と木戸。

2025年4月21日月曜日

2025年4月20日(日) 明治安田J2リーグ第10節 北海道コンサドーレ札幌vs藤枝MYFC 〜一旦は、躓くまでは〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

地理的な優位性?:

  • 2014シーズンにJ3オリジナルメンバーとして参入し、2023シーズンよりJ2を戦う藤枝。ここまで降格を経験せず、昨シーズンでいうとJ2の13位にまでクラブステータスを高めてきたのはなかなか健闘している印象です。
  • 2023シーズンの売上は約8億円と、秋田、金沢、群馬と共に10億円に満たなかったクラブの一つでしたが予算以上の成績をここ2シーズンは維持し、2025シーズンもここまで3勝3分け3敗で13位とまずまずのスタートでしょうか。
  • クラブの内部事情はあまりよく知りませんが、地理的には藤枝もとい静岡県中部には多少の土地勘があります。住む分にはそんなに便利な地域ではないかもしれませんが、サッカー的には近隣に数クラブあるというのは、例えば移籍加入する選手が家族の住環境を変えずにプレーできるとか、練習試合を組みやすいとかでプラスに働き、予算以上にクラブの強化になる面が大きいのかもしれません。いろいろな地方自治体が企業誘致等で必ず「地理的な優位性」みたいな文言を入れるのはちょっと笑っちゃいますが、サッカーにおける藤枝は割とガチで優位なのか?と思うことがあります。

スターティングメンバー:



  • 藤枝は須藤大輔監督体制ではほぼ一貫して3バック(5バック)の1-3-4-2-1。コンサからは23シーズン後半に田中宏武、24シーズン前半に中島が期限付き移籍で加入しましたがそれぞれ右ワイドとセンターFWで定位置を掴むには至っていません。尖った選手というかストロングポイントもウィークポイントも目立つ選手よりは、割とマルチな能力を持っている選手の方がより評価される印象はあります。
  • 20年前にヴァンフォーレ甲府でプレーし、札幌ドームでクラブの命運を左右するゴールを決めたことで有名ですが監督としては予想以上にバランスの良いチームづくりをする、今後2〜3年くらいのキャリアが楽しみな監督でもあります。
  • メンバーは、千葉がベンチスタートでシャドーに金子。他はいつものメンバー。

  • コンサは前節退場処分を受けた馬場が出場停止(2試合)。加えて試合前にその馬場と岡田の負傷離脱がリリースされた状況で、青木を中盤センター、左にスパチョーク、前線に田中克幸。特にシャドーまたはルーズFW的なスパチョークと田中克幸の併用はかなり意外でしたが、そこをカバーするために青木の隣に西野を置いたのかもしれません。
  • そして最終ラインは中村桐耶が期待を裏切る格好となった左CBに高嶺、左SBには復活が切望されるパクミンギュ。

2025年4月13日日曜日

2025年4月12日(土) 明治安田J2リーグ第9節 水戸ホーリーホックvs北海道コンサドーレ札幌 〜届かぬ足先が指す黄信号〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

結局GMって何すんの?:

  • コンサで現役を引退した西村卓朗氏が2016年から強化部長、2019年からGMを務める水戸。コンサの三上元GM(現サポーター)を見ていると、そもそもGMって何をする役割なのか?がよく見えなかったので、個人的には今回のGM退任劇には一定の理解があるのですが、水戸では西村氏がフットボールに関する戦略全般をグリップしているようで、これだけ明快に語ってくれるとGMってこういう役割なのね、と理解できます。

  • ↑上記の動画でも激戦の関東に立地する小規模クラブにとって、選手の発掘と育成がキーということで、戦略的でもあるしある意味では逆張り的な動きで差別化するとも考えられるかもしれません。例えば近年は他クラブが大学生に即戦力を求めるようになりましたが、以前はどちらかというと有望な選手を高卒時点で囲っていた際に、水戸は大学生に目をつけ塩谷や(在学中でしたが)パク・チュホのようなインターナショナルに活躍する選手の輩出に成功しています。
  • その後今のように国内の上位クラブがポストユースでの育成に消極的になると水戸のポジションはそちらに必然と移り、高卒選手を直接リクルートするのもあれば、コンサで言えば中島だったり、現在岡山で活躍する鈴木喜丈のような高卒3〜4年目くらいの選手に対してもかなり戦略的に動いているな、との印象を受けます。
  • 恒例の23シーズンの営業収入は約12億円。コンサの1/3〜1/4といったところですが過去最高額を更新しているとのこと。10億円を割るとリーグ最低水準で、そこよりは少し上のラインといったところでしょうか。
https://www.mito-hollyhock.net/news/p=35441/
https://aboutj.jleague.jp/corporate/assets/pdf/club_info/j_kessan-2023.pdf
  • となるとやはり行政の費用負担を念頭においた専用スタジアム建設に期待したいところですが経過は思わしくないようでかなりの長期戦となりそうな雰囲気です。ある意味では、ホームスタジアムの確保についてあまり計画的ではないまま参入したということで、Jリーグの発足から拡張期における象徴的なクラブなのかもしれません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E6%88%B8%E5%B8%82%E7%AB%8B%E7%AB%B6%E6%8A%80%E5%A0%B4

スターティングメンバー:


  • 水戸のシステムは1-4-4-2またはワイドの役割やプレースタイルを考えると1-4-2-2-2。GKは松原に代わり3試合連続で西川。CBは東京国際大学から新卒加入の板倉がここまでは最多出場で、鷹啄トラビスはJリーグ初先発という水戸らしい若いユニット。中央は大崎がキャンプ中の負傷から復帰し初スタメン。両ワイドは津久井が左でスタート。
  • コンサは高嶺が前節に続いて左SBの1-4-4-2。スタメン発表では1-3-4-2-1のような並びになっていて偽装っぽくはありました。前節は木戸がスタートで後半から田中克幸でしたが、この日は克幸をスタメン起用。また最終ラインは家泉がベンチスタートで、中村桐耶と西野が初めてユニットを組みます(追記:家泉が体調不良で直前に中村のスタメン起用になったとのこと)。

2025年4月6日日曜日

2025年4月5日(土) 明治安田J2リーグ第8節 北海道コンサドーレ札幌vs徳島ヴォルティス 〜常勝のお面を被り直すとき〜

1.ゲームの戦略的論点とポイント

クライシスを経て過渡期へ:

  • 2024シーズンのJリーグで危機?混乱?に見舞われたチームといえば、J1では前半戦にコンサ、後半戦は鳥栖が盛り上げていましたが、J2では開幕10試合で1勝2分7敗、7節で吉田達磨監督が辞任した徳島が似たようなポジションでした。徳島は選手の突然の引退や移籍もあり、コンサと鳥栖のミックスのような状態だったかもしれません。
  • 徳島は監督と共に強化本部長の岡田明彦氏が退任し、後任は黒部光昭クラブアドバイザーが務め、監督人事は増田功作ヘッドコーチの昇格という展開になりましたが、増田監督は就任後31試合で15勝6分10敗で勝ち点51を稼ぎ、1試合平均だと勝ち点1.65を稼いでいます。
  • このシーズン5位、6位の岡山や仙台がだいたい1試合あたり1.7ですので、監督交代後の混乱期に清水、ジェフ、長崎とこのシーズン上位でフィニッシュしたチーム相手に1分2敗だったことも考慮すると、徳島のこの意思決定がどのように行われたのかは気になりますが、かなり”当たり”を引いた印象です。
  • コンサも徳島から1年遅れで三上GMが退任しサポーターに就任。こちらの後任は空席となるようですが、コンサはミシャ監督を引っ張ってオフに岩政新監督を招聘。なんとなくですがこの辺にクラブのカルチャーや価値観が現れる感じがします。岡田本部長が去っても徳島はフットボール的に立ち返るところがあるのなら大成功でしょうし、コンサはまだそれがなく、監督人事もピッチ上のこと以上にネームバリュー(三上サポーターの表現では「コミュニケーション能力」)の方がまだ大事なのでしょう。
  • 片方は監督が元日本代表選手選手で強化担当が選手としては無名、もう片方は逆に監督が選手としてはそこまで目立たない人で強化担当が地元出身の元日本代表選手。このあたりも対照的ですが、黒部強化本部長の手腕が見えてくるのはまだこれからでしょうか。

  • 2023シーズンの徳島の売上は約20億円。J2降格1年目の2022シーズンから2億円程度減少していますが、主力選手のOUTが複数あったのでその違約金による変動の影響はあるのかもしれません(ただし「その他収入」は両年とも2億円台でものすごく変動しているわけではないですが)。
  • 予算規模的には今のJ2で2.5番手〜3番手グループになるかと思いますが、2025シーズンはここまで7試合で3勝3分1敗で6位のスタート。長崎には敗れたものの、仙台、山形、そしてRBの名を冠して好調の大宮相手に計2勝1分で乗り切っており、十分にプレーオフ圏内を狙えそうな状況にあります。
  • オフの動きはoutが7ゴールのブラウンノア賢信とCBの森がJ1のクラブへ移籍したのと、柿谷の引退が目立ったところで、inが左WB/SBの高木友也、CBの山田奈央と山越、前線にはジョアンヴィクトルとルーカスバルセロスといった外国籍選手で補っています。ただスタメンを見ると、杉森、杉本、渡、児玉といった馴染みのメンバーが引き続き主力を張っているようです。

スターティングメンバー:


  • 徳島はどちらかのサイドの選手の高さを変えることで、試合中に3バックの1-3-4-2-1と4バックの1-4-4-2を使い分けます。通常はボール保持時に1-3-4-2-1または1-3-2-5で、4バックで守るチーム相手にギャップのできる形からスタート。ボール非保持の際は1-4-4-2ベースでスタートすることが多い傾向にあります。この日のメンバーは前節から右シャドー/右サイドハーフの役割に重廣→杉森。
  • コンサは木戸を中央に入れて、高嶺を左SBに起用する前節の後半を意識した配置ですが、あまり機能していたようにも見えない形を継続してきました。左CBは中村桐耶→西野。