2021年4月25日日曜日

2021年4月24日(土)明治安田生命J1リーグ第11節 北海道コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台 ~令和の俊也?~

1.ゲームの戦略的論点とポイント

スターティングメンバー:

スターティングメンバー&試合結果
  • 札幌はキム ミンテ、ルーカスが負傷でメンバー外。田中がスタートから最終ラインの中央に入るのは、2020シーズン序盤のFC東京戦以来でしょうか。
  • 仙台はお金がないと聞いていますが、独特のスカウティング網を持っているのか、それとも代理人の売り込んできた選手を積極的に獲る傾向があるのかわかりませんが、2021シーズンから加入した外国籍選手が3人。
  • ただCovid-19の流行下で裏目に出ているのが、入国制限措置によってオッティ、フォギーニョといった選手の合流が遅れ、オッティは先日ようやくデビューを果たしましたが早速負傷で離脱してしまいました。結果この試合のメンバーは比較的、前のシーズンから見知った選手が多い印象です。

基本指針の確認:

  • 勝つために仙台も、札幌のこのあたりの特徴は当然整理してきたはず。ただ、仙台にはターゲットがいないこともあって、これまで札幌が対戦したチームよりもボールを持たない選択をとっていました。
  • 一方で自陣ゴール前のスペースを消すのは同じ。ゴール前では、仙台の歴代監督が試行錯誤の末に人を捕まえるスタイルに落ち着いた経緯を横目で見てきましたが、このチームも同じようで、駒井が頻繁に下がって2トップ化する札幌に対し、平岡がアンデルソンロペス、吉野がチャナティップをかなり意識するやり方になります。
  • 前線は一応サイズのある西村がいますが、どちらかというと本来は前を向いて仕掛けるタイプで、仙台はスウォビィクのゴールキックのターゲットは全て西村なんですがそこでの優位性と言えるほどのものはない。ですので、自陣に引くはいいが、そこから札幌ゴール前までどうやって前進するか?との問いに対する回答は用意しておく必要があります。
撤退と前進手段確保はセット
  • 恐らくマルティノスの役割はそこにあり、自陣深くで引いて前にスペースがある状態なら、マルちゃんならある程度長い距離をドリブルで運んでくれる。こういう選手がいないと、自陣に引くのはいいけど防戦一方で相手に脅威を与えられないし、それこそ2019シーズンのルヴァンカップ決勝で見たように、守り一辺倒の戦いは選手を疲弊させます。
ロングスプリントで陣地回復
  • マルティノスから仙台の攻撃が始まると考えると、必然と仙台の攻撃は右サイドに偏りがちになります。ですので得点を奪いたいなら、右サイドから前進した後の展開も考えておく必要があります。


名手を破る術:

  • 菅野とスウォビィク。下位に沈むチーム同士ですがGKには期待できる選手がいます。菅野は超人的な反応速度でほぼ毎試合、勝ち点に直結するセーブを見せていますが、このようなGKを攻略するには、相手GKやDFの特徴を踏まえてゴール前のプレーを設計する必要がある。
  • 私もGKについて細かいことは言えないですが、ただ鉄則として、①なるべく相手ゴールに近い位置からシュートを撃つ、②ゴール正面付近で、角度を確保できる(シュートコースを複数見せれる)位置からシュートする、③シュートの前に左右にボールを動かしてGKのポジショニングや視界を揺さぶる、といったものは誰がGKでも有効です。よく「工夫しろ!」と言う人がいますが、サッカーにおける工夫とはこうしたプレーをグループで設計しておくことです。
  • 菅野は私とそんなに変わらない体格にもかかわらず、空中戦もそれほど苦にしない稀なGKです。ただし、どうしても身長が低く腕も長くないGKは、ハイボール(≠サントリー)処理の際に予測しつつ、積極的に動いてボールにアタックする必要があります。
  • ですので、仙台は右クロスの際は全て速いボールを蹴っており、その狙いどころは基本的には西村を配置したファーサイド。ニアだと高さのある札幌DFに跳ね返されて、場合によってはそこからカウンター発動!にもなるので、必ず岡村や田中駿汰を越えるボールを蹴るのですが、フワッとした緩い軌道だと菅野が処理してしまうのもあって、多少アバウトでもいいから、精度よりも球質を考えていたと感じます。
右クロスは速いボールをファーに
  • この際、マルティノスは味方が上がってくる状況を作ればお役御免で、砲台は順足SBの真瀬。そして、加藤はシャドーストライカーの役割があって、クロスの際に全部中央に入ってきます。
  • 札幌はピッチ全域で「ほぼ純粋なマンマーク」なのですが、サイド攻撃に対してはウイングバックがマークを捨てて中央に絞り、カバーリングやスペースを埋められるようにしている。ただ、速い攻撃を繰り出されると、こうした状況で選手が都度判断してマークを受け渡したりスペースを埋めるといった情報処理→判断→実行のプロセスがうまく働かなくなります。
  • 別な言い方をすると、仙台は札幌ゴール前では速く攻撃することでカオス志向というか、「何かが起こるからまずファーに放れ」といったプランを用意していました。
  • サイド攻撃とはちょっと別ですが、「金子が絞って対応するので枚数が揃っている前提で守ろうとするけど、人をどう捕まえるか選手間で不明瞭になってやられる」のは▼のような場面も共通点を感じます。
  • そして札幌は、先に挙げたGKを攻略するための①~③の原則なり、何らか工夫があるかというと、そこは賢明な読者の皆さん個々の見解や感想に委ねるとしましょう。
  • 個人的には、開幕戦のように気分よくプレーさせてくれる相手なら得意のフリック攻撃が発動することもある。しかし相手にタイトに守られると、今日もアンデルソンロペスの遠距離砲でのフィニッシュのような、散発的で狙いを感じない攻撃に終始してしまうのが実情だと思っています。

2.試合展開

輝くメガネ:

  • 序盤から仙台は引く、というか無理をしない。後方の枚数確保とマーク関係維持が最優先なので、2トップの赤﨑と西村はアンカーポジションの高嶺を消すポジションを取り続け、札幌のCBポジションである宮澤と田中駿汰には殆ど圧力をかけない。
  • だから札幌はボールはいくらでも持てました。ボールをいくらでも持てるという状況は、一般に今日のサッカーシーンでは考える時間がふんだんに与えられているポジティブなシチュエーションです。
  • 16分の仙台の加藤の先制点は、フィニッシュのクロスの形こそ違いましたが、「マルちゃんのサイドで前進して時間をかけずにクロス」という意味合いでは仙台が狙っていた形だったでしょう。采配ズバリとはこういうものを指すのがより正しいと思います。

最終ラインのボトルネック(岡村の進藤化):

  • 札幌は、指向性というか理想は中央を崩して突破したい!みたいなトレーニングはやっているようですが、実際はこうした残留を争うようなガチの試合になって、相手がタイトに守ってくると、先日の手抜き記事でも書きましたが、突破力のあるウイングバックにボールを渡して単独突破からのクロス(手段はだいたい福森のスーパーなフィード)、というパターンに終始しがちです。この試合も、右ウイングバックの金子拓郎に渡すことをチームのほぼ全員が意識していたと思います。
  • 一方、仙台が引いてスペースを消しつつ、札幌の前線の選手に対してはマンマークで明確に対処してくるので、金子には石原が常に監視。菅も、ほとんど使われることはないですが真瀬が監視しているのは同じです。
  • ですので、この仙台の監視を外した状態で金子にボールを渡さないと有効な攻撃は発動しない。例えば、岡村が右にいることが多いですが、岡村が持ってバレバレの姿勢から金子にパスしようとするなら、それは金子の対面のSB石原が前進して容易にインターセプトします。

  • あまり、あからさまに特定の選手に言及はしたくないのですが、札幌がボールを動かしつつ、その策を探っている際の、最終ライン・ビルドアップ部隊のボトルネックは岡村でした。
  • 福森はフリーなら強引な縦パスなりフィードなりを蹴って、それが相手に渡ることもありますが、何本かは抜けて味方に繋がって、これまた強引ですがアンロペが前を向いてシュート、みたいな展開は一応ありです。
  • ただ、岡村はボールを後方で持ったところで、フリーの時に運ぶこともしないし、何ができるかと言うと基本的に隣の選手にパスしかしていないので、仙台のマークがずれたり逆をとられて対応が遅れたり、速いパスで揺さぶるとか「次の選手に貯金を作る」プレーが一切ない。
  • 試合を見ていて思っていましたが、岡村は1回も前にパス成功していない気がしました。SPORTERIAの集計▼だと一応、左斜め前方に何度か成功しているようですが、そのパス距離(レンジ)は非常に短い。ですので、この方向にボールを前進させていたのは岡村よりも駒井だと考えた方が良いでしょう。そして金子に対して、全くネットワークが生じていないのは注目に値します。
札幌のパスネットワーク

引用:
https://sporteria.jp/data/2021042401/126556

  • ボールを持たされる展開で、岡村が機能していないのを見て、札幌は恒例行事…駒井が下がってきます何度か指摘しているので過去記事もいつか漁ってください
  • 駒井が下がって「いわゆる日本的なゲームメイク」するようになると、岡村は最終ラインで仕事がなくなります。そして後ろにいても俺やることなくない?ということで、岡村は前線に進出していく。
駒井のボトムアップと岡村の前線進出
  • なんだか懐かしい感じがしませんか?そう、大阪に桜を咲かせに行ったあの人の得意なパターンと同じですね。
  • 進藤はセットプレーも含めて異常な得点寄与能力があります。中小零細企業で仕事取ってくる人がなんだかんだで一番偉いのと同じで、サッカーも点とる人とゴールを守る人が一番重要なのはそうだと思います。
  • ただ、何度も言ってますが、「毎回後ろからゴール前に攻撃参加する」のは無駄…ロスが大きいよね(最初から前にいる人がその仕事をやればいいじゃん)というのと、結局DFが前に出たら、代わりに誰かが残って後ろでカウンターに備える必要がある。それは兵藤慎剛だったり駒井だったり、たまにチャナティップだったりするのがミシャチームの常で、選手特性考えるとアベコベじゃん!全然適材適所じゃないじゃん!と私は思うですが、好きな人は好きなのでしょう。
  • 「ミシャのサッカーに浸かると他のチームでやれなくなる」的な論調をたまに見ますが、本来CBが担うべき仕事を免除されてこのような動きをするようになると、「本来求められる仕事」ができない選手にガラパゴス的進化をしていきます。
  • 冨安なんか典型ですが、今の優秀なDFってみんな後方で攻撃を組み立てたりしていますよね?進藤にそれができるかというと、前線に突っ込んでいくスタイルのままでは無理だったと思います。それが、若い岡村を使って再現している(まさにこれぞ再現性ですね)のを目の当たりにすると、やはり問題は進藤のせいじゃなくてミシャのチーム設計にあるなと感じます。

手段の目的化(駒井のボトムダウン):

  • 前の項でネタバレしてますが、岡村の特攻の前段階として、駒井が落ちてボールに触る判断があります。
  • くどくなるのでサクッと言及すると、駒井が落ちると前線の枚数が1人減る(岡村は最後にターゲットになるくらいしか仕事がないので人数から除外します)。
  • 駒井の判断としては、「自分が下がればもっとボールを持てるようになるし、後方でパスも回る」。このブログが見つかるとそういう反論をTwitterでされそうですが、後ろでボールを持つことが目的ならいいですけど、結局攻撃の最終目標はゴールを奪うこと、そしてこのチームの絶対的なフィニッシャーがアンデルソンロペスなら、アンロペにいかに良い形でボールを渡して、スウォビィクをしばいてくれるようなシュートを撃たせるかを考えてプレーする必要があります。それができてようやく、我らが辣腕社長野々村氏の言う「後は決めるだけ」になります。

  • そう考えると、駒井にしろチャナティップにしろ、下がることで「後ろの展開で登場」すると、ボールを前線に送ってシュートを撃つ時に登場することが難しくなる。移動するために時間がかかるからです。この移動時間を作るためにゆっくりボールを動かすとかボールキープするならいいですが、基本的に攻撃の最終局面ではスピードアップして、相手の判断を狂わせたり技術的に無理なボールを配球したりすることも必要になります。
  • だから駒井が一度後方で登場すると、その攻撃の際は前線には登場することが難しくなりますし、特に、2020年夏以降のジェイに頼らないサッカーに切り替えた後の札幌は、相手ブロックを崩すために速くダイレクトに攻めることを志向しているように見えるので、なおさらです。
後ろでコストをかけすぎる(貯金を作れてない)と最後に足りなくなる
  • そして駒井がいるべきポジションから居なくなることの弊害は、その次の工程を担う選手もボトムダウンしてしまうことです。具体的には、アンデルソンロペスが中盤に頻繁に下がってきます。これは速攻でも遅攻でも言えることで、味方がボールを運んでくれないから下がって受けて、自分がキープして時間を作るとか、直接的に配球役になろうとする。
  • ただそうすると、↑のアニメーションで示しましたが、アンロペもフィニッシュではなく途中工程で消費すると、最終工程ではもう誰もリソース残ってないじゃん!ってなりますよね。アンロペも駒井も下がって、クロスに飛び込むのが遅れて入ってきた岡村とか金子、てのは何とも滑稽な絵です。

  • 結局こうしてみると、巧い選手が1人2人いることよりも、チームとしてボトムネックをなくしていくことが全体のクオリティ向上に繋がることがわかるかと思います。必要なのはスーパースター・伸二でもライオンハート・ジェイでもなくて、当たり前のことを確実にこなせる、田中駿汰の双子の弟のような選手です。ポジショナルプレー志向のチームは必ずこの点に着手していると思います。

3.試合展開(後半)

ボトルネックの唯一の解決策:

  • 後半開始から札幌は高嶺→小柏。駒井が高嶺の位置に下がります。これで幾分かバランスが改善されるのは予想通りというか、駒井の問題も解決されますし、何よりもアンロペのタスクが多すぎる割にゴール前の課題を解決できる選手は他にいない中で、ギャップで受けるだけでなくてゴールに向かう能力がある小柏は大きな助けになります。
  • またもう一つの変化として、岡村が中央、田中を右に置く形に変更します。ディフェンス的には、岡村は加藤よりも西村とマッチアップさせる方がいいですし、オフェンス面ではサイドのDF…フリーになりやすいポジションに配球できる選手を置きたいとの考えでしょう。
  • ユベントスの晩年のピルロなんかが典型だと思いますが、アンカーにしろCB中央にしろ、中央は真っ先にケアされるので中央に絶対的なpivot役を置いて、その選手頼みになると機能しない。コンテのユベントスは縦にボヌッチとピルロがいましたが、その脇のバルツァッリとキエッリーニがいて、ベテランの域に達した彼らのボールを運ぶプレー(まさにこれが”個人戦術”ですね)の改善に着手したことが、ピルロを毎試合消されても自在にボールを動かす驚異的なチームの成功に不可欠でした。

  • 試合は、相変わらず仙台が札幌にボールを渡す展開で、札幌はゴール前で根本的に何かが解決したのではなかったですが、55分にトランジションから小柏。新人でルーキーなプロ初得点が生まれます。
  • 仙台は、この位置で札幌のFWにボールが入ると早めのアタックでつぶしに来ます。ファウルでプレーが止まってもリトリートの時間が確保できるためだと思いますが、ここはチャナティップが入れ替わって中盤の選手を無力化。後は小柏に丁寧なラストパス、と言うと簡単ですが、結局例のトータルフットボール革命路線で前線にMFの選手を起用しているとこういうゴールは決まらないですし、そこは適材適所で選手を配置、しかも小柏のようなスピードのある選手は現状ブロックを崩せない以上、不可欠だな、と思います。

令和の俊也?:

  • スコアが動いてやや試合展開はオープンになりかけるというか、中盤でお互いにフィルターが効かなくなります。仙台もずっと守っているのはハードなので、そうした疲労などもあったかもしれません。
  • これを見て先に仙台が動きます。63分にマルティノス→蜂須賀、加藤→氣田。両ワイドを交代しますが、氣田をスタートから使わずに残していたあたりは流石というか、ゲームプランとしてマルティノスの役割を2人で回すことは考えていたのだと思います。
  • これを見て札幌も飲水タイム前後の68分に、宮澤・岡村・菅→ジェイ、ドウグラスオリヴェイラ、荒野。小柏が左サイドに回るのですが、
  • どう見ても前線で違いを生み、そもそも戦術的に彼がいないと成り立たない存在である小柏を「単なるサイドアタッカー」として消費することになるのは不可解でした。小柏がシャドーに入る形がこのチームのベストですが、HT明けに投入して23分しかそれを発動させないのは自ら、チームがうまくいってないと認めるようなものでしょう。もっともジェイの投入は早いなというのも予想していましたが。
  • しかし仙台も仙台で、ジェイがこのタイミングで入ってくると無視できないのも事実。よって71分に真瀬→アピアタウィア(アピとします)投入で5バックにし、札幌の前線に対して数的同数と最低限やられないための高さを確保します。
選手交代変遷
  • 札幌としては、相手が4バックでボールを持つチームだとしたら、この前線3人を同時起用するとドドかアンロペが中盤に下がって相手のMFをマークするタスクが生じる。言うまでもなく、「ゴール前で仕事したい選手」にそうしたタスクを与えることでプラスかマイナスかは見えています。しかし仙台はボールを持たないし、アピを入れて5バックにしてきたことでこの懸念は完全になくなりました。この点ではお互いの戦力差によるパワーバランスの偏りみたいなものは無視できなかったと思います。

  • ドドもそうですが、やはりジェイが入るとジェイへのロングフィード、そしてサイドからのクロスボールに非常に偏っていきます。ジェイがかつて、ラブアンドピース白井に「クロスはスペースに蹴ろ」と言っていましたが、仙台が5バックで守ると出すスペースがなくなる。クロスボール攻撃はブロックは無視できるけど、結局仕事するにはだれでもスペースは不可欠です。
  • が、88分、CKからジェイの得意の、バックステップから先に落下点に入って飛ぶヘッドが炸裂します。
  • 仙台のマークはアピ。一瞬ジェイから目を切ってしまいましたが、クロスボールに対する空中戦は落下点に素早く入って先に飛ぶ。これに尽きます。サモラーノもカンナバーロも跳躍力云々とは別にこれを徹底していました(先に飛んでるから覆いかぶさってるように見える)。仙台はファウルをアピールしていまいたが、アピ自身がさほどアピールしていないのもあり正当なプレーでしょう。こういうのは確かに「若手の授業料」なんでしょうか。個人的にはこういう話に弱いので私は応援しています。
  • それにしても、今日に限った話ではないですが、有効な攻撃はカウンターからの速攻とセットプレーでの高さ勝負only。なんだか私は、ミシャのウェアの「カレーパンだ。」と書いている部分の5cm下を引き裂いたら、中から三浦俊也さんが登場してきても驚かないと思います。

4.雑感


  • 試合と少し離れて大きな話をします。野々村社長やミシャについては、「原則論では正しいことを言っている」と思っています。前者は「選手が楽しんでプレーすることは重要」、「守るだけのサッカーをやっていてはシュリンクしてしまう」、「チームのスタイルを確立したい」、「観客を楽しませるプレーが必要」。後者は「1対1(ツヴァイカンプフ)に勝つことが重要」などなど。
  • ただ、原則論やコンセプトレベルはいいとして、細かく落とし込んでいくとうまく機能しなくなるのは、このチームにはそうしたディティールに手を付ける人がいないからでしょう。ミシャでも四方田ヘッドコーチでも他のスタッフでもそうだとして、体制を変えたくないなら選手をひたすら入れ替えるしか未来はありません。
  • ですので、2018シーズンの四方田監督→ミシャへのバトンタッチのタイミング、それから2020シーズンのトータルフットボール革命、両方のターニングポイントに共通しているのは、ミシャが新しいことを提示して、選手は新たな頭でプレーする。ただトレーニングでそこまで落とし込んでない、というある種、中途半端な状態の方がうまくいっていて、そこから時間がたって当初のフレッシュさがなくなる、プレーのパターンが硬直化して手段が目的化すると非常に停滞していくのは2つの共通点です。

  • 後は、「ミシャの指導でうまくなる」といいますが、私の印象では、できない選手はできないまま、できる選手は最初からできる、というもので、選手の入れ替えがないとチームのアップデートは難しいなと感じます。
  • 具体名を挙げると、遅攻と速攻を両立する武蔵→空席→小柏。左利きでボールを運べるMF/DFの高嶺、後方で組み立てができる駿汰、攻撃のやり直しができる小次郎。逆に、中盤でボールを受けて展開ができる三好を失ってからは、札幌の左サイド攻撃は3年間死んだままです。これらの選手の入れ替えを別にすると、チームのアップデートは殆ど感じられません。上手くなったと思えるのは深井ぐらいでしょうか。ただ深井は「もともとできる」選手で、膝との付き合い方がわかったからトップフォームを取り戻しつつあるだけ、とも見れるでしょう。
  • その意味では、岡村が進藤のようにできないプレーはできないままなのか、これから伸びるのか、という点はミシャ体制に対する評価の面でも注目に値しますので、そうした目で見守るとシーズンを楽しめると思います。

  • ▼これについては、また今度、言及するのがもっと適切なタイミングの時用にネタとしてとっておきます。
  • それでは皆さん、また逢う日までごきげんよう。

5 件のコメント:

  1. いつも拝読しています。

    記事内で指摘されているようなミシャのチームの弱点を攻撃時のポジショニング修正でビルドアップとネガトラを整備したような例は森保サンフレッチェと片野坂トリニータでしょうか。いずれも短期で結果は出ても長期ではどこかで破綻している気がします。
    ミシャは攻撃は点取るためには選手の才能や偶発的なコンビネーションや事故を引き出す為には自由さが必要と考えるタイプで、そのあたりのマネジメントが上手いのかなと思っています。作りこみすぎるのも良くない的な。
    ジェイの決勝点の後にあまり喜んでいないですし、結局最後は「個」でしょって感じで割り切っている部分があるのかなと。
    今後のジェイの使い方についてはどうなると思いますか?

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    1. 速攻しかないのでボール持たせても何も怖くない、ってのが本格的にバレてどうしようもなくなったらジェイのプレータイムが増えていくと思います。

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  2. 仙台が2点目を狙いにきたのが救いです、守り切る狙いできたなら結果は違っていたのかなと感じます。前半を見る限り、相手を上回る試合前の戦略の無さが気になります。四方田さんの存在意味が無いに等しいと感じます。

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  3. 前半から相手を上回るにはスカウティングが重要と感じます。手持ちのコマを有効に使うのもスカウティングが大事と思います。四方田さんはそのための最適者と思っているのですが。

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    1. 四方田さんも本来はガチガチに固めるというより、ある程度選手に委ねる(だから経験のある選手なら上手く宇行くけど、実戦で判断ができる若手中心だと時間がかかる)タイプだと思います。
      そこはオーダー次第である程度変わってくるとは思いますが、どっちみちスカウティングはする(というか、やるおは多分四方田さんというより分析担当のコーチですね)けど、それをどこまで伝える・落とし込むかは今も考えているのでしょう。川崎とかマリノス相手だと明らかに何らか対策はしています。

      今シーズン危ないなとしたら、ミシャ体制に対する過剰な信頼や楽観というか、札幌が色々上手くなるとか強くなるために努力しているのは確かだけど、それは他のチームも同じなので、そうなってくると「自分たちのサッカー」をやるだけでは勝てない(既にそうなってますが)。監督が代わってもそこの認識が変わらないと、選手も入れ替えていないし指導方針や戦術も継続路線、ということで、たいして変わらないじゃん、というパターンに陥りそうだなと見ています。

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